地区大会 前日
コンクール前日。
「……これで最後の通しは終わりです。どこか、やっておきたい部分はありますか?」
夕暮れの体育館。運動部に拝み倒して譲ってもらった。
「先生、課題曲と自由曲の切り替えをもう一度したいです」
「わかりました。他には?」
楽器を構えるみんな。
「ないようですね。では」
パッパンパパパン
指揮を収める。そして……
1,2
シャァアアアン
水をためていた堰を取り払った時のように、音楽が流れだす。
指揮を止める。
「はい。皆さん、今までよく頑張りました。本番は明日です。でも、皆さんの舞台は全国ですよね?」
「「「はいっ」」」
お互いを信じ切った返事。笑顔の者、涙を浮かべる者もいた。
「いいでしょう。明日は普段通り吹けば地区大会は余裕でしょう。演奏順は午後なので学校に集合して少し吹いてから会場に行きます。今日はゆっくり身体と唇を休めてください。夜更かし厳禁ですよ」
演奏順はクジで決定される。
笑顔を見せる尾崎先生。
「起立、礼」
「「「ありがとうございましたっ」」」
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地区大会最後の合奏の帰り道。
「最近、松尾と佐野さ。目に見えて仲良くなったよな」
「そうねぇ……正直、居づらいわ」
でも、寂しくない夕暮れだ。
「柿原、あっちだろ?明日、よろしくな」
「えぇ」
ドスッ
腹にパンチをくらう。
「暴力反対だ!女子が殴るものじゃないぞ」
「お父さんみたい。冴木殴ると元気が出てくるのよね。冴木限定よっ!」
大変元気が出たようで。笑顔を振りまき去っていく。
こんな限定いらねぇ。と思いつつ俺の顔は笑っていた。
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ピコン
<明日、絶対最後にしないぞ!!>田中
<頑張ろうね~>高遠
<チューバの支えはバンドの支え、そして部の支え。ありがとう。明日は楽しもう!>二宮
<部長、お疲れ。明日は思いっきり音楽しようね(笑)>前田
次々と更新されてくメッセージ。
「部長も悪くない仕事だったかもね」




