第32話 地下十五階
「……きろよっ。おい結城、何寝てんだ起きろって!」
「……ぅん? なんだ……?」
目を開けると目の前には新木の整った顔があった。
「新木……?」
「やっと起きたか、結城。あんた寝てたぞっ」
「えっ」
俺は慌てて周りを見回す。
すると俺は壁を背にして座っていた。
どうやらその体勢のまま眠ってしまっていたらしい。
「ったく。何やってんだよ。あたしが寝てるのに結城も一緒に寝てたら意味ないだろ」
「あー、悪い。なんか目を閉じてたらいつの間にか眠っちゃったみたいだ」
「まあ、あたしたちが寝てる間モンスターが襲ってこなかったっぽいからいいけどよ」
「そうだな。ところで今何時だ……?」
俺はスマホを取り出そうとするも新木が「午前二時くらいだぞ」と教えてくれる。
「そっか」
「結城も寝てたんだからもう休憩はいいよな」
「ああ、平気だ」
俺は立ち上がってズボンについていた砂をはたき落とした。
ポーションを飲み干し、
「じゃあ行くか」
「おう」
近くにあった階段を下りていく。
☆ ☆ ☆
地下十五階。
ここではリフレクトダガーと神秘のドレスとレインボーエッグをみつけた。
リフレクトダガーは天に掲げると目の前にバリアを創り出すことが出来る短剣で、神秘のドレスは身につけると多少の切り傷や擦り傷程度なら自然に治癒してくれる防具だ。
レインボーエッグは割ってみるまで中に何が入っているかわからないという不思議なアイテムで、武器や防具が出てくることもあればモンスターが出てくることもある。
新木はそれらを【マジックボックス】にしまい込むと、
「こいつらも一個五百万くらいで買い取ってくれんのかな?」
と訊いてきた。
「さあな。どうだろうな」
松原首相や佐藤さんがどうやってアイテムを査定しているのか俺たちは知らない。
もっと言うと前回のダンジョンで手に入れたアイテムの買い取り金額の内訳も知らされてはいない。
前回はアイテムが六つで三千万円だったがどれが高かったのかは聞かされてはいなかった。
今思うと聞いておけばよかったかもな。
そうすれば高く買い取ってくれるアイテムはダンジョン内では極力使わずに、出来るだけ優先的に集めて持っておくということも出来る。
「あたしたち、この分だとすぐに大金持ちだな」
「そうだな」
大金持ちかはともかくとして、少なくともコンビニでバイトしていた頃より今は数十倍の稼ぎがある。
せっかくの強さを宝の持ち腐れにせずに済んだのだから松原首相さまさまだ。
もちろん向こうは向こうで俺たちに感謝しているのだろうがな。
「さてと、じゃあ再開するか」
「おうっ」
新木が元気よく返事をした矢先、
『グルルルルッ』
二体のブルファイターがのそのそとこっちにやってきた。
まるで俺たちが起きたのを見計らったかのようだった。
眠気覚ましにはちょうどいい。
「新木、一体は任せてもいいか?」
「当たり前だっ」
俺たちは顔を見合わせると、二人してブルファイターたちのもとへと駆け出すのだった。