地区大会 本番
コンクール地区大会当日。
学校に集合し、課題曲と自由曲を通し、楽器をトラックに積み込む。
「みなさん緊張してますねぇ。音が固いです。あなたたちの練習密度は私が保証します。胸を張ってください」
みんな、誇らしげな顔つきになる。
「そうです。いい顔ですね。さぁ、出発しましょう」
「「「はいっ」」」
会場が近いので交通機関を使って会場に行く。遠い場合は貸し切りバスを借りるときもある。
坂下は……どうなるのかわからないが。
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会場に着く。
うだるような暑さの中、トラックが頻繁に行き来をし、楽器を積み下ろししていた。
この光景を見るとコンクールだということが胸に迫って来る。
「はいはい、ここは通り道ですので開けてくださーい」
ロビーでトラックを待機していると、係の人に端へ端へと追いやられる。すると、演奏が終わった団体が通る。
「グスッ、グスッ……」
その中には泣いている人が数人見えた。俺たちにもあるように、他の団体にもそれぞれの物語があり、通ってきた道がある。泣いていた理由には「失敗してしまった」だとかいろいろな思いがあるんだろうな。
「みなさん、注目してください。今日の打楽器搬入を手伝ってくださるOB・OGを紹介します」
コンクールで使用する楽器はすべて自分たちが持っていかなくてはいけないことになっている。そのため、打楽器も運ばなくてはいけないのだが、そのすべての打楽器はパーカスの人が運ばなくてはならず、管楽器の人は別行動になるので途中までしか手伝えない。
そこで、パーカスの人数が少ない学校はOB・OGに頼み手伝ってもらう。
吹部の特徴を挙げるとするならば、縦のつながりが広いということだろうか。例え卒業したとしても演奏会やコンクールに手伝いとして来てもらったり、お客さんとして来てもらうことができるからだ。
「「「よろしくお願いします」」」
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楽器搬入はOB・OGに任せ、チューニング室という所で最後の音出し、チューニングを済ませる。この後は本番まで一切音を出すことはできない。
チューニングを終え、誘導係に案内され、舞台裏へ続く階段を上る。
「ここからは舞台に音が響きますので音を出さないよう、ご注意ください」
舞台につながる階段はたいてい狭く、大型楽器。特にチューバ、バリサク、コントラバスはぶつけないように注意を払う。
静かな緊張が周囲を満たす。
「では、ここでお待ちください」
誘導係が消える。舞台裏で打楽器と合流し、全員が揃う。
「私を前に合奏の隊形になってください。目をつぶって、静かに深呼吸」
尾崎先生の指示が入る。
舞台では演奏が始まっている。
舞台裏に居るときはどうしても、前の団体の音が上手く聞こえてしまう。落ち着け自分、胸を張れ。
フゥー…… スゥー……
「はい。じゃあ、楽器に息を入れてください。音は絶対に!出してはいけませんよ」
特に金管は注意をして息を入れないとちょっとした唇の振動で音が出てしまうのだ。
中学に上がりたてのころは、無音で楽器に息を入れる練習をしたものだ。
前の団体の演奏が終わる。
「じゃあ、順番に入ってください」
静々と舞台に入っていく。暗がりの中、それぞれの席に座り、席の位置や譜面台の高さを調節する。
「もっと横に広がってください」コソッ
「譜面台の調節の仕方は大丈夫ですか?」
舞台の上は意外と騒がしい。舞台のセッティング係が忙しそうに動き回る。
「OKです」
尾崎先生がセッティング係に合図を出すと舞台照明が付く。そして、学校名、曲名、指揮者名をナレーションされ、尾崎先生が客席に向かって礼をする。
「みなさん、楽しんで。さぁ、音楽を聴かせましょう」コソッ
1人の表情を確認し、指揮棒を構える。
1,2,3,4
坂下高校吹奏楽部のコンクールが始まった。




