花柄
【昨日、髪を切ったときに】
ひとりで選んだ服を
はじめて着た日の午後
幼い興奮を覚えていて
それはたしか
みどりいろした春のこと
わたしをわたしらしくした季節のこと
忘れないように
記憶を 古い箱にしまって
ふいに思い出している
花柄のワンピース
たぶんおとなになるにつれて
季節は鈍い光となる
いずれだれかを好きになれば
季節は生まれかわり
そして光はたしからしくなる
花柄した
いつかの服の
やわらかい興奮は
将来の恋のうつくしい伏線なのですよ
(どんなことがあっても
すてきな恋だったからね)
ざっくりと髪を切り
あの頃のような髪型にする
ふいに思い出す
花柄のワンピース