第36話 朝日を浴びて
迷路のような通路を抜け出て俺たちは地上へと引き返す。
帰りは階段の場所や道順を知っている分当然行きよりも早いので、俺たちはそれほど時間をかけることなくダンジョンを戻って地上へと無事帰還を果たした。
地上に出ると朝日がまぶしく照りつけてくる。
長いことダンジョンにいたせいもありなかなか目が開けられない。
そんな俺たちに向かってダンジョンの入り口付近にいた自衛隊員たちが、
「「お疲れ様でしたっ」」
と声をかけてきた。
俺は「どうも」と、新木は「おうっ」とだけ返すとその場を立ち去る。
少しして目が慣れてきたところで、
「佐藤さんに連絡するからちょっと待っててくれ」
と新木に言い置いて俺は内閣総理大臣秘書官の佐藤さんに電話を入れた。
そしてこれから会う約束を取り付けると、新木を連れて【ゲート】で首相官邸の一室まで一気に移動した。
☆ ☆ ☆
「今回はまた沢山のアイテムを持ち帰られましたね」
テーブルの上だけではなく、部屋の床の上にも置かれていくアイテムの数々を見て佐藤さんが驚き口にする。
「そうですね。モンスターから奪い取ったアイテムも合わせると三十近くあると思います」
「それは素晴らしい。松原首相もきっとお喜びになると思いますよ」
と佐藤さん。
つまりここにはまたしても松原首相はいないわけだが。
「申し訳ありません。今は国会中継の真っ最中でして……」
とは佐藤さんがつい先ほど俺たちに説明した言葉だった。
今まで生きてきて国会中継なんて一度もまともに観たことがない。
あんなつまらなそうな番組、誰が観てるんだろうと不思議なくらいだ。
「それでは査定をしてまいりますので少々お待ちいただけますでしょうか?」
佐藤さんは言うと屈強そうな黒服の男性とともにアイテムを奥の部屋へと持ち運んでいった。
査定が終わるのを待つ間、俺も新木にならってふかふかの椅子に腰を落ち着ける。
「この椅子すごく気持ちいいな」
新木に向き直ると、
「だろ? この椅子いくらくらいすんだろうなー。くれねぇかな」
「いや、さすがにそれは無理だろ」
「そっかー」
新木は椅子に背中を預け深く息を吐いた。
それから二十分ほどして佐藤さんが部屋に一人で戻ってきた。
佐藤さんが口にしたのは「今回はすべて買い取るということで合計で一億円でいかがでしょうか?」とのことだった。
俺と新木は目を丸くしてお互いを見合った。
だってそうだろ。
たかだか二十歳前後の若造二人が一億円だなんて、夢みたいな金額だ。
俺も新木もノーというはずもなく二人して首を縦に振った。
ちなみに内訳を訊いてみたところ、一番高く買い取ってくれていたのは世界樹の葉で五千万円。
一番低かったのはオークが身につけていたバックラーの百万円だった。