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第46話 一段落

「新木とデート?」

「そうさ。簡単なことだろう」

二本松はさらりと言ってのけるが、

「ざっけんな! 誰がデートなんかするかっ!」

肝心の新木は二本松から距離を取りすごい剣幕で怒鳴る。


「てめぇとデートなんざ、死んでも御免だっ!」

「おい、落ち着けよ新木。そんなに目くじら立てなくても――」

「なんだよ、結城はこいつの味方なのかっ!」

新木を落ち着かせようとしたのだが新木はそんな俺をギロッとにらみつけ、

「ってことは結城はあたしの敵でいいんだな、そうなんだなっ!」

早口でまくし立ててきた。


「こら新木、冷静になれ」

「あたしはいつだって冷静だっ!」

どこがだ。


俺は新木の肩に優しく手を置き、

「まあ俺の話を聞けって。いいか新木、二本松の協力がなかったら板橋区のダンジョンの扉は開かない。扉が開かないと中にいるモンスターも退治できない。そうなるとそこを無視してほかのダンジョンに進むことも出来ないから俺たちのダンジョン探索は行き止まりになってしまう。つまりだな、年収五千万円がパアになるんだ。わかってるのか?」

小さな子どもに説明するように話して聞かせる。


「それはわかってるさっ。でもだからってなんであたしが二本松とデートなんかしなきゃならないんだよっ。あたしの代わりに結城が二本松とデートすりゃいいだろっ」

「無茶言うな。二本松がそれでオーケーするわけないだろうが」

ちらりと二本松を見ると二本松は涼しい顔で首を横に振っていた。


「結城はあたしに犠牲になれって言ってんのかっ」

「そうじゃない、よく考えろ。お前が沢山お金を稼げば親御さんを楽させてあげられるんだぞ。リコちゃんにだって好きな物をいくらでも買ってやれるんだ。でも俺やお前の年で年収五千万円なんてこのチャンスを逃したら一生ないぞ」

「むぅっ……」

と新木は何か言いたげな顔をしながらも黙って俺の話を聞き続ける。


「家族のためだと思えば二本松とのたかが数時間くらいのデート、どうってことないだろ。なっ?」

「う~~~……」

犬のようなうなり声を上げつつ新木は考えを巡らせているようだった。


そして「う~~~」という声を発すること一分。

新木は、

「ちっ……わ、わかったよ、二本松とデートしてやらぁっ」

苦虫を嚙み潰したような顔をしてそう言い放った。



☆ ☆ ☆



「ただし、あたしにも条件があるぞ」

「なんだい? レイナくん」

二本松の正面に立ち新木が交換条件を再び叩きつける。

それに対し二本松は爽やかに返した。


「デートはダンジョンの奥の扉を開けてそん中にいるモンスターを倒したあとだっ。もし扉が開けられなかったり、中のモンスターを倒せなかったり、そもそも中にモンスターがいなかったりしたら約束は無効だぞっ、いいなっ」

「レイナくんがそうしたいと言うのなら僕はそれで構わないよ。僕は嫌がる女性と無理矢理デートする趣味はないからね」

新木は充分嫌がっている気がするのだが……。

二本松の頭の中はどうなっているのだろう。理解に苦しむ。


「約束だからなっ」

と念を押す新木。

かなり嫌そうな顔をしているがこれも俺と新木、そして俺と新木の家族のためだ。

ひいては日本国並びに世界のためでもある。

新木には同情するが耐えてもらうしかない。


「俺たちは今からでも行けるが二本松はどうだ? 一回着替えてくるか?」

「着替える? なぜだい? 僕はすでに一張羅を身に纏っているからね、着替える必要なんてないよ」

自らの着ている白いスーツを見下ろし二本松。


「これからダンジョンに潜るんだぞ。モンスターとも戦うかもしれないんだぞ。その恰好でいいのか?」

「当然だよ。むしろ結城くんがそんなことを訊いてくる理由が僕にはわからないね」

「あー、そう。まあ二本松がそれでいいなら俺は全然いいんだけどな」

「ちっ、なんであたしがこんな奴と……」


こうして俺は、未だぶつくさと文句を垂れ続けている新木とホストのような出で立ちの二本松を連れ、板橋区のダンジョン入り口へと【ゲート】で移動するのだった。

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