第28話 オーク
港区のダンジョン、地下二階。
俺たちはダンジョンのところどころにいたハイドロゲドンは無視して通路を突き進んだ。
その甲斐あって普段よりも面白いように探索がはかどる。
アイテムも三つゲットしていた。
一つ目は魔力草。
これを食べるとスキルの使用限度回数が全回復するというアイテムだ。
味は決して美味しくないがなかなか使えるアイテムだろう。
二つ目はオークの肉。
文字通りオークというモンスターの肉で食べればお腹が膨らむ。
ダンジョン内では食べ物がなかなかみつからないので重宝する。
見た目は悪いが味は絶品。
三つ目はトライデント。
穂先が三つまたに分かれている槍のような武器だ。
俺も新木も武器を必要とはしないためこれは間違いなく換金候補だ。
☆ ☆ ☆
地下三階に下りると地面が固くなっていた。
しっかりと足を踏ん張れるのでだいぶ歩きやすく感じる。
とそこへ、
『ブオオォォー』
鼻息とも鳴き声ともとれるモンスターの声が聞こえてきた。
ずしんずしんと足音も近付いてきている。
その時点で俺はなんとなくモンスターの正体に察しがついていた。
「モンスターがこっちに来てるな。そこの角だぞっ」
「ああ、多分あいつだな」
通路の曲がり角から手だけが先に見えて、通路の壁を掴んでいる。
薄いピンク色の肌をしていた。
やはりか。
そして曲がり角の陰からのそっと姿を現したのは豚を二足歩行にして大きくしたようなモンスター、オークだった。
手にはシャムシールという剣を持ち軽装の鎧を身に纏っている。
『ブオオォォー』
鼻息荒く俺と新木をにらみつけていた。
「おい結城、せっかくだからあいつの武器と防具あたしが奪ってやるっ」
言うなりオークに向かっていく新木。
地面を強く蹴ってオークの顔面にパンチを浴びせようとする。
だがオークはこれに反応し、剣で新木のパンチを防いだ。
ガキィィン!
新木のパンチの威力が剣の耐久度を上回ったようでオークの持っていた剣が欠ける。
「あーくそっ! せっかく武器奪おうと思ってたのに、壊しやがってっ!」
自分が壊したくせにオークに対して腹を立てる新木。
その怒りをぶつけるかのように「この野郎っ!」とオークのお腹にこぶしをめり込ませた。
『ブオオォォー……ン!』
オークはその一撃で力なく地面に倒れ込む。
「あーっ、鎧も壊しちまったーっ!」
と新木が頭を抱える。
見るとオークのお腹の部分を覆っていた鎧は新木のパンチで粉々に破壊されていた。