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3_魔人の右腕、または銃剣

説明はややこしかったが、簡単に纏めるとこういうことらしい。


① この魔導兵装とか名乗る剣は、今の世界では失われた技術を使った強力な武器である

② この魔導兵装は、この時代の人間には使えないし、第一次人魔対戦のときも適合者、つまり使える人間はほぼいなかった。

③ 俺は何故か使える

④ この場にずっと居続けるより、俺に使って役目を果たさせてほしい


まあ、いろいろとツッコミたい点にはいったん目を瞑ろう。喋っていることとか。

一番気になるのは②と③だ。


俺はまあ、多少、剣術魔導のセンスはあったが、普通の人間だ。騎士団にいた際の栄光はほぼ、努力によるものだった


なぜ使える?


『わかりませんが、限られた少ない情報から想像するに、魔力病というのが影響しているのでは?』


――確かに可能性はあるか。滅多になる者がいない、魔力に直接影響を与える病気だからなぁ。


「で、俺は貴方様をどのように生かせばよろしいので?」


俺はこの武器の機嫌を損ねないように、そのように尋ねた。


『まず、私の呼び名を決めてください』


ああ、まあそうだな。貴方様とか武器とか剣とか呼び方が一貫していないもんな。


「ちなみに以前は何と御呼ばれで?」


『最終魔導兵装シリーズ 魔人の右腕(ディバインアーム)と。見た目からの略称で銃剣(ガンエッジ)と呼ぶ人もいました』


……前者に関しては呼びづらいな。なんか恥ずかしいし。ガンエッジ、銃と刃か。見たまんまだがそれは機能の名前であってこの、語りかけてくる何かの名前としては適切でない気がする。


なんかシンプルなのを考えよう。


「じゃあ、ディアで」


『……え?』


「いや語り口のイメージが女性っぽいから、そうしようかと」


まあ、魔人の右腕(ディバインアーム)を略したというのもある、というかそっちがメインであるが。


『え、ええ。ではそのようにお願いいたします。マイマスター』


「ええと、そこはエイスでよろしく」


『承知しました。エイス様』


そうして、俺たちの契約は成立した。


「さて、ここから出ないとなあ。でも戻ったら多分いるよなあアイツら」


俺は、あのモンスター達を思い出して非常にテンションが下がっていた。


『なるほど。ちょうどいいですね』


え?なにが?



「うおっぷ」

俺がその部屋から出ると、元の場所に飛び出した。


えーと状況としては、ああわかった。


さっき見た魔獣と俺の後ろにいた魔獣が闘おうとしている。


おいおい、地獄のような光景だな。


二足歩行する虎のような魔獣と、二足歩行する筋骨隆々の牛のような魔獣が相対しているのだ。俺なんぞ弱過ぎて完全に無視されている。


こんなもんダンジョンから出てきたら、大騒ぎじゃ済まない案件だろう。


『では、試しにあの二体の闘いに乱入してみましょうか』


はい?


『まずは私の切先をあの虎のような魔獣に向けてください』


いやいやいや。


「いやだから、ちょっと待ってくれって。こういう時は放っておいて漁夫の利を得るのが基本だろ!」


『え?訓練に漁夫の利もないでしょう?』


訓練?訓練だと?あの化け物二体を相手に?


『とにかく、切先をあの虎型魔獣に向けてください』


とりあえず俺は言われた通りにした。

あの化け物二体はこちらを気にせず、睨み合い威嚇し合っている。


『では、照準が合ったので引き金を引いてください』


引き金?引き金ってなんだ?

ああ、この柄のところについているこの指で引っ張れそうなコレか?


そいや!


その瞬間、俺の体が練れなくなった筈の魔力が奔流のように巻き起こり、力が武器の元へ集まるのを感じた。そして、見たことがない体系の魔法陣が、切先から発生する。


一瞬、その禍々しい虎の煌々と光る目がこちらを見た気がした。


ガンッ!!!


とてつもない衝撃と音が俺の腕、肩、鼓膜にぶつかった。そして俺は後ろに吹き飛んだ。たぶん軟弱なヤツなら肩が外れていただろう。


「ぐっ!!」


俺は衝撃に耐えた。


「いてててて、何だ?」


と、俺は前を見て驚愕した。


目の前に、頭の消失した虎型の魔獣の胴体と、それを呆然と眺めるミノタウロスの姿があった。


その虎型の魔獣の胴体の首があった場所からは血液が勢い良く飛び出し、天井まで噴き上げている。むせかえるような血の匂いが部屋に充満した。


そして、虎型の魔獣の胴体は、ズウウンと、大きな音を立てて倒れたのだった。


そして、まだ自らの死を認識できていないかの如く、痙攣し、手足をバタつかせている。


え?ちょっと待ってくれよ。え?なに?俺がやったのかアレ?嘘だろ!?


頭吹っ飛んでんじゃん!


『もう一発、あの魔獣にも撃ってください』


俺と違って、とても落ち着いた様子で、ディアはそう言った。あの魔獣、とはミノタウロスのことだろう。俺は再度、引き金?を引いた。


また轟音。

今度はミノタウロスの脇腹が抉れていた。

流血し苦しむミノタウロス。その脇腹からは臓腑がこぼれ落ちかかっていた。それを手で抑えているのだ。


……えええ?

何で?騎士団にとっての悪夢、ミノタウロスは攻撃が効かないことで有名だった筈だが……。


『エイス様の狙いはまだ甘いですね。まぁ初めてにしては充分すぎるくらいですが。では、接近戦へ切り替えましょう』


接近戦、って。

あの頑丈なミノタウロスに剣戟が効くのか?


『斬りつけた瞬間に引き金を引いてください』


ふむ、何かあるんだな?

やってやるさ。


俺は決めた瞬間、走り出していた。


ミノタウロスがこちらに気づき、棍棒を振り回した。だがダメージがあったのだろう。その直線的な攻撃を俺は難なくかわし、左脇腹方向から大振りの横薙ぎの斬撃を放った。


よし、このタイミングかな?


俺は引き金を引いた。


その瞬間、ディアが超高速で振動し発光した。

と、同時に無数の爆裂魔導のような衝撃と轟音が刃から発せられる。斬!!と臓腑が切断される感触。


「ブピギャッ!!」


ミノタウロスのその口から発せられた音は恐らく断末魔だった。



「……とんでもねぇな」


俺のその言葉は、その二体の魔獣の死体を見て発せられたものだ。


まず、虎型の二足歩行する魔獣は顔面が吹っ飛んで粉々に砕けていた。そしてミノタウロスは、左脇腹から真っ二つに分断されている……だけではなく、その内臓が外部に爆散し飛び散っていた。


「なにをやったのお前?」

最早、俺は自分でやったとは思えないその悪魔のような所業について、ディアの意見を求めるしかなかった。


『まずは、魔弾の放出ですね。貴方の魔力で弾を使って飛ばすシンプルなものです』


……魔弾ね。まぁ魔弾っていうと魔術師も使うし、稀に剣士も使う初級魔術だが、普通ちょっとした詠唱がいるものだし、威力もスピードもおかしかったけど。まぁそれはいいや。


「ミノタウロスを斬ったときは何したわけ?」


『あの魔獣は結構硬いので、振動による斬撃補助効果と、内部からの爆散効果をトリガーを引いた際の補助効果に付与しました』


ああ、あれか?俺はできないけど、リタとかがよくやってる風魔法付与とか、最強の一角と名高かった聖騎士団長のエックハルトの得意技の爆砕斬とかに近い感じか?


それをあの引き金一つの操作で?しかも同時に二つ?馬鹿げてる。


しかもミノタウロスだぞ?結構硬い?とかいうレベルじゃない。攻撃も効かず、無傷で聖騎士団の一個小隊を壊滅させた怪物だぞ?


『念のため、訂正しますが』


ん?なに?


『あれは私がやったのでなく、エイス様がされたことです。私は道具であり、補助をしたにすぎませんから』


「ははっ」


俺は最早乾いた笑いを発するしかできなかった。

お読み頂きありがとうございます。


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