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第12話 地下四階

『ギギッ』

『ギギ……』

『ギギギッ』


階段を下りて地下一階。

そこにもゴブリンが数体いた。

手にはこんぼうを握り締め、それぞれが俺と新木をにらみつけている。


「またお前に任せようか?」

新木に訊ねると、

「いや、もう充分だ。結城も好きにやってくれよ」

と返ってきた。


熱しやすく冷めやすい新木のことだ。ゴブリンを一体倒したことで満足したのだろう。


俺たちのそんな会話を知ってか知らずか、ゴブリンたちが扇状に広がり次の瞬間、俺たちに飛びかかってきた。


「おらぁっ!」

威勢よく声を発しながらゴブリンのあごを打ち砕く新木。


もしここに俺の母さんがいたら「女の子がそんなはしたない声を出すんじゃありません」とか言って注意するんだろうな、なんて考えつつ、

「はっ」

俺もゴブリンをパンチ一発で葬り去る。


『ギギッ!?』

俺と新木の戦いぶりを見て勝てないと悟ったらしいゴブリンが逃げの態勢を取った。

俺は逃がしてやろうと思ったが新木はそんなゴブリンに対しても容赦はしなかった。


「待てこらぁっ!」

『ギョァッ……!』

背中を見せていたゴブリンに前蹴りをくらわせ壁に勢いよくぶつける。


「へっ、殺そうとする覚悟があるってことは死ぬ覚悟もあるってことだよな」

かっこいいのか、かっこ悪いのか、よくわからないセリフを吐くと足元に転がるゴブリンを見下ろす新木。

その立ち姿はさながら雑誌の表紙を飾る一流モデルのようだったが、いかんせん足元の血みどろのゴブリンがその雰囲気を台無しにしていた。



☆ ☆ ☆



地下二階、地下三階と危なげなく進んでいき、俺たちは地下四階に到達する。


「つうかさぁ、このダンジョン、ゴブリンしかいないんじゃないか?」


新木がつまらなそうに口にした。

新木の言う通りここまではゴブリンしか出て来てはいない。

新木ももちろんだが魔王を倒した俺からすれば物足りないことは言うまでもない。


「まあ、これで年収五千万円ならボロい商売だろ」

「そりゃそうだけどさ」

しかもアイテムを政府が高額で個別に買い取ってくれるというのだから不平不満など言える立場ではない。

俺は自分に言い聞かせる意味も込めて新木にそう声を投げかけると通路を奥へ奥へと進む。


「帰還石っていくらくらいで買い取ってくれるんだろうなー」

隣を歩く新木が独り言のようにつぶやいた。


「ダンジョン探索が五千万円ってことは帰還石一個で十万円くらいにはなるかな」

「さあな、こればっかりは持ち帰ってみないとなんとも言えないな」


日本政府がどれほどそのアイテムを欲しているかによる。

帰還石はダンジョンに潜る者たちからすれば喉から手が出るほど欲しい貴重なものだが、政府がそれを欲しがるかは甚だ疑問だ。

政府が持っていてもそれこそ宝の持ち腐れというものだろう。


「新木、お前家族にはなんて説明したんだ? ダンジョンの話をせずに十九歳で年収五千万円とか説明が難しいだろ」

まあコンビニバイト設定の俺が言えた義理ではないのだが。


「あー、それならあたし、東京でキャバ嬢してるってことにしてあるからさ。全然平気っ」

「キャバ嬢? お前が?」

みてくれだけはともかくとして、とてもじゃないがキャバ嬢が務まるような性格ではないだろ。


「それで家族は納得したのか?」

「もっちろん」

「へ、へー……そうなのか」


新木の家族は少々変わっているのかもしれないな。

などと考えていた矢先、

『グギギッ』

『グギギギッ』

話に夢中になっていて気付かなかったが、俺と新木は二体のホブゴブリンに前後を挟まれてしまっていた。

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[一言] おきゃばでいいのか(困惑)
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