第51話 数百年後の異世界
すっかり具合の良くなったおばあさんに聞いた話では、どうやらここは俺たちが前に来た異世界で間違いないらしい。
ただ、なぜか俺たちが以前訪れた時代からは数百年が経過してしまっているようだった。
そのため俺たちのことを知る者はもういないだろうということだった。
「お兄ちゃんたち、伝説の勇者様だったんだ~。すご~いっ」
と目を輝かせてヘレンが言う。
俺たち三人は魔王を倒した伝説の勇者パーティーとして名前だけは語り継がれているのだそうだ。
「この世界に召喚術師っていますか?」
俺が訊くと、
「すみませんねぇ。わたしたちはそういう話には疎くてね、何も知らないんですよ。この辺りは辺境の地ですから」
と心底申し訳なさそうにおばあさんが答えた。
「そうですか」
「だったらもっと都会に行ってみるっきゃねぇな」
「そうだね」
珍しく新木と二本松の意見が合う。
そこで俺も二人に賛同しすぐに出発しようとする。
がしかし、
「え~、もう行っちゃうの? まだいてもいいじゃん」
「そうですよ。せめて今日だけはうちに泊まっていってください。たいしたおもてなしは出来ませんが、是非お礼をさせてください」
ヘレンとおばあさんが引き留めるので俺たちは顔を見合わせてから、
「……じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
と一晩だけお世話になることにしたのだった。
☆ ☆ ☆
翌朝。
俺たちはヘレンとおばあさんに別れを告げるとその場をあとにした。
そして町か村をみつけるため森の中を突き進んでいく。
一日がかりで森を抜け出た俺たちはその後も湿地帯や草原を歩いて町を探した。
途中野宿をするため大きな木の下に居を構える。
こういう時は俺なんかより新木や二本松の方がよっぽど役に立ってくれる。
新木の【マジックボックス】で寝袋や食料品を取り揃え、二本松の補助魔法でモンスターから身を隠す。
二人のおかげで旅はとても快適なものとなっていた。
☆ ☆ ☆
ヘレンたちと別れてから三日後、俺たちはようやく村を発見した。
お世辞にも大きな村とは言えなかったが、それでも俺たちにとっては充分だった。
「よし、じゃあ手分けして召喚術師の居場所を訊いて回ろう。いいな?」
「よっしゃー、任せとけっ」
「オーケーだよ」
こうして俺たち三人は協力して、村人たちから召喚術師の情報を仕入れることにしたのだった。