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第14話 キングゴブリン

「放せよ、くそっ!」

『グガァァーッ!』


体長四メートルほどあるキングゴブリンが新木の頭を背後から掴んで持ち上げている。

新木は「てめぇ、この野郎っ!」と手足をばたつかせているが、後ろ向きなのと体の大きさが極端に違うせいでなかなか攻撃が当たらない。


そこで俺が駆けつけようと足を一歩前に踏み出すも、

「結城っ! こいつはあたしに喧嘩を吹っかけてきたんだ! だからあたしがぶっ倒すっ!」

手を出すなと念押しされてしまった。


キングゴブリンはゴブリンやホブゴブリンと比べると別格の強さを誇るモンスターだが、新木が負けるとは思えない。

新木にたてつくとあとが面倒そうなので俺は静かに推移を見守ることにする。


『グガァァーッ!』

新木の頭を掴む腕に力を込めるキングゴブリン。

キングゴブリンの腕に血管が浮き出てくる。


「いってぇな、くそっ! いつまでも調子に乗ってんじゃねぇぞ、このデカブツがっ!」

言うなり新木は後ろに手を回し、自分の頭を掴んでいるキングゴブリンの手首をがっちりと両手で掴んだ。

そして、

「うぉりゃーっ!」

男顔負けの雄たけびを上げるとキングゴブリンの手首を握り潰した。


『グガアァァァァーッ……!!』

予期せぬ反撃を受けキングゴブリンは新木を解放する。

痛みに打ちひしがれ地面にうずくまるキングゴブリン。


その隙を逃すまいと新木はキングゴブリンの顔を横から思いきり蹴り飛ばした。

ゴギュッ。

という音がしてキングゴブリンの首が百八十度回転する。

そしてそれが最後の一撃となった。


「はぁっ、はぁっ、倒してやったぞ。どうだ、結城。見てたかっ?」

「ああ、見てたけどさ……」

「……なんだよ」

「自信満々なとこ悪いけど、お前頭から血出てるぞ」

「何っ!? あ、ほんとだっ! ちっくしょー、このデカブツめっ!」

頭を触り血が出ていることを確認すると、新木は地面に横たわるキングゴブリンの死体を蹴り上げる。


「ヒールかけてやろうか?」

「いいよこれくらい。唾つけときゃ治るから」

いつの時代の人間だ。


「馬鹿なこと言ってないでおとなしく俺に従え。お前に倒れられると俺がしわ寄せをくうことになるんだからな」

「ちっ……わかったよ」


不承不承ながらも新木は俺のそばにやってきた。

かなり嫌そうな顔をしている新木に向かって俺は手を伸ばす。


「ヒール!」


俺が言葉を発すると新木はオレンジ色の光に包まれた。

新木の頭の傷が癒えていき、十秒ほどで完治した。


「あ、ありがとよ」

新木は申し訳程度の声量で感謝の言葉を口にする。

ここで茶化すと逆ギレするのは目に見えているので、俺は素直に感謝の気持ちを受け入れた。


「と、ところでよ、結城っていくつスキル覚えてるんだっけ?」

微妙な空気感に堪えられなくなったのか、新木が話題を変える。

そんなことろくに興味もないだろうに。


「五つだよ。ヒールとリフレッシュとゲートとデスフレイムとファイナルソードだ」

「そっかそっか、そうだったな……あれ? っつうかゲートがあるなら帰還石はいらねぇんじゃねぇのか?」

「おい新木、忘れたのか? 俺のゲートはダンジョン内では使用できないっていう制約があっただろ」

「あー、そういやそうだったか。悪ぃ、普通に忘れてたわ」

と頭を掻き掻き新木が言う。


俺のスキルの一つである【ゲート】は時空を歪めて何もないところに扉を創り出し、そこを通過することで瞬間移動を可能にするというものだ。

だがそんな便利なスキルもダンジョン内では使えない。

そのため一瞬でダンジョン内から地上に戻れる帰還石はとても貴重品なのだった。


ちなみに【リフレッシュ】は状態異常回復のスキルで、【デスフレイム】と【ファイナルソード】は攻撃型のスキルである。


「んなことより先進もうかっ」

自分から話を振ってきたくせに新木はそう言って通路を歩き出す。

まったく、勝手な奴だ。



☆ ☆ ☆



しばらく歩くと体育館ほどの広い空間に出た。

そこにはモンスターの姿こそなかったが、遠くの方に何やら小さな物体が見えた。


「なんだあれっ」

新木が駆け出していく。

俺もあとを追った。


「おい結城、見ろよこれっ。エリクサーだぞっ」

「ああ、本当だな」


俺たちがみつけたものはエリクサーというアイテムだった。

ボトルに入ったその液体は飲むことでどんな怪我も治し、体力を全回復させるという優れものだ。

これに関しては政府もきっと欲しがるに違いない。


「いいお土産が手に入ったな」

「だなっ」

俺の言葉に新木が大きくうなずいた。

新木はスキル【マジックボックス】を発動し、現れ出た箱の中にエリクサーをしまい込む。


「さて、探索再開だ」

「おうっ」


その後、俺たちはダンジョン内をくまなく探索した。

しかしダンジョンは地下十階までしかなかったため、俺たちはもと来た道を戻り地上への帰還を果たすのだった。

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