第38話 二度目の北海道
「北海道?」
なぜに?
「どうしてそういうことになるんだよ」
「もっちろん、リコに会うために決まってるだろっ」
新木は自信満々口にする。
「いや、だからなんで三人で行くんだよ。行きたきゃ勝手に帰れよ、自分のとこなんだから」
「結城、あんた話聞いてなかったのか? リコはミキとあんたに会いたがってるんだよ。だから三人で会いに行ってやろうって言ってるんじゃないか」
「ついでに黙っていけばサプライズにもなるしねっ」
と妹が追随した。
……正直言って全然気が進まない。
リコちゃんがどうとかいう問題ではなく、俺は人見知りするタイプなのだ。
わざわざ東京から北海道まで女子中学生に会いに行って一体何を話せばいいんだ。
だが、ここで俺がごねたって無駄なことはわかっている。
新木も妹も言い出したら聞かない性格だ。
その上二人とはこれからもなんだかんだ一緒にいなければならない間柄にある。
さらに新木と妹は今回の件では意見が完全に一致している。
仲間外れは俺の方だ。
「……わかったよ。行けばいいんだろ、行けば」
「そうこなくっちゃなっ」
「お兄ちゃん、物分かりがいいじゃん」
俺の答えを最初からわかっていたかのように二人してうなずくと、新木と妹は俺の腕を取り部屋から俺を引っ張り出した。
☆ ☆ ☆
新木と二人だけならば【ゲート】を使って一瞬で北海道に行けるが、妹がいるから今回は【ゲート】は使えない。
なので俺たち三人はタクシーと飛行機を使って北海道へと向かうことにした。
幸いなことに俺も新木もお金には不自由していないため、旅行資金は難なく工面できた。
もちろん妹の分は俺がお金を出した。
にもかかわらず妹は俺に対して一言も感謝の言葉を口にしなかった。
……憶えておいて妹が社会人になった時にでも請求してやろうか。
飛行機の中でも新木と妹は元気だった。
あやうくCAさんに注意されるところだったのをその前に俺がなんとか落ち着かせて事なきを得た。
妹は飛行機に乗ること自体初めてだったのでテンションが上がっていたのはわかるが、新木は何度も乗っているはずだろうに。
空港に到着するとそこからまたもタクシーで移動する。
そして三十分ほど走ってようやく俺たちは新木の実家にたどり着くことが出来た。
タクシーを降りるなり新木と妹は玄関に駆け出す。
俺がタクシーの運転手にお金を払い終わってもう一度振り返ると、新木と妹の姿はもうなく玄関のドアも閉まっていた。
なんて薄情な奴らだ。
おそらく浮かない顔をしているであろう俺が一人で玄関前に立ちチャイムを鳴らす。
得も言われぬ緊張感で無駄に心臓をどきどきさせながら俺は新木の家の玄関前で反応を待った。
すると家の中から「はーい」という可愛らしくも凛とした声が返ってくる。
ガチャリとドアが開いて中から姿を見せたのは新木の妹のリコちゃんだった。
俺を見上げて、
「あ、もしかして結城さんですか?」
ぱあっと顔を明るくさせる。
ベッドでの寝姿ではいまいちわからなかったがこうして目の前で動いている姿を見ると、やはり新木の妹だ。リコちゃんはどこに出しても恥ずかしくないくらいの超美少女だった。