第4話 来訪者
ダンジョンが現れてすぐ血気盛んな若者たちが世界各地でダンジョンに潜った。
だがダンジョンの中にいたモンスターに襲われ、みんな命からがら逃げ出てきたという。
その時に撮影した画像や動画が世界中に拡散して世界はパニックに陥った。
世界各国の政府が出現した洞窟をダンジョンと定義し、これを立ち入り禁止とした。
そして各国の軍隊はダンジョンの探索に乗り出しダンジョンへと潜っていった。
しかしダンジョン内ではなぜか銃火器が上手く機能せず、そのせいで探索は思うようにいかなかった。
ダンジョンが現れてから五日が経過してもなお、俺が最初に潜ったスライムだけしか出ないダンジョンですら日本の自衛隊は手こずっていた。
そんな時だった。俺のスマホがとある人物からの着信を知らせたのは。
ジリリリリリッ!
ジリリリリリッ!
早朝、スマホがけたたましい音を立てて鳴った。
俺は飛び起きてスマホの画面を確認する。
着信は知らない番号からだった。
訝しがりつつも俺は電話に出る。
「はい……もしもし」
『もしもし、そちらは結城ミサオさんの携帯電話でしょうか?』
受話器の向こうからははきはきとした男性の声がした。
「ええ、そうですけど」
『私は内閣総理大臣秘書官、佐藤と申します』
「総理、秘書官……?」
ってなんだ?
『実は結城ミサオさんに折り入ってご相談がありまして、突然で申し訳ないのですが今から少しの間、お時間ちょうだい頂けますでしょうか?』
「え……」
俺は意味が分からず押し黙ってしまう。
それを肯定ととらえたのか佐藤さんとやらは、
『それではすぐそちらにお迎えに上がりますので』
言うと一方的に電話を切ってしまった。
それから一分もしないうちにピンポーンと玄関のチャイムが鳴らされた。
母さんが玄関のドアを開けて、
「ミサオーっ、ちょっと下りてきなさいっ!」
いつになく緊張した声を張り上げる。
俺は二階の窓からそっと外を見下ろして唖然とした。
というのも俺の家のすぐ前にロールスロイスだろうか、大きな黒塗りの高級車が停まっていたからだ。
そして黒服のSPのような屈強な男性たちが車の周囲を固めていた。
「ミサオっ、早くっ!」
「今行くよっ」
何事かと階下に向かうと、玄関にいたのは穏やかな表情を浮かべたスーツ姿の男性だった。
「あ、あの、どちら様でしょうか?」
俺は母さんと入れ替わりにその男性の前に立つ。
「私、先ほどお電話させて頂いた内閣総理大臣秘書官の佐藤と申します。以後お見知りおきを」
「あー、さっきの……」
いたずら電話ではなかったのか。
「それでどういうご用件ですか?」
「私どもと一緒に内閣総理大臣官邸まで是非お越し頂きたいのです」
「えっと……」
なぜ?
「お母様にはすでにご了承を頂いておりますので」
と佐藤さん。
「は、はあ」
「それでは参りましょうか」
意外と押しの強い佐藤さんにうながされ、俺は家を出るとそのまま家の前に停まっていた車の後部座席に乗り込んだ。
とその車の後部座席にはすでに男性が一人座っていた。
俺はその男性と何気なく目を合わせてびっくり。
なんとその男性は現日本国内閣総理大臣の松原義秀だった。