夏
地獄の期末テストを終え、部活の時間の濃さは更に増し始める。
坂下高校は最終下校が平日でも休日でも18時30分。ウチの部活は平日は18時まで。休日の一日練習は9時から15時までだ。定休日はなく、基本毎日だが、この時間は比較的ぬるいほうだ。強豪校は夜までやっていたり、9時から18時までが当たり前であったりする。強豪でなくともこういう時間まで部活活動をしている吹部はざらにある。
受験生との兼ね合いと、尾崎先生の「いくら練習したって効率が悪ければ意味がない。集中してできれば長時間吹いたのと同じになる」との下、尾崎先生が坂下に来てから、部活時間は変わらないらしい。
ただ、「時間の量がモノを言う時もある。集中し、練習に工夫を凝らさなければいけない」とも言っている。
セミがうっとおしい7月に入った。コンクール予選は7月の末、もうすぐそこまで迫っていた。
休日練習はほぼ、ずっと合奏が入っている。
「個人練習の時間は今後、ほとんどありません。明日以降の合奏をより良いものにするため、個人練ができるときはしっかり、できないとこを練習しましょう。それから、予定表を見てください。計4回、体育館での合奏があります。明後日が最初の体育練になります。体育館は大変暑いので派手なTシャツ以外ならば着ても結構です。熱中症は恐ろしいので。ね、冴木君?」
「……そうですね」
部長までも、まだ引きずるか……
「では気を付け、礼。さようならー」
「みんな、休めるときは休んでねー」
コンクールまであと3週間。
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「尾崎せ、ん、せ、い!日に日に上手くなっていきますねー。5月の頭に聞こえてきた音は俺でもわかるくらい酷かったですよ」
5月の頭と言えば、お別れ演奏会のときである。
「あら、ありがとうございます。5月のあれも、コンクール的には下手かもしれませんけど、私は好きですけどね」
今年のハーモニーはそれぞれの音が独立したようなハーモニー。混ざるべきところは混ざりあう。けれど、主張が激しい。色で言うならば虹色。
でも、まだ濁っているところもある。そこを直すのは指揮者である私の役目。
「尾崎先生は平日、ほとんど職員室にいますけどいいんですか?」
職員室にて。
「うるさく言ったってできないときはできないですし、私は信頼しているのでね。今年の代は何を言ってもへこたれない、芯の強い子たちです。ただ、万が一に折れてしまったときは心配ですけれどね……」
「きっと、いい関係を築いていらっしゃるんですね。見習いたいもんですわ。それと、追試者が出なくてよかったですな」ニヤニヤ
「えぇ、本当によかったですよ……」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。




