第47話 扉の先
「ここかい? その開けられない扉があるっていうダンジョンは」
「ああ、そうだ」
板橋区のダンジョン入り口へとやってきた俺たち三人は早速中へと入っていく。
一度潜っているので地形は憶えていた。
そのため前回よりも速いペースで地下へと下りていく俺たち。
途中遭遇したモンスターたちはすべて俺が一人で打ち倒した。
二本松とのデートを受け入れてくれた新木の分も、せめてもの感謝の気持ちを込めて俺が戦った。
もともと戦闘タイプではない二本松は異世界で旅をしていた時から戦闘にはほとんど参加していなかったので、二本松の助けははなから期待してはいなかった。
☆ ☆ ☆
数時間かけて俺たちは板橋区のダンジョン地下十八階にたどり着く。
「なるほど、これだね。きみたちが言っていた扉というのは」
二本松が扉を見上げ口を開いた。
俺と新木も隣に立って扉を見上げる。
「開けられそうか?」
「さあどうだろう。やってみないとわからないね」
二本松はそう言うが二本松が補助魔法で失敗したところは見たことがない。
性格には難があるものの補助魔法の使い手として優秀であることはよくわかっている。
おそらく新木も俺と同じ思いだろう。
「じゃあ、とりあえずやってみるよ。レイナくんとのデートがかかっているからね」
言いながら新木にウインクする二本松。
それを見て新木はこれみよがしに苦々しい顔をしてみせた。
二本松は新木のリアクションは気にも留めず扉に手をかざす。
そして「……」と何やら呪文を唱え始めた。
俺と新木が見守る中、
「……はぁっ!」
いつになく真剣な顔で二本松が叫ぶ。
すると目の前の扉がゴゴゴゴゴ……と音を立てて動き出した。
「開いたぞっ」
思わず俺は声を上げる。
だが次の瞬間、
ビュウゥゥゥゥーーーッ!!
と扉の内側に向かってとてつもない強風が吹いた。
「うおっ!?」
「な、なんだっ!?」
「おやっ!?」
ダンジョンの中ではあり得ないほどのすさまじい突風により、俺と新木と二本松はまるでブラックホールに飲み込まれるがごとく扉の内側へと吸い寄せられてしまう。
「な、なんだこれっ!? だ、大丈夫か二人ともっ!」
「くっ、い、一体、なんだってんだっ……!?」
「うーん、こ、これはまずい、ねっ……!?」
俺はともかく新木と二本松は踏ん張りがきかず、今にも扉の内側へと引き込まれそうになっている。
扉の内側を見ると中はこれまで見てきたダンジョンの部屋とはまったく異質な真っ暗闇の空間だった。
よくわからないがあの中に吸い込まれるとヤバそうだ。戻ってこられなくなるかもしれない。
俺は横にいた新木の手を強く握った。
それを受けて新木も隣の二本松の腕をがしっと掴む。
さすがに二本松のことが嫌いなどと言っている場合ではないことは新木も充分わかっているようだった。
「が、頑張れっ! 耐えるんだっ! す、吸い込まれたら終わりだと思えっ!!」
俺は声を大にして叫ぶが、
「く、く、くそったれがぁーっ……!!」
「こ、こ、これは、もうもたないっ……!」
新木も二本松もすでに体の半分以上が扉の内側へと飲み込まれてしまっていた。
そして直後、俺の手が扉から離れ――
「「「う、うわああぁぁぁ-ーーっ……!!」」」
必死の抵抗もむなしく俺たちは真っ暗闇の空間へと吸い込まれていった。
これにて第四章終了です。
次話からは最終章に入りますm(__)m