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第9話 ダンジョンへ

家族にはコンビニのバイトに復帰したと説明しておいた。

そしてたまに研修があるから地方に行くこともあるのだということも伝えておいた。

これでおそらくは父さんも母さんも妹も納得するだろう。



☆ ☆ ☆



首相官邸を訪れた日の翌々日の朝七時過ぎ、俺の家にタクシーに乗って新木がやってきた。



「おい、何いきなり来てんだよ。俺の方からお前の泊まってるホテルに迎えに行くって約束だったろ」

声を抑えて新木に詰め寄るが、

「待つのが面倒だったんだよ」

と呆れるような答えが返ってきた。


「新木、お前昔はそんな奴じゃなかったのに、どこでどう――」

「そんなことよりさっさとダンジョンに行こうってば」

俺の言葉をそんなこと呼ばわりで遮った新木はせかせかとタクシーの助手席に乗り込む。


「ほら、結城も早く乗れったら!」

「わかってるよ」

投げやりに返すとおれはタクシーの後部座席に腰かけた。


……つうかお客は普通、後部座席だろ。どうでもいいけどさ。



☆ ☆ ☆



俺と新木を乗せたタクシーは一路、中野区にあるダンジョンに向かっていた。

そのダンジョンに決めた理由は至ってシンプル。

俺と新木の住んでいる場所のちょうど中間地点に位置していたからだ。


暇だったので俺は斜め前の助手席に座る新木をなんとはなしに眺める。

横顔は整っていてモデルのような顔立ち。

背の高さもあるし、やはりアメリカ人の父親の遺伝子が色濃く表れているようだ。


昔は俺の背中にいつも隠れていて引っ込み思案で可愛らしかったが、今はその面影は微塵も感じられない。

むしろ年下のくせに俺よりも偉そうだったりする。


「ん? なんだ?」

「いや、なんでもないよ」

振り向いた新木と不意に目が合った。

俺は平静を装いはぐらかす。


すると、

「ふーん、そうか。あ、そうだ結城っ」

新木が喋り出した。


「あんたさぁ、今度うちに来いよ。妹が会いたがってるからさ」

「妹? あー、そういえばお前、妹がいたっけ」

「ああ、中学三年生の妹がなっ」

俺と全く同じだ。


「なんで俺のこと知ってるんだ?」

面識はないはずだが。


「あたしが結構話題に出すんだよ。だからどんな奴か気になるみたいでさ、一度会ってみたいなぁ~とか言ってたわけよ。だからあたしが今度誘っとくよって言っといたからさ」

「……そうなのか」


余計なことを。

他人のよく知らん妹に会って一体何を話せと言うんだ。

俺は決してコミュニケーション能力は高くないんだぞ。

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