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5_冒険者

「え?いや嘘だ。え?本当に?本物なんですか?」

ギルドの受付嬢は目を丸くして尋ねた。


「ああ、このあたりにあるたぶん発見されていないダンジョンにミノタウロスと謎の虎型魔獣がいた。まぁコイツらが殺し合った後に漁夫の利を得た格好だ。で、これがその素材の角と牙と、魔石だ」


俺はそれらをテーブルの上に置いた。


結局、受付嬢は対応しきれず、その支部のギルドマスターが現れて対応してくれた。


「まぁ本物か偽物かは私には判別がつきかねますが、凄まじいオーラを放っているとしか言いようがありませんな」


「一応、死体はバラしてダンジョンの外にまでは運び出して隠してるから、早めに竜車の手配を頼みたい」


「は、はい」


まぁ、結局ディアのお陰で難なく、ダンジョンから抜け出すことができ、最寄りの街にもたどり着けた。で、こうしてギルドへ来て、あの魔獣どもの素材売却の話もできているワケだ。



結局、また後日の話だが、あのミノタウロスと、黒狼虎という魔獣の素材は、1,100万イェンというとんでもない価格で買取してもらえた。


「エイス様は騎士団に居られたのですね?」


そのときにギルドマスターはその話を振って来た。


「え、ええ。まぁそうだけど」


「折角なので冒険者登録されませんか?元騎士団の方も多いですよ?」


ああ、冒険者か。そういやあんまり考えたことなかったな。とはいえ、今後も生きてはいかないとならんしなぁ。


「そうですね。じゃあお願いします」


「では、Fランクからスタートです。しかし、今回の実績でいきなりCランク昇格ですね」


周りが「おおお!!」とどよめく。


「いや、俺は漁夫の利を得ただけですよ?」

本当は違うが自分の力でない、というところは事実だ。武器が強すぎるだけなんだから。


「ええ、それを考慮に入れた上でのCランクです。まぁそれに……あのダンジョンを発見して生きて出られるだけで、実力者なのは間違いありませんし、エイス様には騎士団での実績もお有りですから」


……このオッサンはおそらく俺を人脈的な意味で繋ぎ止めたいのだろう。まぁ確かに新たに発見された、というか俺が発見したあのダンジョンは異常だ。レベルが高すぎる。まぁそれはきっとディアに関係があるのだろう。


「まぁわかりました。Cランクからやりますよ」


俺はそういうと宿屋へ戻った。


そんなこんなでやるべき事は済ませた。そして、きっと疲れていたのだろう。後頭部を殴られたかの如く、俺は一瞬で眠りについた。



さて、その日以降、ディアが俺に話しかけることは暫くなくなった。


そんな訳で俺は暫くは、稼いだ金で宿屋に居続けた。誰ともコミュニケーションをとらず、ただ飯だけ食って寝る怠惰な日々を送った。


仕方がない。俺は傷ついたのだ。

側から見たら浮浪者のように見えたかもしれない。

きっと目つきも悪かっただろう。


そんなこんなで二週間が過ぎた。

さて、と俺は思った。


仕事をしよう。


俺は新米冒険者だ。行かなければならない、あそこに。





俺は武器(ディア)を見つけたダンジョンにいた。


出てくる時にわかったが、最初に俺が落ちた場所は地下14階層であった。


何階層まであるのか分からんけど。


で、気づいたのは比較的浅い階層は、そこまで地上の魔獣と変わらないレベルだった。で、俺はとりあえず10階層くらいまで潜ることにした。


お、出たな。


そこに現れたのは、一つ目の大鬼だった。まぁ強さとしては、魔力がある頃の俺よりやや弱いくらいか。まぁちょうど良い。


俺は、武器を構えた。

そして引き金を引く。


ガンッ!!という轟音。


あ、外れた。


やっぱ狙いが甘いよなぁ。前にディアにも言われたが。


ならば斬撃か。俺は武器を上段から振り下ろした。

そしてここぞ!というタイミングで引き金を引く。


あれ?反応しない。


タイミングが悪かったか。

あ、大鬼が怒ってる……。


「グオオオオオッオオ!!!」


大鬼は俺を力任せに打った。

やっべ!いてぇ!ガードが遅れてたら死んでた。


俺は4メートルも後ろに吹っ飛んだ。


ガンッ!!


俺は後ろに吹っ飛びながら引き金を引いた。


そして、ようやく命中した魔弾は大鬼の腹部を吹き飛ばしていた。



・・・・・・


という感じで来る日も来る日も、ダンジョンで魔獣を狩りながら、ときに射撃の訓練をしたり、剣を振りながら引き金を引く練習をしたりと、基礎からこの武器の扱いを試行錯誤した。


剣とはまた勝手が違うので、苦労したが、基礎的な射撃とトリガーを使った斬撃に関しては問題なくできるようになったな。うん。


正直、最初にいた14階層はディアの助けがあったおかげで突破できたんだと思う。

なんとなく13~14階層くらいでガラッと出てくる魔獣が変わる印象だ。


とはいえ、全体的にこのダンジョンはレベルの高い敵が多いと思う。並の冒険者では太刀打ちできないだろう。騎士団時代の俺が以前の装備で挑んだとしても、一桁台の階層までが限界だと思う。


で、そんなことを俺は1ヶ月ほど繰り返した。


繰り返しの中で、いろいろと機構を弄ってみたりもしたので、わかったことも多々あった。


魔弾の範囲やら、威力は変更可能なことが分かったし、斬撃をするとき、トリガーに付与できる効果もいろいろ変更可能らしい。ただ、その辺は魔力操作がモノを言うようだ。


俺は魔力病で魔力を練れなくなった筈だったが、この武器を起動した時は、魔力が流れるのを確かに感じる。ただ魔力の質は以前と異なっている気がするが……その辺の理由は未だに謎である。


それにしても、なんちゅう汎用性なんだ、しかし。普通、魔法には詠唱という面倒臭い工程が伴うし、剣術は遠距離攻撃にはどうしても弱い。その辺の問題をいとも簡単にクリアしている。


おまけに、剣戟強化や身体強化もなぜか以前よりスムーズにできるようになってきている気がする。おそらく、そういう補助機能のようなものが付いているのだろう。


そういう訳で、テンションが上がってきて、扱いに自信もついてきた俺は、最初いた場所より下の15階層まで降りて来ていた。


『エイス様……』


ん?あれ?


「ディア……か?何で出てこなかったんだ?てか今出てきたのは何でだ?」


『エイス様、私は現在、出たいように出られる訳ではないのです』


「ああ、そうなのか?」


『エイス様……この1ヶ月ほど陰ながら見守っておりましたが、やはりエイス様の戦闘とか武器の扱いに関するセンスは天才的ですね。最終魔導兵装シリーズの中でも、扱いが難しいとされる私をいとも簡単に使いこなし始めています。第一次人魔対大戦時にも、貴方ほどの才を持つものは、そういなかったでしょう」


「……ありがたいけど、それは訂正しとくよ。幼少期からの血の滲むような鍛錬の賜物だ」


『そうですか。ただ、そんなエイス様でも、ここは危険な感じがするので、頑張って出てきました』


危険?ダンジョンは下に行けば行くほど危険って言うからなぁ。まぁそりゃそうかもしれない。


『エイス様。そういう危険ではないのです。危なくなったらすぐに逃げると約束してください』


ふむ。なるほど。そうしよう。


と、思った瞬間、俺の注意を引くものがあった。それは匂いであった。生暖かい血の匂いだ。それにプラスして何かの香のような?人工的な匂いが混じっていて、頭がクラクラする。耳を澄ませると何やら独特の声のような、音のようなものが複数聴こえる。


なんというか、宗教の匂いがする。


俺は、その発生源と思われる方向に向かい、歩を進め続けた。





な、なんじゃこりゃ!!そう思いつつ俺は目立たないように、静かにその場に近づいた。


ダンジョンの15階層に、なぜこんな場所があるんだ?


ダンジョンとは入り組んだ通路の連続である場合が多いが、ここはポッカリと巨大な穴が空いていた。多数の通路がそこへ繋がっており、俺はそれを眺めている格好だ。


そして、その巨大な穴の中が、建造物のようになっている。どこか宗教的な雰囲気を感じさせる建造物だ。教会のような?いや、違う。もっとおどろおどろしい雰囲気だ。


そう、まるで邪神教のような。


で、その部屋の中には、多数のフード付きのローブを羽織った人達がいた。その中心に山羊の頭を被った司祭風の男が立っている。


で、その男が何やら怪しげな魔法陣を書いているのだ。


そして、ローブを羽織った男のうちの一人が若い女を連れてきた。目鼻立ちのはっきりした、肉付きのいい美しい女だ。若い女は殆ど裸みたいな格好をさせられて拘束されていた。どこかフラフラとした様子である。


え?ちょっとヤバくね?

俺はそう思い始めていた。

お読み頂きありがとうございます。


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