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後悔

 柿原と自分の音だけが響く教室。窓辺は夕焼け色に染まっている。


「曲を聞いてからなんか変よ」


「中学最後のコンクールを思い出してたんだ。男だからさ、コンクールに持っていく楽器の積むのにいつも最後まで学校に残ってたんだけど、毎回綺麗な夕焼けでさ。コンクール本番より夕焼けの景色ばっか覚えてる。最後のコンクールも綺麗な夕焼けだった」


 コンクールでは自分たちが使っている打楽器を持っていかなければならないのだ。特に演奏順が早い学校はコンクール前日にトラックに楽器を積み込む。


「だからなによ」


「今の自分が、中学生の時にいれば、曲に対して、音楽に対してもっとわかることがあったんじゃないのかなって思って。曲が語ってくれる多くの事をもっとわかってやれたのかなって。後悔してる。最後のコンクール、予選で落ちたけど何も思わなかったんだ。どこかで県には行けないって気持ちがあったからかな」


「あっそ。冴木の中学時代なんて私には関係ないし、後悔したからなに?って感じ。でも、今は坂下高校で、今のメンバーで演奏してる。中学生の時の気持ちなんて引きずらないでほしいわ」


 ドン、そんな表現が似合うようなパンチを腹にくらう。


「まぁ、私も中学時代を引きずってるところがあるから、人の事を言えないけどね。2週間後、テスト一週間前になって部活が休みになるじゃない?その最初の一日の時間を私にくれない?先輩の墓参りに行くから付き合ってほしいの。それと……」


 柿原が珍しく口ごもる。


「私ってキツイ性格でしょ。自覚はあるの、でも直せなくて。それで先輩がいつも心配してくれてたの、私の交友関係。だからね、先輩に友達ができましたよって報告したいの。私と冴木は」


 顔を赤らめ目を伏せる柿原。


「友達、よね?」


 上目使いで見上げてくる柿原。


 不器用なところが逆にずるいよな。なにがずるいって?なんでずるいかは、俺もよくわからん。多分、わかってしまったらメンドクサイことが待っているんだろうな、とは思う。


「いいよ。どうせ勉強なんてしないしな」


「ありがとう……」


 なぜかふくれっ面でお礼を言う柿原に笑みがこぼれた。


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