大編成に打ち勝つために
初合奏の日。
「では先生、よろしくお願いします」
柿原軍隊長の鬼のチューニングを終え、尾崎先生の合奏へ移る。
「こんにちは。1年生のみなさん、音楽の先生をしておりますのでご存じの方もいらっしゃるでしょうが、お初にお目にかかります。顧問の尾崎正敏です」
なんか、色気?艶がある雰囲気だなー、相変わらず……
「さて、曲に……の前に基礎合奏をしましょうかね」
基礎合奏とは、音階やタンギング、ハーモニーといった文字通り、技術の基礎をみんなで合奏するものだ。
「私の初めての合奏ということで、まず初心の初心、ブレスについてやりましょうか。ブレスつまり、呼吸ですがこれはどの楽器にも共通するものでございまして、違いなどございません。違いがないということは合わせなくてはいけませんね。ブレスを合わせるとどんないいことがあるのか……はい、前の方にいる松尾君、どうぞ」
吹部あるある、男子がよく当てられる。
「……出だしがそろう」
「そうです。ですが、それ以外もあります。わかりますか?」
「…………」
「はい、時間切れー。では、お隣行って、柳井さん。どうですかね?」
「音程が合いやすくなる」
「それもあります。まだあります。じゃあ、次のお隣さんどうぞ」
こうして次々と当てられていくが答えられないままトロンボーンまで回ってくる。
だんだん重々しくなる空気。
「じゃあ、一つ飛ばして冴木君、どうぞ」
俺!?柿原には言わせないつもりか……ブレスがあったときのことを思い出せ、俺。
「はい、時「一体感ですっ!」
ひらめいたとばかり、大きな声を出してしまう俺。
「そうです、一体感です。ブレスが合うそして、それがわかるとき、大きな一体感が生まれます。今年はA編成に出ます。そこではほとんどの学校が上限一杯の人数で挑んできます。それに対抗するには他の学校を上回る一体感が必要ですね。その基本がブレス。最初に合わせるべきは、曲、ド頭のブレス。最初の一音が合わなければあとは合いませんからね?そして曲中は誰とブレスを合わせるべきかそれをしっかり考えてください。動きの違う楽器と合わせたってしょうがないんですからね。そこは高校生です、スコアなり合奏中に自力で見つけてくださいよ」
やっと笑顔を見せる先生。
「それと、合奏中の返事は時間の無駄なのでしなくていいですし、わからないのに返事をされてもムカつくのでね」
一瞬どす黒いオーラが流れる。
「いいですか、合奏できる時間は限られています。しっかり集中して全員に気を配ってください。この人はどういうブレスをするんだろう?演奏中の動きは?そして、先輩は上級生として手本になるよう努めてください。音階練習します」




