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第3話 帰宅

ダンジョンを出ると外にいた人たちが俺のもとに駆け寄ってきた。


「無事だったのかっ?」

「その洞窟の中は一体どうなっていたんだっ?」

「中に何があったんですかっ?」


皆一様にダンジョンについて訊ねてくる。


「モンスターが出てきましたよ。それとアイテムも拾いました」

「も、もんすたー?」

「あいてむ……?」

俺の返答を受けてぽかんとした顔になる。


するとそこへ、

「ちょっと君、勝手に入っちゃ駄目じゃないか。危ないだろっ」

いつの間にかやってきていた警察官が俺に声を飛ばしてきた。


「すいません」

「とにかくこっちに来てっ。みなさんも何があるかわからないんですから洞窟から離れてくださいっ」


警察官の呼びかけに応じて俺たちはダンジョンから離れることに。

そんな中、一人の女性がスマホを見ながら声を上げた。


「ねぇねぇ、ちょっと。今SNSで確認したんだけど、世界各地にこれと同じようなものが現れているらしいわよっ」

「えっ、マジかよっ」

と言ってほかの人たちもスマホを取り出す。


「うわっ、本当だ。画像も一緒にアップされてるじゃん」

「ここのよりももっとでかいのもあるぜっ」

「すげー、どうなってんだよこれっ」


世界各地にダンジョンが……ここだけじゃなかったのか。


「おい君、何笑ってるんだっ」

「あ、え、す、すいませんっ……」

警察官に注意されハッとなる。

ここのほかにもダンジョンがあると聞き、俺は知らず知らずのうちに笑みを浮かべていたようだった。


その行為が警察官の癇に障ったのか、

「ちょっと君、交番まで来てもらおうか」

「え、なんでですか?」

「いいから来なさいっ」

俺は半ば強引に交番まで連れられて行くことになってしまう。


背中と肩に手を置き俺を押して歩き出そうとする警察官。

俺は警察官を横目で盗み見ながらいっそ逃げてしまおうか、とも思ったが、国家権力にたてつくと家族に迷惑がかかりそうなのでここは黙って従っておこう。

そう決めて俺は警察官と二人交番へと向かうのだった。



☆ ☆ ☆



交番に着くとそこには沢山の人たちが押し寄せていた。

それもそうだろう、大地震のあとに突如として巨大な洞窟が各地に出現したのだからパニックにならない方がおかしいくらいだ。


交番にはもう一人警察官がいたがとても手が回らない状況で、俺と一緒にいた警察官も対応に追われることとなった。

そこでその警察官は「君の住所と電話番号、一応おさえとくよっ」と俺から住所と電話番号を訊き出してからもう一人の警察官のもとへと駆けていった。


道端に一人取り残された俺は、

「……とりあえず、一旦家に帰るか」

家路につく。



☆ ☆ ☆



家には翻訳家の母さんと中学三年生の妹がいて俺を見るなり、

「大丈夫だった? ミサオ」

「お兄ちゃん知ってるっ? いろんなとこに洞窟が出てきたんだって!」

母さんは心配そうに、妹は少し楽しそうに口を開いた。


「ああ、俺は大丈夫だよ。洞窟の中も覗いてきた」

「えっ、お兄ちゃん洞窟の中入ったのっ?」

「ああ、目の前にあったからついな」

正確には洞窟ではなくダンジョンだが。


ちなみに言っておくと母さんと妹は俺が異世界に行っていたことは知らない。

というのも異世界にいた四年間、家族は俺が大学に行っていたと思っているからだ。

本当は大学にも通っていないし卒業もしていないのだが今のところバレてはいない……と思う。


「お兄ちゃん、ずる~い。わたしも入ってみたいなぁ」

「何言ってるのミキ、洞窟なんて危ないでしょ。ミサオも二度と馬鹿なことするんじゃないわよ」

「はいよ」

「は~い」

俺と妹は形だけの返事を済ませるとそれぞれの自室へと入っていく。



それから数日後、俺のもとに一本の電話がかかってきたことでそこから俺のダンジョン生活が再び幕を開けることになる。

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― 新着の感想 ―
「おい君、何笑ってるんだっ」 笑って悪いかと言ってやれ、と思う。人が死んだわけでもなし、笑うのを咎めるのは、横暴だと告発もできる案件。
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