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第25話 病院

新木が家にやってきた日の翌日、早朝。


まだ寝ている俺のもとに新木から電話がかかってきた。

珍しいこともあるものだと思いつつ俺は電話に出る。


「なんだ?」

『大変なんだっ。リコが、リコがっ……!』

新木が口にしたリコというのは新木の妹のことだ。

たしか俺のところと同じで中学三年生の妹がいると話していた。


「なんだよ、どうしたんだ?」

『さっき母さんから電話があって、リコに、リコに癌がみつかったって!』

「……癌……?」

『ああ。しかも悪性らしいんだっ。明日手術するって……!』

「……そ、そうなのか」


こういう時なんと答えれば正解なんだ。

俺は返す言葉がみつからずただ相槌を打つのみだった。


『父さんも母さんも今リコがいる病院にいるって言ってて』

「そ、そうか」


新木は昔から妹のことが大好きだった。

異世界にいた時は何かというと妹の話を俺にしていた。


『頼む結城っ。今すぐあたしを北海道まで連れてってくれ!』



☆ ☆ ☆



俺は自分で言うのもなんだがそれなりにいい奴だと思う。

だからこそ新木の頼みを二つ返事で了承した。


俺は急いで着替えると【ゲート】と唱え、新木が常宿にしているベイルランホテルの501号室まで一瞬で移動する。

さらに新木を連れて今度は北海道のリコちゃんが担ぎ込まれたという病院の近くに転移。


「リコーっ、待ってろーっ!」


叫びながら病院にダッシュで駆け込むと階段を二段飛ばしで上がっていく。

そしてリコちゃんのいる病室のドアを開けた。


「「レイナっ!?」」


そこにいた新木の父親と母親らしき中年の男女二人が驚きのあまり声をそろえる。


「なんでレイナがここにっ?」

「東京じゃなかったのっ?」

「んなことよりリコは大丈夫なのっ?」

数本のチューブが体につながっている少女がベッドで眠っていた。

あの子が新木の妹か。


ベッドに駆け寄りリコちゃんの腕を取る。

両手で包み込むようにして、

「リコ、あたしだよ。戻ってきたぞ」

いつになく優しい声色でささやく新木。


「ところであなたはどちら様……?」

新木の母親が怪訝そうな顔で俺に問いかけてくる。

当然だ。まったく知らない男が娘と一緒に病室にいきなり入ってきたら誰だって不審がる。


「あ、えっと俺は……」

さて、なんと答えよう。

慌ててここまでやってきたものだから考えていなかった。


「もしかして、レイナの彼氏さん……?」

「君がここまでレイナを連れてきてくれたのかい?」

半分外れで半分当たりだ。


「俺は新木……レイナさんの友達です。あと一応仕事仲間でもあります……」

「仕事仲間……?」

「じゃあキャバクラの……?」

「え、ええまあ、そんなとこです」

全然違うがこの状況ではこう答えておく方が波風が立たないだろう。


「リコ、元気出して。絶対に大丈夫だからな」

それだけ言うと新木は俺に向き直った。

そして両親の前だということもお構いなしに、

「結城、リコにリフレッシュをかけてやってくれっ」

そう言ってのけたのだった。

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