柿原莉子の楽器&用語解説with冴木・松尾 楽器編
「まずは木管のクラリネットから。クラリネットはクラと略されて呼ぶことが多いわね。18世紀に造られたといわれ、比較的新しい楽器です。黒くて縦に長い楽器ね。音色が柔らかくどんな楽器にでも合わせやすいので、バンドの調和役として舞台の前列にいる場合が多いわね」
「そんな役割があったのか。ただ、メロディーばっか吹いてて、連符がすごい楽器だと思ってたわ」
「冴木ってバカよね。確かに、金管の花形がトランペットなら木管の花形はクラってとこね。よく同じメロディー担当してるわね」
「はぁ!?自分の楽器で手いっぱいだっつの。なんで全部の楽器のアレコレ知ってんだよ」
「中学から学指揮やってたの。指揮者なら個々の楽器の特徴は知っておかなきゃね。主な楽器なら吹けるわよ」
「バケモノかよ……吹部バカだな」
「褒め言葉として受け取っておくわ。ちなみに、バスクラリネットという仲間がいて、バスクラは低音に特化したクラってとこね。次はフルートね」
「俺がする……」
「松尾君っ!?」
「いつからいたんだよ、松尾」
「ずっと……フルートは今は金属で出来ているから金管じゃないのかと思われがちだが、昔はちゃんと木でできていた。横長でよく見るとたくさんのボタンが付いていて、押すと穴がふさがる仕組みになっている。リコーダーのように穴を指で塞ぐわけではない。フルートは木管の中ではリードを使わない楽器。1800年代に今のような形になった。きらびやかな音色、静かな音色、和風な音も出せる表情豊かな楽器、です。ドソロの場面がよくある」
「よく勉強してるわね、偉い!次はサックス」
「どうもッス……」
「みんな、サックスサックス言っているけど正式名称はサクソフォンね。由来は作った人の名前がアドルフ・サックスさんだから。楽器の中で唯一作った人がはっきりしてる楽器とも言えるわ。金属だけれどリードを使って音を出すから木管のくくりね。金管と木管のいいとこどりで、金管と木管の中和役。特にジャズ、吹奏楽の分野で活躍している。自由に表現がしやすく、自己主張したい人にはオススメの楽器よ」
「田中先輩にはちょうどいい楽器ってことか」
「フフ、そうね。サックスと言ってもそれは総称で、ソプラノ、アルト、テナー、バスの4種類あって、演奏できる音域が違うわ。ほかにも、吹奏楽で使われる木管はあるけれどウチの吹部にはないからいつかね。次は金管、トランペット」
「よくペットって略されるよな」
「そうね。オーケストラ、吹奏楽、ジャズ幅広い分野で活躍している。一番有名な楽器と言えるかもしれないわね。一昔前は、ピストンが、ボタンがないため、ドレミファソラシドを吹けなかったの。金管全般は木管のリードの代わりに唇で音を出す。だから昔は唇だけで演奏していた」
「すげーな。でも、ピストンがないとか面白い形だな。クククッ」
「金管の中では最高音を担当。キラキラとした音色が持ち味。とりあえず無駄に明るいわね。音が突き通るような特徴があるから、ペット対他の楽器で音量勝負させても勝つはずなんだけど……ウチのとこはダメね」
「わかったから、ダメ出しなんて始めるなよ?止まらないんだからよ」
「コクコク」
「松尾君、地味に同意するわね。次はホルン。先祖は角笛、狩猟に使われ肩に掛けられるようにパイプが円形なっている。それにバルブ、つまりボタンがついて今の形になった。バルブが付く前はペットと同じようなものだったけれど、一つ違うのは横にあるベルに手を突っ込んで音を様々に変化させていたというところかしらね。これはゲシュトップ奏法と言われていてたまに、今でも使われる。柔らかい音色で、適度に華のある音。バンドに華やかさを添える。優しさも荒さも表現でき、ホルンで奏でる和音は厚みがある。ソロも立派にこなす」
「地味なように見えて結構活躍してる楽器だよなぁ。あと、金管の中で一番音域は広い。俺らの低い音域まで出されたときはびっくりしたぜ」
「私はホルンの吠える瞬間が好きよ。あとグリッサンドをした後の抜けた音は興奮するわ」
「次はトロンボーンか?俺が言う」
「めんどくさがりが珍しいわね。どうぞ」
「トロンボーンはピストンとかはなく、管を動かし、楽器自体の長さを変えて音を変える。そして全金管に共通するように唇を振動させ音を出す。楽譜はヘ音記号。細かい音符は演奏できないが、グリッサンドがしやすい。よく多用される。ハッキリした強い音が特徴。よく和音で動くことが多く、ハーモニーの美しさが売り。ホルンにも負けないつもり」
「そうね。最後の審判で鳴るのはトロンボーンと言われているわ。教会や宗教でよく活躍していた。つまり、神の楽器として扱われていた。私にぴったりだと思わない?」
「柿原のどこが神なんだよ……」
「学指揮は神なのよ。崇め奉りなさい!っと冗談はさておき、次はユーフォニアム」
「絶対、本気……」
「よく言った松尾っ!」
「ゴホンッ。ちなみに、ボーンって略されるわ。次はユーフォニアム」
「UFO……じゃなくてユーフォ」
「俺、中1のときはUFOとユーフォの発音の違いがわかんなかったわ」
「なんとなくわかる……」
「松尾君まで!?さすがにわかるわよ。ユーフォは比較的最近にできた楽器と言われていて、1位か2位くらいに認知度が低い。でも最近はユーフォが主役のアニメが出てきたから日の目を見るようになったんじゃないかしらね。形はチューバのミニサイズ版だけれど音もバンド内の役割も違う」
「チューバについては後で説明ってことでいいか?」
「そうね、とりあえずユーフォが先ね。音域はトロンボーンと一緒。トロンボーンやホルンの二つの楽器の音色が出せるわ。よく響く艶のある音が特徴ね。いいとこどりのおいしい楽器とか言われることもある」
「なんだか説明短くねぇか?」
「諸事情よ。次はチューバ。形はエリンギを縦に切った断面図のような形をしているわ。ほかの管楽器はベルが下や前を向いているけれど、チューバ、ユーフォ、サックス、バスクラは上を向いているのも形の特徴。音域はユーフォの1オクターブ下の音域を吹いている、低音楽器ね。縁の下の力持ちといわれ、マーチでは刻んでリズムを取ったり、太い厚みのある音で高音の音を支えます。地味な楽器といえばそうなので、人気ない楽器ナンバーワンだけど、バンドの迫力や厚みを出すのに大事な楽器よ。チューバが上手いバンドは上手いといわれるほど大事ね」
「そういや、チューバってTubaって表記されるだろ?中学んとき、未経験者にツバって読まれてチューバの人、ショック受けてたわ」
「ツバ……ははは、はは、はははは」
「松尾君。チューバを舐めたらダメよ、目立つときは目立つカッコいい楽器なんだからねっ!冴木、楽器経験者ならわかってるはずよ」
「わかってるって。吹奏楽やってると低音の良さがわかるよな。低音楽器って言うなら吹奏楽唯一の弦楽器、コントラバスがいるけど……ウチにはいないな」
「ふむ……」
「いない楽器は出てきたら説明するわ。最後は打楽器群ね。パーカッション、略してパーカス。第二の指揮者といわれていて、テンポ管理に重要ね。管楽器では出せない多彩な音でバンドを飾ってくれるわ。打楽器は……楽器がたくさんあるので省略!!」
「雑だなっ!」
「しゃべりっぱなしは疲れるわね。あーあー何か飲み物が欲しいわー」
「はい……」
「気が利くわね。松尾君、ありがとう」
「スルーかよっ。飲み物くらい自分で…ってそれ俺のペットボトルッ!!!!!」
「学指揮は神……」
「ゴクゴクゴク、プハァーーーー。いいじゃないの、吹部に居て今更間接キスなんて気にしないわよ」
「そうだった……間接キスなんて気にしてらんないもんな、楽器なんてよ。自持ちじゃない奴は誰が使ったかわからん楽器を使うからな。つか、実践しなくてよろしい。ツッコむのもめんどくなってきたわ」
「すまん……」




