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第11話 ゴブリンと帰還石

ダンジョンに一歩足を踏み入れると空気が変わった。

どこか懐かしい感覚。きっと異世界の空気に似ているんだろうな。

そう感じたのは新木も同じだったようで自然と口角が上がっている。


「結城、なんだかわくわくするな」

「そうだな」

俺は本心からそう返した。

穏やかな日常も決して悪くはないが、異世界でモンスターたちと戦い続けた四年間が俺の性格を変化させてしまったらしい。

昔は慎重で安定を求めるタチだったはずなのだが、今は新木同様わくわくが止まらない。


高鳴る鼓動を抑えつつ俺たちはダンジョンを突き進んでいく。

すると前方の曲がり角の陰からモンスターが姿を見せた。

緑色の体をした小型のモンスターだった。


それを見て、

「ゴブリンだっ」

新木が声を上げる。


「すげー、本当に異世界みたいじゃんか。懐かしーっ」

「ああ」

俺もゴブリンを見るのは約半年ぶりだ。

薄気味悪い見た目をした奴だが今は妙に親近感を覚えるから不思議だ。


『ギギッ』

そのゴブリンは俺たちの強さなど計ることも出来ず走って向かってくる。

小さな体に似合わず好戦的なモンスターなのだった。


「結城、あたしがやるから手ぇ出すなよっ」

「わかったよ」

『ギギッ!』

手に持ったこんぼうを振り上げながらジャンプしたゴブリンは、勢いそのままに新木めがけこんぼうで殴りかかってきた。


それを左腕で受け止める新木。

バキッとこんぼうが砕け散る。


『ギギッ!?』

「お返しだっ」

今度は新木の攻撃の番。

驚きひるんでいるゴブリンの横っ面を右のこぶしで打ち抜いた。


『ギャッ……!』


新木に殴り飛ばされ壁に激突したゴブリンはそれっきり動かなくなった。


「へへっ。どんなもんよ」

新木は褒めてほしそうな顔で俺を見てくる。

だがこれくらいのことで褒めたりはしない。

ゴブリンの強さはたかが知れている。

スライムにちょっと毛が生えた程度のモンスターでしかないのだ。


それでも新木は満足そうにうなずくと、

「さあ、どんどん行こうぜっ」

鼻息荒く通路を歩き出した。



☆ ☆ ☆



「おい結城、見てみろよっ。なんか落ちてるぞっ」


前を行く新木が口を開く。

俺の返事も待たずに駆け出していった。


「おおっ。帰還石じゃんかっ」

赤く光る石を拾い上げ新木。

そのまま振り返り俺にグーサインをしてみせる。


新木が手にした帰還石とは、砕き割ると半径一メートル以内の者をダンジョンから瞬時に地上へと戻すアイテムで異世界のダンジョンでは幾度となくお世話になったことのある便利なアイテムだ。


「いいもん拾ったーっ」

ほくほく顔の新木は続けて「マジックボックス」と唱えると、巨大なクーラーボックスのような入れ物を具現化させた。

そしてふたを開けるとその中に帰還石を放り投げる。


「おい、割れたらどうすんだよ」

「大丈夫だって。心配性だな結城は」

「お前がガサツなだけだ」

その後新木はふたを閉め、もう一度「マジックボックス」と唱えてそれを消失させた。


「相変わらず便利なスキルだな、それ」

「へへっ、いいだろ」

得意げに鼻を鳴らす新木。

ポーターとして異世界に召喚された新木にとっては唯一使いこなせるスキルだった。


「さてと、探索を続けるか」

「おうっ!」


およそ今時の若い女とは思えない返事をして新木は意気揚々と再び歩き出した。

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