合奏とはなんぞや
基礎合奏が終わり、曲に移り、いろんなパートが抜けたり、迷子になったりしながらもなんとか「春の猟犬」を通しで吹き終わる。
抜けるとは文字通り、音が抜けるのだ。抜ける理由としては今は難しくて吹けないなどがある。迷子とはどこを吹いているかわからなくなることだ。
どちらも、初合奏ではよくあることなのだ。
「みなさん、退場です」
「「「……」」」
まさかの全員退場命令に思考停止する。ただただ全員が先生を見つめる。
「それは、下手過ぎたということですか……?」
田中先輩が勇気を振り絞り質問する。
「いいえ、みなさんの意志がビジョンが伝わってこないからです。本当に全国行きたいんですかねぇ?この曲をどうふきたいのか、どうしたいのかが全く伝わりませんよ。いや、みんなというのは間違いですね。そこの田中君はよく伝わってきます。飛び跳ねる子犬のようなイメージが。柿原さんもよーくわかりました。合奏というのは個々のそういうイメージをみんなで感じ取り、吹き方を合わせる場所です。まずそれがないというのは合奏の意味がありません。みなさんが、どうしたいかという意志を持てばもっとよくなるでしょうにね……」
式台を降り、何事もなかったかのように部室を出ていった。その姿が無性に胸を痛くした。
こうして、先生の初合奏は突然終わりを迎えたのだった。




