5.思い、神像の前で
「どうして私じゃダメなんですか! こんなにも貴方を愛しているのに!」
「だからなアリア、別にお前がダメなわけじゃないんだ。ただ、年れ」
「ダメじゃないならいいじゃない! こんなにも好きなのに! 愛しているのに!」
「俺は42で、お前は28だ。他にもまだまだいい奴なんてゴロゴロいる。俺以外にも神官だって沢山いるだろう」
「年齢なんて関係ありません! 私はシスター見習いの頃から……ずっと……ずっと……」
「アリア……」
「貴方だけを……ジョセフだけを思って今日まで生きてきたのに!」
「……そうか……お前の気持ちは有難い……だがやはり」
「いいです」
「……え?」
「もう……いいです。貴方と一緒になれないなら、なれないのなら」
「……一度だけ、私を抱いて下さい」
「何を言っているんだお前は! 神官でも、私はここテザモスの! レスティ様を信仰する神官だぞ!」
「……つまり、愛の無い行為は出来ない……と?」
「……そうだ」
「……愛の無い、愛、愛が無い……愛、愛愛愛……ああ、あああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ガンッ
「何処へ行くんだアリア!」
アリアが叫んで何処かへ行ってしまった後、僕は恐る恐るジョセフの元へ駆け寄った。
「ジョセ……フ? 今のは……」
ジョセフは体勢を起こしながら話し始めた。
「すまない、変なところを見せてしまって。」
「そんな事はいい! 大丈夫なの?」
「ああ、俺は大丈夫だが、飛び出していったアリアが心配だ。ジェス頼めるか?俺は少し動けそうにない……」
「う、うん。わかったよ、ジョセフは少し休んでて」
「ジェス……いや、ジェシウス・クライスト。アリアの事、頼むな」
「急に改まらないでよ! びっくりするじゃないか……うん、アリアを追いかけるよ」
「頼んだぞ」
僕はアリアが走っていった方へ向かった。
走って探したが、アリアの部屋にも、教会にも、食堂にもいない。他のシスターや神官様に聞いても見てないらしい。
(何処に行ったんだアリア……)
僕は最後に神殿へ探しに向かった。
「ああ……ああ……」
「! アリア……!」
「アリア! 大丈……」
神殿には、服装が乱れ、髪もボサボサになったアリアが蹲っていた。
「アリア……一旦部屋に戻ろう? 一旦休んで、落ち着いたらさ、もう一度ジョセフと話そうよ」
「……ねぇジェス?」
「どうしたのアリア?」
「……ジェスは私の事、愛してる?」
「何さ突然……そりゃ、普段から世話焼いてくれたり、育ててくれたり……あ、愛してるよ」
「ほんと? ……なら……貴方は私を抱ける?」
「そ、それは……僕には、そんな事、出来ないよ……」
「はは、あはは……やっぱり……誰も……私を愛して……はは」
「ああ……ああ……」
「アリア……」
どうすれば、どうすればアリアを……
「あっはー! こいつぁ盛大にぶっ壊れたなぁ! かはははっ!」
「!?」
神像の前で項垂れるアリアのすぐ側に見知らぬ男が現れた。男は、アリアを見て、心底嬉しそうに笑っていた。
「どうしてアリアを笑うんだ! お前は……お前は誰だ!」
「ははっ……はぁ、俺か? お前は知っている筈だぞジェス?」
「ど、どうして僕の名前を!」
「仕方ねぇなぁ、俺様はなぁ〜……」
「純潔の神、レスティ様だ。かははっ」
ここまで御覧下さりありがとうございました。
ぼちぼち雲行き怪しいです。