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闇の聖女は愛を囁く  作者: 藍沢ユメ
13/93

13 聖女フィーネ

誤字報告有り難うございます。


不定期投稿です。宜しくお願いします。

「騎士団の剣術指南役?」

「そうだ、悪くないだろう?それに、ノーラと、タンドゥーラで行っている義手や義足の製作は、今や他国からも注文がある程だと聞いている。騎士団の中には、魔獣との戦いでダリウスと同じように手足を失った者も多い。そういった者達に、ダリウスと同じように、再び騎士の仕事に就けるように、指南して欲しいんだ。やはり騎士に心残りの者が多くてね。」

「そうですね。実際私の領地にそういった希望を持って訪れる者も多いです。国が支援するなら、皆喜ぶでしょう。」


御前試合が終わった後、アーレンとダリウスは王宮に場所を移し、マリアやグレイスが夜行われるパーティーの準備をしている間、話をしていた。


「しかし今日は本当に驚いたよ。ムチがあのような武器になるとはね。それに使いこなすには相当苦労しただろう?そう言えば、ムチに雷属性の力を乗せていた?」

「はい。元々剣に乗せていたのはありますが、せいぜい剣の長さ程度の距離しか雷を纏わせられません。あのムチは剣の4倍程の長さが有りますから、はじめは、端まで雷を纏わせられませんでした。」

「何かコツがあるんだろう?」

「ええ、グレイスがその訓練に付き合ってくれました。」

「ああ、グレイスはあまり公にしていないけれど、君の竜の血の毒というか呪いを解呪しただろう?あれを見て分かるように、おそらくこの大陸の10本の指に入る位の魔導師だね。」

「なぜ公にしていないのですか?」

「タンドゥーラ公爵が、グレイスを戦場に行かせたくないからだろうね。ルダリスタン帝国の血も引いているだろう?欲しがる輩が多いんだよ。」

「そうですか·····。」

「まあ、今や勇者の妻だからね。私の側妃だった頃より、手出ししようと思う者はいないだろう。ダリウス、これからもグレイスを守ってやってくれ。」

「元よりそのつもりです。彼女は誰にも渡しません。」

「ああ、頼むよ。」


「陛下、失礼致します。」


「どうした?」

「はっ、聖騎士がノーラ公爵に面会を求めておりますが、いかがしましょう?」

「ダリウスに?パーティーも控えているのに、何の用だ?明日では駄目なのか?」

「今すぐ、直接お願いしたい事があると。」

「どうする?ダリウス。」

「今なら手短に済みそうですから、お会いしましょう。」

「私も立ち会うよ。別室を準備しよう。準備が整い次第案内するように。それから、聖騎士に言ってやれ。今後先触れがないものは、一切受け付けないと。」

「承知しました。」


侍従は頭を下げ、直ぐ様準備に向かう。


「厄介な臭いしかしないのは、どうしてだろうね。」

「御意。」



聖騎士を案内したと言うので、アーレンとダリウスは部屋へ向かう。


そこには真っ白の聖騎士の服を身につけた男が立って待っていた。


「王国の太陽たるアーレン·ロスタリウス·フェアノーレ国王陛下にマルス·スタードがご挨拶申し上げます。突然、王宮に押し掛け申し訳ありません。」

「ああ、そうだね。他の所からも礼儀を弁えず、君達が好き勝手やっていると苦情が入っているよ。聖女の名に傷をつけたくないなら、自重するように。」

「はっ。」

「で、何の用かな?時間がないから手短に。」

「はい、今宵の国王陛下即位1周年の記念パーティーですが、出席される聖女様のエスコートをノーラ公爵様にお願い致したく。」

「は?何を言っているのか?こんな時間になって、その様な突然の申し出、通るとでも?ノーラ卿は夫人をエスコートすることになっている。聖女はウォーレン·ロドリス卿がエスコートする予定ではなかったか?」

「聖女様がノーラ公爵様に是非ともお願いしたいと。聖女様がこのように申されるのは珍しいのです。是非エスコートして頂けないでしょうか?」

「聖女がここに来てから、お願いばかりだが?聖女ではなくて、神殿側の要望では?」

「いえ、今回は聖女様です。」

「ノーラ卿、そなたから申せ。」

「はい。申し訳ないが、今宵は私と妻にとっては特別な日。私は苦労をかけた妻を、是非エスコートしたいと思っている。そう聖女様にお伝え頂けないだろうか?」

「聖女様をエスコートするのは、ノーラ公爵様にとって、悪い話ではないかと。」

「というと?」

「聖女様の治癒能力については、ご存知ではないかと。ノーラ公爵様のご対応によっては、聖女様は再生のお力をお使い下さると思います。」

「脅すのか?」

「そのような事は。ささやかな聖女様のお願いを聞いて頂きたいと思っている次第です。」

「これをするから、それをしてくれといった態度は感心しないな。誰がそんなこと教えたの?人の弱みに付け込んでいる様に聞こえるが?」

「その様な事は。もし宜しければ、ノーラ夫人にもお話頂いて、ご許可を頂きたく。それに、この様な事で、聖女様と対立されるのは宜しくないかと。」

「ノーラ卿、どうする?」

「·····妻に聞いてみましょう。私は妻の望み通りにする。」

「承知しました。」



「え?聖女様のエスコートを?」

「ああ、試合を観戦して、私にエスコートして欲しいと思われたらしい。」

「貴方は素敵でしたものね。憧れたのでしょう。ただ、あまりにも急なお申し出ね。」

「それが聖女の願いを聞けば、治癒の再生の力を使う気になるかもと。」

「まあ、そういった聖女の能力は公正に使われるべきであるのに。交渉の材料にするの?」

「あからさまで厄介だな。この話を夫人にして、許可をもらって欲しいと言っている。」

「聖女の力をこの様にちらつかせるのは良くないわ。神殿と切り離した方がいいでしょうね。でも機嫌を損ねるのも面倒だわ。今回限りとお受けしたら。」

「グレイスはそれでいいのか?」

「勿論寂しいわ。貴方の隣はどんな時でも私であって欲しいと思ってるもの。でも本当に·····貴方の手足を再生して下さるなら、我慢するわ。」

「グレイス·····。」


ダリウスにとって、元の身体を取り戻せるなら、それがいいに決まっている。


「でもその後は傍にいてくれるのでしょう?ちゃんと甘やかしてもらうわ。」

「ああ、陛下には悪いが、早々に帰らせてもらおう。」

「ふふふ。そうね、そうしましょう。」


2人はそう言って抱き合った。


◇◇◇


「ダリウス·ノーラ公爵、聖女フィーネ·ルクスト様ご入場です!」


始まったパーティーで、ダリウスは聖女をエスコートし、入場した。

周りは勇者と聖女の組み合わせに驚くも、どこか納得していた。


「ノーラ夫人、申し訳ありません。」

「あら、どうして謝るの?」

「いえ、私が不甲斐ないばかりにノーラ公爵様が聖女様をエスコートして下さることになり。」

「聖女様は年上の方がお好みなのでしょう。貴方も引く手あまたなはずよ。ロドリス卿、私をエスコートして下さり有り難う。」

「いえ、ノーラ公爵夫人をエスコート出来るなど、誉れ以外何もありません。正直、聖女様をエスコートするよりも緊張しています。」

「まあ、ふふ。では、取り敢えず聖女様に挨拶に参りましょう。」

「はい。」



ダリウスと聖女の元へ行く。

聖女はダリウスの腕に絡む様に抱きついている。


これはエスコートというよりも·····。


16歳と聞いたが、小柄で、年齢の割には良く言って無垢、悪く言って幼い。

茶色の髪に茶色の瞳。

顔立ちは普通。

つぶらな瞳が庇護欲をそそるか。


ダリウスはグレイスがウォーレンと共に近づいて来たのに気付く。


「グレイス。」


ダリウスは少し困り気味の表情を浮かべ、グレイスの名を呼ぶ。

聖女のフィーネもグレイス達に気付くが、サッとダリウスの後ろに身体を隠す。


「はじめまして聖女様。私はグレイス·ノーラと申します。今宵お会い出来ました事、大変嬉しく存じます。以後宜しくお見知りおきを。」


「嫌よ、この人怖い!」


突然大きな声で、フィーネはグレイスを拒絶した。

傍に控える聖騎士達も、流石に不味いと思ったのか、フィーネを宥める。

見ている周りもあまりの不敬に、呆気にとられる。


「聖女殿、彼女は私の妻です。怖い者ではありません。」


腕にしがみつくフィーネに、ダリウスは幼子を落ち着かせる様に話す。

それでもフィーネはグレイスをじっと睨み付ける。


「聖女様はこの様な大きなパーティーにご参加されて、緊張しておられるのですね。聖女様は大変な思いを経験されたと伺っています。ですが、本日は国王陛下の即位1周年記念の喜ばしい日。こちらではどなたも聖女様を傷つける者はおりません。本日は王宮の料理人達も皆様をおもてなしするために、美味しい料理を沢山揃えております。私もとても楽しみにしておりました。聖女様も是非緊張なさらずに、パーティーをお楽しみ下さい。」


グレイスは不快な顔をせず、気遣わしげな表情を浮かべフィーネに話し掛ける。


「グレイス、後で行く。」

「はい、あなた。」

「あなた····か。ロドリス卿、妻を頼む。」

「承知しました。」


ウォーレンはダリウスの言葉に頷く。

ダリウスは、グレイスに初めて『あなた』と呼ばれ頬を緩める。

それだけで周りはダリウスとグレイスの仲睦まじさを感じ取った。


「それでは聖女様、私はこちらで失礼致します。」


グレイスは美しい(カーテシー)をし、その場を離れた。

フィーネのグレイスに対する不敬な態度に、その場に緊張が走っていたが、それを気にすまいと穏やかな態度をとり続けたグレイスに、皆尊敬の眼差しを送っていた。


ダリウスは簡単には解放してもらえなさそうね。


グレイスは、聖女フィーネの執拗なダリウスへの執着に小さな不安を抱えながら、パーティーを過ごすことになったのだった。


数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。

もし宜しければ、暇潰しに、現在連載中の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~

https://ncode.syosetu.com/n0868hi/

も読んで頂ければと思います。宜しくお願いします。

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