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第70話 剣術指南(1)

「いってらっしゃい」


アリアに見送られ小春日和を後にする。少し歩き北大通りに出る。そのまま北に向かい、神殿と大型ポータルを過ぎ坂道に差し掛かる。次第に貴族の建物が増えていき、そして、


「到着ー!それじゃベル鳴らすねー」


カランカランという音が辺りに響き、少しの間があった後、屋敷から一人のメイドがやってきた。


「お待ちしておりました。こちらにどうぞ」


メイドは門を開け三人を招き入れ、屋敷に向け先導する。玄関を通り、庭を見渡せる通りを歩く。少し歩くと庭が大きくひらけた場所が見えてくる。そこには木剣を振るイリアの姿があった。


「イリアちゃん、来たよー!」


イリアは振り返り三人に寄ってきて、


「みんな来たのね!今は剣術練習中だからちょっと待っててね」


そう言うと元の場所に戻り、再び木剣を振り始める。見るとメイドの一人がイリアの側につき、その様子を眺めている。


「ねぇねぇ、剣術の指南ってメイドさんがやってるの~?」


セーレはここまで先導してきたメイドに疑問を投げ掛ける。


「はい。彼女は元冒険者で剣の扱いに長けておりますので、お嬢様の指南役としても従事しております」


「そうなんだー。メイドさん色々できるんだねぇ」


「イリアさんは昨日実戦形式の練習が無くて不満だと言っていましたが、木剣での模擬試合も行わないのですか?」


「そうですね…、お嬢様からは何度もその話が出ていましてご主人様からも許可は頂いているのですが、木剣といえど万が一お嬢様が怪我などされますと大事だということで、未だに型の練習にとどまっています」


「ん~、そうしたら怪我の可能性が無くなればいいんだよね~?精神剣でやれば安全じゃないかな~」


「そうですね。殺傷能力ゼロ、当たり判定のみの精神剣での試合ならば良いかと思います」


「???あの、精神剣とは…?」


「まあまあ、ちょっと向こうのメイドさんに提案があるから呼んできて欲しいな」


先導役のメイドと指南役のメイドが話しあう。そして指南役のメイドが三人に元に来た。


「あ、あの、試合をできるようにする方法があると聞きましたが…」


「少し見ていてください」


ミカエルは持った剣でセーレを切りつける。


「なっ…」


しかし、セーレに傷は無い。


「魔力で作った剣ですが、殺傷能力をゼロにしてあります。ただし当たった感覚は残してありますので、これであれば安全に試合ができると思います」


「こんな魔法が使えるなんて凄いですね…あ、あの、もしかして剣術も詳しいんですか?」


「そうですね、もしよろしければ私と一試合してみませんか?それで判断していただければと思います」


「わ、わかりました。それではこちらにお願いします」


ミカエルと指南役のメイドは庭の広場に出る。木剣を振っていたイリアもその手を止め、二人の様子を伺う。


「それではこちらの精神剣をどうぞ。さきほど見せたものと同じ能力のものです」


「は、はい。お借りします」


剣を受け取り、指南役のメイドはミカエルと間合いを取る。十分に離れた後、両手で剣を持ち静かに正面に構える。一方ミカエルは特に構えの様子を見せず、片手で剣を持ったまま佇んでいる。そのまま二人が硬直して間が空く。構えを取らないミカエルを不思議に思いつつ、指南役のメイドが発する。


「ま、参ります!」


剣を体の横に構え踏み込み、一気に間合いを詰める。そして横薙ぎの一閃を繰り出す。ミカエルはその横薙ぎに対して紙一重でかわし手首を突く。手首に衝撃を受けたメイドは剣を離してしまい、横薙ぎのスピードも加わり後方へと剣が飛ばされた。一瞬の出来事にぼうっとしていたメイドだが、ハッと現状を見て負けを認める。


「ま、参りました…」

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