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第54話 完全降伏

襲い来る強力なモンスターを次々と返り討ちにしながら魔王城の最上階まで進んでいく俺たち。

レベルMAXでRPGをしているかのごとく余裕で突き進む。

そしてあれよあれよという間に気付けば最上階。

正面には大きな扉があり、その先が魔王がいるであろう謁見の間となっていた。


「よし、準備はいいな。もう一度確認しておくが、魔王とは俺が戦うから新木と二本松は後ろに下がってろよ」

「わかってるって、何度も言うな。結城は心配性なんだよ、ったく」

「レイナくんは僕が命をかけて守るから結城くんは安心して魔王と戦ってくれたまえ」

「言ってろ、アホがっ」

新木に悪態をつかれながらも涼しい顔で俺を見てくる二本松。

その精神力は素直にうらやましい。


「じゃあ、行くぞっ」

「おうっ」

「うん」


俺たちは勢いよく扉を開け放つと魔王退治へと乗り出した。



☆ ☆ ☆



『こ、降参だ』


「……は? ……い、いやいや、よく聞こえなかったんだが、もう一度言ってくれないか」

『降参だ。わ、我は全面的に降伏する』


謁見の間でふんぞり返っていた魔王は俺の顔を見るなり顔面蒼白になり、戦うこともなく白旗を上げた。

俺はそれを理解できず何度も訊き直す。


「降参って言ったのか? 戦わずにか? 魔王なのにか?」

『あ、ああ、そうだ。貴様と戦っても勝てる気がしない』

魔王は引きつった顔のまま俺を見返してくる。


『き、貴様に倒された我は長い年月をかけなんとか復活を果たした。だがその間かなりの苦痛を味わい続けたのだ。あんな思いはもう二度とごめんだ。よ、よって我は貴様に降伏する……』

「あー、そうなのか」

呆気にとられる俺。

またも命がけの勝負をするものとばかり思っていたので正直拍子抜けだ。


「けっ、戦う前から降参とか情けねぇ奴だな。それでも魔王かよっ。ちったぁ根性見せやがれっ」

「こら新木、あおるな」

せっかく戦わずに勝てるんだ。

それならそれに越したことはない。


『いや、その通りだ。まったくもって情けない限りだ……』

魔王はうつむき加減でつぶやいた。

二メートル以上ある魔王がこころなしか俺よりも小さく見える。


「じゃあ人間を食べるのもやめるか?」

『も、もちろんだ。人間を食べることはもう絶対にしないと誓う……そ、それからモンスターたちにも人間を襲わないよう命令する』


魔王の降伏宣言を受け俺は、

「うーん、どうする? こいつを許してやってもいいと思うか?」

新木と二本松に相談してみた。

魔王は心を入れ替えたようだが、それでも俺一人の考えで決めるのはよくない気がしたのだ。


「そいつは魔王なんだぜ、ぶっ倒しちまおうぜっ」

と言うのは新木だ。

好戦的な性格の新木は予想通りの発言をする。


一方二本松は、

「許してやってもいいんじゃないかな。もう人間は食べないって言っているんだし、モンスターに人間を襲わないよう命令を下せるのも魔王だけだろうからさ」

と意見が割れた。


「なんだよ二本松、てめぇ魔王を許すってのか? そいつはなぁ、これまでに大勢の人間を殺してきたんだぞ、見逃す手はないだろ」

「でもねレイナくん、ここで魔王を倒してしまったらモンスターたちは野放しになってしまうよ。それはよくないんじゃないかな」

「むぅ、まあそれはそうかもしれねぇけどよう」

二人は顔を突き合わせて話し合う。

その様子を祈るような顔でみつめる魔王。

威厳の欠片もない。


「よし、じゃあ魔王は今回だけ大目に見るってのはどうだ? それでもし約束を破ったらその時は容赦しないってのは」

「まあ、結城がそうしたいんならそれでいいんじゃねぇか」

「僕は賛成だよ」

『ほ、本当かっ? か、感謝するっ、絶対に人間はもう二度と襲わないっ』

俺たちの言葉を聞いて魔王が平身低頭態度をあらためると再度誓った。


それを受けて百パーセント魔王を信じたわけではないものの、二本松の意見も理にかなっているので俺たちは魔王の降伏を受け入れることに決めた。

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