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第10話 中野区のダンジョン

しばらく都内を走ったあとタクシーを降りる俺と新木。

ダンジョンの入り口を遠巻きに眺め、

「あそこか……」

俺は声を漏らす。


――だがしかし、

「おっと、君たちそれ以上は立ち入り禁止だよ」

「さあ、戻った戻った」

ダンジョンに近付いていくとそこにいた自衛隊員たちに止められてしまった。

軽くあしらわれる。


あれ? おかしいな。

松原首相からダンジョン探索の公認をもらっているはずなのだが……これでは話が違うぞ。


「おい、あたしたちはなぁ、松原首相に頼まれてダンジョンに来てやったんだぞっ。いいからそこどけよっ」

「何言ってるんだ君? 頭おかしいんじゃないのか」

「職務を邪魔すると君たち大変なことになるぞっ」

「なんだとーっ。やれるもんなら――」

「こら、それくらいにしろ」

喧嘩っ早い新木の腕を掴み強引に自衛隊員からひきはがすと「失礼しましたっ」と言い残してその場を去る。


「なんだよ、結城っ。放せったらっ」

「落ち着け新木。俺たちのダンジョン探索は秘密なんだからあんまり騒ぐな。通行人が見てるだろ」

他人の目を気にしない性格の新木が自衛隊員相手に喧嘩腰で喋っていたものだから、道行く人たちが不審がって俺たちを見ている。


「きっとさっきの自衛隊員たちには知らされていないんだ」

「じゃあどうすんだよ」

「佐藤さんに連絡してみるからちょっと待ってろ」


新木をいさめてから俺は内閣総理大臣秘書官である佐藤さんに電話をかけた。

多忙なのかなかなかつながらなかったがしばらくして、

『はい、佐藤です。お待たせして申し訳ありません結城さん』

と受話器の向こうから佐藤さんの声が聞こえた。


「あの、今ダンジョンのすぐそばにいるんですけど、ダンジョンに入ろうとしたら入り口にいた自衛隊の人たちに止められちゃって……」

『本当ですか、それは申し訳ありません。話は通していたはずなのですがおそらく現場の自衛隊員まで話が行き届いていなかったのでしょう。こちらの不手際なので大至急手を打ちます。誠に申し訳ありませんでした』

こちらが恐縮してしまうほど何度も謝る佐藤さん。

受話器の向こうで頭を下げている姿が目に浮かぶようだった。


「いえ、それならいいんです。じゃあ俺たちちょっと待ってますから」

『はい、よろしくお願いいたします。本当に申し訳ありません』

これ以上謝らせるのも悪いので早々に話を切り上げると俺は電話を切る。


「で、なんだって?」

「現場の人間には話が行き届いてないっぽいって。すぐどうにかするみたいだからとりあえずここで待ってよう」

「なんだよ。佐藤さんってしっかりしてそうだったのに案外抜けてるんだな」

多分佐藤さんのせいではないと思うが面倒なので反論するのはやめておいた。


それから五分ほどして自衛隊のお偉いさんと思しき人がやってくると、ダンジョンの入り口の前にいた自衛隊員たちに何やら耳打ちした。


すると自衛隊員たちの態度が豹変、

「さきほどはすみませんでしたっ」

「ささっ。どうぞこちらに」

手のひらを返したように俺と新木を招き入れてくれた。


新木は「最初っからそうすりゃよかったんだよ」などとぶつくさ文句を垂れていたが、これでようやく大手を振ってダンジョン探索に挑めるってわけだ。


「新木、準備はいいか?」

「誰に言ってるんだよ。あたしは早くダンジョンに入りたくてうずうずしてるんだぞっ」

「じゃあ、行くか」

「おうっ」


こうして俺たちは中野区に出現した未知なるダンジョンに足を踏み入れるのだった。

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