表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大切なもの

作者: 城戸 月







俺はいつも兄さんの後ろについて行った。




兄さんは俺の誇りだった。



デカくて、たくましくて、強くて、

俺にないものを持っていた。




俺も兄さんみたいに

強いオスになりたくて

兄さんのあとを付けては

真似をしてみたりした。








俺は時々悪夢を見る。



でかいヤツらに囲まれて

必死に抵抗する俺。




虚しくもでかい奴らは

比にならないくらい力が強くて

呆気なく急所を捉えられる。



もがき苦しんで助けを求めても

味方が来てくれるどころか

でかい奴らがどんどん増えてくる。




そこで目を覚ますと

兄さんの背中が見える。









あぁ、兄さんだったら

あんな奴らこてんぱんに

してしまうんだろうな…。




落ち込む俺に兄さんは言った。


「強さを求めれば、

大事なものを失うだろう。」


俺にはその意味がわからなかった。











ある晴れた日。



俺は珍しく一人でいた。



兄さんの言葉が、

ずっと胸につかえていた。





朝露に濡れた葉が光を反射して

キラキラ輝いていた。



とても綺麗だった。








ふと目をそらすと

俺より体の小さい奴がいた。




こいつなら俺でも…。




とにかく勝ちたかった。

勝って自信に繋げたかった。



そんな疎かな考え方が

いい意味でも悪い意味でも

自分を変えることになるとは

その時は気づいていなかった。






俺は夢で実践したとおり

めいいっぱいの力で襲いかかった。



小さいやつはビクッと跳ね上がり

逃げようともがくが

力の差は明らかだった。




俺は心の中でガッツポーズをした。


これで兄さんに一歩近づいた…!!





トドメをさそうと右腕を振り上げる!!






動かない。







体が…動かない…!?









小さいやつを睨みつける。




小さいやつは意地悪く微笑む。





「悪いけど、私の勝ちみたいね。」





息が苦しい。


体がだんだん冷えてきて

頭がぼんやりする。






「体の大きさだけが力じゃないの。



私も、自分を守るので精一杯。」







視野がボヤけてくる。


力は完全に入らない。


それどころか体の感覚がなくなってきた。








「安心して。



今はゆっくりおやすみなさい。



お腹が空いたけど、今は待っててあげる。」






あぁ、兄さん。



こういう事だったんだ。




そんな難しく言うから

俺、分からなかったよ。





「兄さん…」





俺は間もなく、

消えてしまうのだろう。


















今年3歳になる息子が

急にしゃがんだ。




「なに見てるの?」




視線の先には蜘蛛の巣。



そこに掛かったのは、

まだ成長しきってないであろう

小さなカマキリ。




残酷だが、これも現実。



息子は何を言うとでもなく

カマキリが蜘蛛の胃袋へと消えていくのを

ただただ見つめていた。





「何が強いのかわからない世の中よね。」




息子が私を不思議そうに見上げた。





「1番大切なのはね、自分の“命”なのよ。


さ、帰っておやつの時間にしましょ。」






手を繋いで歩くふたりの親子を

草陰から見つめるカマキリは

つらつらと涙を流していた。









ーENDー







大切なもの ~短編集~

初めて書いた小説なので伝わるか心配です。

とにかくなんでもいいので感想が聞きたいです。

お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ