準備
部活前ミーティングの時間を使って部室をお別れ演奏会仕様にする。
普段は部室全体を使って合奏体型にイスを並べるが、全体を左端に寄せ、右に3年の先輩たちが座るイスを並べる。こうすることで先輩たちは部員全員の顔を見ることができる。
俺たちはイスに座り音出しを始め先輩たちを待つ。するとゾロゾロと3年たちがやってくる。
カツンカツン
指揮棒で式台を叩く音が響く。
「演奏前にチューニングをしたいと思います。それから、前回は申し訳ありませんでした。ずさんな合奏、あんなことはもうありません。この演奏に、私の気持ちを全力でぶつけます。だから、みなさんもこの部に対しての想い、3年生への想い、私への反論などがあればこの演奏でぶつけてください。3年の先輩方は耳をかっぽじって聴いていてください。私たちの気持ち」
微笑む柿原。指揮者モードになっている。
パチッ
柿原と目が合う。
よかった。調子が戻っている。
パーーーーーーーーーーーーーーーーーー……
柿原が基音を鳴らし、チューバが最初に入る。次々と重なる音は様々な感情をともなって複雑だけれど、前回のようにバラバラな感じではなかった。