夏は刻一刻と迫りくる
体育祭からしばらく、グラウンドで寝て熱中症で倒れたという事実は部内にとどまり、その記憶がみんなの記憶から薄れるまで笑いものにされたのだった。
「最近は暑くて、音程が合いづらいな」
「そうねぇ。暑いと音程も合わないけど、冴木倒れちゃうかもね~」ニヤニヤ
楽器は金属や木でできているので湿気や気温の影響を受けやすいのだ。
また、楽器には癖がある。楽器の癖は使っていくと付くものだ。同じ年に、同じ工場で作られたトロンボーンにしたって吹いたときの癖は楽器ごとに違うのだ。
「うっせぇ」
パパーーーー
楽器で気分を紛らわす。
「はははっ。クーラーくらい付けてくれればいいのにねー。また熱中症の子とか出ちゃうかうもだし、練習環境が最悪ね」
「そういえば、3年の先輩は遅刻、早退増えてきたなー」
「毎日出て、合奏さえしっかり出てくれればそれ以上は望まないわ。休憩お終い、練習始めるわよ」
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「みなさん、おはようございます。1人を除いて、ケガ等なく体育祭を終えたようですね」
「「「あはははは」」」
尾崎先生と目線が合う。
クソー、いじらなくたっていいじゃないか……
「さて、あと期末テストが終わればコンクールにまっしぐらですねぇ。今度は追試者がでないといいのだけれど……フフフフ」
下を向き昏く笑う尾崎先生。
カツンカツン
「さぁ、始めましょうか」
纏う雰囲気がガラリと変わる。
「パーカス、もう少し出してっ!……pが弱い!!ただ小さくすればいいわけじゃないですよっ」
「ダメダメよ、もっと隣のブレスを感じて」
「ここは音量出して……ここは落として」
「フルート、装飾音符もっと前に出して」
「指揮見て!!」
課題曲の細かい所を修正をする。
「……私は高校よくヤンチャしたものでねぇ。男子校だったんですけどね、掃除の時間とかにバレーしたりしたものよ。あと、蛍光灯で遊んだりとか。蛍光灯の中って真空名の知ってましたか?あれをやり投げの要領で投げて上手くするといい音が鳴るんですよ。ホホホ……」
尾崎先生の合奏は突然、脱線話が始まるときがある。
多分、休憩のつもりもあるかもしれないが……一度始まるとなかなか止まらないのだ。
「先生ってね、結婚してるんだよー」
高遠先輩がコソッと情報提供してくれる。
「えぇえー!先生って結婚してるんですかっ!?」
「バカ、声がデカいっ」
柿原が大きい声を出す。
「あらー?何か問題でも?」
キャラ的に問題というか、疑問です……
「そうそう、家内に「吹奏楽と私、どっちが大切なの?」と聞かれることがしばしばあるわねぇ。もちろん、君だよって言うんだけどねぇ」
顔をポッと赤くさせてクネクネする尾崎先生。
「「「なんで先生を選んだんだろ、先生の奥さん……」」」
このあと、合奏は無事に再開した。




