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第15話 二度目の面会

「いやあ、実に素晴らしい。さすが結城くんと新木くんだ。二人に頼んで正解だったよ」

ともろ手をあげて喜びを表現するのは松原首相だ。


ここは首相官邸。

今しがた中野区のダンジョンの攻略を終えた俺と新木は、内閣総理大臣秘書官の佐藤さんの案内のもと松原首相との面会を果たしていた。


「それでこちらがダンジョンの中で手に入れたアイテムです」

俺は新木から事前に預かっていた帰還石とエリクサーをテーブルの上に並べて置いた。


「この赤い石が帰還石で、こっちの液体がエリクサーでいいのかな?」

「はい、そうです。使用効果はさっき説明した通りになります」

「なるほど、ふーむ……」

松原首相は興味深げに帰還石とエリクサーを覗き込んでいる。

佐藤さんも気になるようで、少し離れた場所から二つのアイテムに視線を飛ばしていた。


「この二つとも私たちに譲ってくれるのかい?」

「えーっと、出来れば帰還石は俺たちで持っておきたいんですけど……なあ新木?」

「ああ、松原首相には悪いけどこいつは譲れないんだ」

そう言ってテーブルの上から帰還石を持ち上げる新木。


「そうか。わかった。じゃあエリクサーだけ買い取らせてもらうよ」

松原首相は言うと後ろに控えていた佐藤さんを呼びつけ、こそこそと内緒話をし始めた。

その間に新木は帰還石を【マジックボックス】にしまう。


三十秒くらいして、

「待たせて悪かったね。それではエリクサーだが、一つ五百万円で買い取らせてもらうけどそれでいいかな?」

松原首相が口にした。


「「五百万っ!?」」

思いがけず俺と新木がシンクロする。


「不満かな?」

「いやいや、とんでもないですっ。五百万円で買い取ってくれるなんて……逆にいいんですか?」

「もちろんだとも。本来ならば一億円くらい払っても惜しくはないアイテムなのだろうが、日本の財政状況はあまりかんばしくないのでね」

「そ、そうですか……」

「これは有意義に使わせてもらうよ」

にこりと微笑むと松原首相はエリクサーを持って部屋から出ていった。


部屋に残されたのは俺と新木と佐藤さん。

すると佐藤さんが口を開く。


「次のダンジョン探索に向かわれる候補地は決まっていますか?」

「いえ、まだです」

「そうですか。それでは決まり次第連絡を頂けますか?」

「はい、わかりました」


そのようなやり取りを済ませると俺と新木も部屋を出る。

そして首相官邸を黒塗りの高級車に乗ってあとにするのだった。



☆ ☆ ☆



車の窓から夜空を見上げると空一面に星が輝いていた。

時間を忘れしばらくその景色を堪能していると、

「到着しました」

運転手が声をかけてくる。


車が停まった場所は俺の家から三百メートルほど離れた地点。

家に横付けされるとコンビニバイト帰りなのにどういうことだと家族に不審がられる可能性があるため、俺はあえて家から少し離れた場所に停めてもらったのだった。


「ありがとうございました」

俺の事情を知っているのかはわからないが、とりあえず運転手にお礼を言うと俺は家へと歩き出す。


「今日一日だけでコンビニバイトの一年分くらい稼げたな……むふふっ」


あらためて自分の置かれている状況に感謝しつつ俺は自宅へと歩を進めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公たちがいい感じでおバカな点がいい。 どう考えてもエリクサーは億越えだしちょっとした武器もかなりの貴重品。 そもそも自分たちの価値がまるで分かってない辺りが非常識にもほどがあって良い。…
[気になる点] さすがにエリカサーで500万は安すぎでは? そもそもの契約の5000万も安い。
[良い点] こういう設定の小説好き [気になる点] 財政状況が、、、 いや、それにしても500万は安すぎんかね 主人公達もあの値段で納得しちゃうの馬鹿すぎる [一言] たまーに余計な文言が出てくる 例…
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