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第48話 森の中

「いってて……」


気付くと俺はどこかの森の中で横たわっていた。辺りは薄暗い。

顔面を強打したらしく鼻をさすりながら起き上がる。

すると俺のそばで新木が二本松の胸ぐらを掴んで怒鳴り声を上げていた。


「てめぇ二本松、一体何しやがったっ! ここはどこだ、あぁっ! さっさと答えやがれっ!」

完全に輩と化している新木。

あまり近付きたくない雰囲気だ。


「さあね、ここがどこかなんて僕には見当もつかないよ。大体僕は扉を開けただけだしね」

二本松は涼やかに返す。


「それより僕とのデートは今夜でいいかい?」

「こんな時に頭イカレてんのか、てめぇっ!」

二本松に今にも殴りかかりそうな新木。

二本松の身体能力は普通の人間と大して変わらないので、頭に血の上った新木に殴られでもしたらマジで死んでしまう。

なので俺は仕方なく二人の間に割って入る。


「おい二人とも、今はそんなことしてる場合じゃないだろ」

「やあ、結城くん。起きたんだね、よかったよかった」

「結城、邪魔すんなっ。今こいつを締め上げてるところなんだからなっ」

二本松は涼しい顔で新木は鬼の形相で俺を見返してきた。


「こら新木、とりあえず落ち着け。二本松の言っていることは多分本当だ」

言いながら俺は新木の腕をそっと掴む。

二本松は変わった性格の持ち主だが俺や新木を騙したりするような悪い奴ではない。


「じゃあ、あたしたちはどうなったっていうんだよっ。ここは一体どこなんだっ」

新木の発した声が森の中にこだました。


「ダンジョンの中、じゃないよな……?」

俺はつぶやきながら目を凝らす。

すると遠くの方に小さな光が見えた。


「おい二人とも、あっちをよく見ろ。なんか光ってるぞ」

「ほんとだっ。全然気付かなかったぜっ」

「向こうに誰かいるのかもしれないね」

「ああ。ここでじっとしててもしょうがないし、行ってみよう」


新木と二本松は俺の提案を素直に受け入れ、三人で光の方へと向かうことに。



☆ ☆ ☆



しばらく歩くと光のもとへたどり着くことが出来た。

光の正体は一軒の小屋から漏れた明かりだった。


「中に誰かいるみたいだね」

「そうだな」

二本松の声にそう返した俺はドアの前に立つと、

「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかっ?」

小屋の中に向かって声をかけてみた。

しかしいくら待っても返事はない。


「ん? 誰もいないのかな」

「うん。そうかもしれないね」

「だったら明かりなんてつけんなよなっ。紛らわしいっ」

悪態をつく新木。

ここがどこかわからずイライラしているようだ。


とここで二本松が口を開く。

「ねえ、結城くん。一旦きみのゲートでどこか僕たちの知っている場所まで帰らないかい?」

「おうっ、そうだぜ結城。その手があった、早くゲート使おうぜっ」

「あー、そういえばそうだな」

すっかり【ゲート】の存在を忘れていた俺と新木は二本松の言葉でハッとなる。

常に冷静沈着な二本松がいて助かったってところか。


「じゃあ今ゲートを出すから待ってろ」

俺はスキル【ゲート】を発動する。

すると目の前に扉が具現化した。


「どこに帰る?」

俺が訊くと、

「どこでもいいからさっさとしてくれよっ」

と新木が急かしてくる。


「わかった。じゃあ二本松のマンションの前にするか」

俺は【ゲート】の行き先を二本松と再会した場所に設定し、扉に手を伸ばした。

だがしかし、ここで問題が発生した。


「あれ、おかしいな。開かないぞ……」

「何やってんだよ結城。どうしたんだっ? 早くしろよ」

「いや、それが開かないんだよ」

「はぁ? なんだよ今度はゲートの扉まで開かなくなっちまったのか?」

新木は呆れたように言うと自分で【ゲート】の扉を開けようとする。


「なんだこれ、開かねぇぞ」

「無駄だ。ゲートで出した扉は俺しか開けることが出来ないからな」

「じゃあどうすんだよっ? 二本松でも駄目なのかっ?」

「どうしようもないな。ただ、扉が開かない理由ならわかるぞ」

俺は新木と二本松の顔を交互に見てからそう口にした。


「なんだよ、もったいつけてないで早く言えよ」

「なぜ、ゲートが使えないんだい?」


二人の問いかけに俺は二人の知らないとある事実を話す。


「ゲートは違う世界間の行き来は出来ないんだ」

「ああ? それ、どういう意味だ?」

「ふーん、なるほどね」

眉を寄せる新木の横で静かにうなずく二本松。

新木はまだのようだが、二本松は俺の言葉でここがどこかを理解したらしい。


「おい結城、まどろっこしい言い方してないではっきり言えったら。ここは一体どこなんだよっ?」


しびれを切らした様子の新木に俺は真実をはっきりと告げてやる。


「新木。ここはな……異世界だ」

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