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第31話 【ファイナルソード】

「ふぅー、勝った勝った!」

「それより顔拭けよ。血だらけだぞ」


地面に倒れているオークキングから装備品をはぎ取ろうとしている新木に声をかける。

新木の顔はオークキングの返り血で真っ赤に染まっていた。


「おう、そうだな」

新木は言うと、【マジックボックス】からタオルを取り出し顔や腕についた血を拭っていく。

そんな新木に、

「なあ、そろそろ地上では夜になる頃だ。今日はここらで野宿にしないか?」

と提案する。


「なんだ、もうそんな時間か。あたしは全然それでいいけどさ、結城は家の方は大丈夫なのか?」

と新木に訊き返された。


「大丈夫って何がだ?」

「いや、結城は実家暮らしだろ。連絡もせずに家に帰らなくて平気なのかと思ってよ」

「あー、別に問題ないさ。二十三歳の男が一日二日帰らなくたって心配なんかされないよ」

「そっか。ならいいんだ。あたしんとこは捜索願とか出されたし、家族に心配かけちまったからな」

新木は言うが、それは新木が中学生の時の話だからだ。

俺が女ならいざ知らず、とっくに成人になってる男が帰らなかったからといって、まさか捜索願など出されるはずがない。


「新木、マジックボックス出してくれ。中にまだテントとか入ってるだろ」

「ああ、あるぞ。異世界で使ってたやつがな」

言うなり新木はマジックボックスを具現化させる。


そんな時タイミング悪くオークキングとブルファイターが俺たちのいる空間に姿を見せた。

新木はすぐさま戦闘態勢をとろうとするが、

「新木はテントを頼む。あの二体は俺が片付けるから気にするな」

そんな新木を言葉で制し俺は二体のモンスターの前に立ちふさがる。


『ブファ、ブファー』

『グルルルルッ』


オークキングとブルファイターが俺を見ていきり立っている。

ブルファイターは体が球体に近くブルドッグのような顔面をした二足歩行のモンスター。

そんなブルファイターもオークキング並みの強さがある。


『ブファ、ブファー』

『グルルルルッ』


後ろ足で地面を蹴り上げていて今にも飛び掛かってきそうなオークキングとブルファイター。

新木ならともかく俺はこれらのモンスターと二対一でもなんら問題はない。

だがブルファイターは防御力がかなりあるため倒し切るのに多少時間がかかるかもしれない。

そう思った俺はあることを考え付く。


それは俺のスキル【ファイナルソード】だ。

【ファイナルソード】は俺のスキルの中でもとっておきの技で、俺がレベル999になった時に覚えたスキルでもある。

圧倒的な殲滅力を誇るこのスキルは一日に一回しか使用することが出来ないが、どうせあとは寝るだけだ。

寝て日をまたいで起きればまた明日使えるようになる。


それならばいっそ使っておくか。

俺はそう考え【ファイナルソード】の構えをとった。


俺が右腕を後ろに引くと何かあると感じたのか、オークキングとブルファイターが身じろぎしたのが見えた。

だがもう遅い。

今さら逃がすつもりはない。


くらえ!


「ファイナルソード!」


俺は右腕を前に出しながら空をなぎ払った。

その瞬間、まばゆいばかりの光で形作られた剣が現れオークキングとブルファイターに向かって伸びていく。


『ブファァァァーッ……!!』

『グルァァァッ……!!』


二体のモンスターは巨大化した光の剣に飲み込まれ、一瞬のうちに蒸発、この世から霧散していった。


光の剣が消えていき辺りは静寂に包まれる。

とその直後、俺の【ファイナルソード】の余波を受けて、

ピシピシ……。

とダンジョンの壁にヒビが入ってから壁全体が一気に崩壊した。


「おい、結城っ。そのファイナルなんとかって技、ダンジョン内で使うなって前に言っただろっ。もしダンジョン全体が崩れてあたしたちが閉じ込められちまったらどうすんだっ」

「あー、悪い。もったいないと思ってつい」

「何がもったいないんだよ。意味がわかんねぇ」

新木はぶつくさ言いつつそれでもテントを完成させていた。


「ダンジョン内では結城のゲートも使えないんだからな、閉じ込められたら一巻の終わりだぞあたしたち」

「わかったよ。もう使わないよ」

「ったく、頼むぞ」


そう言うと新木は靴を脱いでさっさとテントの中に入っていく。

まだどっちが先に仮眠を取るか決めていなかったのにだ。

寝ている時にモンスターに襲われないよう交代交代で眠ろうと提案しようとした矢先だったのだが。

……まあ、いい。

ここはレディファーストとやらで新木に先を譲ってやるさ。


「新木、三時間したら起こすからなっ」

「了解っ」

テントの中から投げやりな声が返ってきた。


さてと、見張り終了まであと三時間。

俺はスマホのアラームを三時間後にセットする。

そしてテントの横の壁に背中を預けて座ると、途中で手に入れていたポーションを口に流し込んだ。

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