合奏後の片づけ
休日練習の終わりはみんなダラダラとおしゃべりをしていることが多い。なので、部室のカギ閉め等は最後に残る人がする。
「最後まで残る人ぉーーー」
なので、部長が聞くのだ。
松尾が手を上げ続けるが気づかれない。
「先輩、松尾が手を挙げています」
「あっ、ごめんね。なんか、松尾君って見えないんだよね~」
そう言って松尾に鍵を渡し、帰っていった。
「地味に傷ついてる……」
松尾は基本無表情、というか表情の変化が微妙なのだ。そして、身長がデカいが静かに、ひっそりと佇んでいるので存在感がない。
やっと、最近になってわかってきた。
「松尾、深い意味はないと思うから気にするな」
ポンと松尾の背を叩く。
「わかっている……」
ポキポキと指を鳴らす松尾。
これは不満の証拠だ。拗ねていると思うと笑えてくる。
「松尾ってよく残ってるのか?」
「まぁな。フルートもっと上手くなりたい。楽しい」
「そうかー、そうだよなー。松尾の今の時期って何やっても上達するからなー」
スポーツでもそうかもしれないが、初心者であるうちはグングン上手くなる。楽器で言えば、日に日に出せる音が増えていく感じ。それと同時に音もよくなっていくのが自覚できる。楽器という国を征服しているような感覚があって楽しかったなぁ。
でも、それがある程度いくと、ちょっとやそっとじゃ前には進めなくなる。そこからは自らの意志が必要になるのだ。多分、高校で上手い人と普通の人の差って楽器への思い入れの違いなんだろうなと思う。
「俺も、残って練習しよう」
正直、中学では一番上手だった自信はある。そこで俺は妥協をしてしまったんだろうな。高校で柿原に出会って、刺激を受けた。上には上がいる、もっともっと上手くなれるんだってな。
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「うーーーん」
思いっきり背伸びをする。ボキボキボキと背中から音が響く。
「そろそろ最終下校だ。松尾、楽器片づけようぜ」
「このフレーズが綺麗に吹けたら……」
「吹きすぎても唇に悪い。今日はお終いにした方がいい」
「そうか……」
素直に楽器を片づけ始める松尾をしばらく眺める。
訂正しよう、フルートを眺める。
「木管って片づけ大変だよなー」
フルートで言うと、フルートは最初からあの長い形ではない。頭部管、主管、足部管の3つの管をつなげてできている。また、練習後は水分を拭かなければいけないので面倒そうだ。
クラは上管、下管の2つの管から。
サックスもマウスパイプと本体と連結させることが必要だ。
特に、クラとサックスはリードを振動させて音を出すため、マウスピースという所にリードをセットしなくてはならない。
金管では本体にマウスピースをつければ終わりだ。ただし、トロンボーンに関してはベルとスライドが別なので連結させる作業がいる。ホルンもベルと本体が分かれているものがあるが、基本は一つだ。
金管のマウスピースというのは、トイレのスッポンのような形をしていて唇を当てる部品だ。特に、低音楽器になるとマウスピースが大きくなるのでチューバのマウスピースはまんまスッポンだ。
「急いでるときは大変だが、それ以外のときだったらそうでもない。丁寧に使うと愛着がわく……」
片付けが終わったのか、カバンをゴソゴソし、リップを口に付けた。
「そうか……」
どっぷり吹部にハマってんなぁ……
吹部に入ると男子がリップを付ける瞬間が見られるぞ。注意、必ずではない。(作者)




