バスパートの1コマ
「やっとバスパートかって時間もうないなーーーーーー」
バスパートとはチューバとユーフォがいるパートを指す。コントラバスがいれば、コンバスもバスパートに入る。まぁ、分かれてるとこもあるけど人数が少ないし、この3つは一緒に練習するといいからな。
今日はもう諦めようぜ的なオーラを出す俺。なぜなら……
「なぜ、バスパートの音だけ聞こえてこないのかしら」
柿原、無の境地に至る……
これって絶対メンドイ事起こるよなーーーーーー。バスよ、サボったわけじゃないことを期待する。
「まだ帰りミーティングまであと10分もあるじゃない。楽器の音じゃなく話し声が聞こえる理由を教えてもらわないと」
バスの教室に断りなしに入る柿原。当然、話し声は止む。
しばらく無言タイムに入る。
バスパートはユーフォ3年、二宮依子。2年、神楽理絵の計2人。チューバは3年、羽田薫子。1年、真野梨々香。同じく1年、山崎かれんの計3人。合計5人だ。
1年は気まずそうなんだけど……神楽先輩の堂々とした態度はどうなんだ?
「明日から部活来なくても結構です」
火口を切ったのは柿原だった。
「何言ってんの?来るわよ。ずっと思ってたけど何様なの、貴女」
「吹奏楽部員トロンボーン1年学指揮、柿原莉子ですよ」
「私は認めない。貴女を同じ吹部の仲間だと認めない。今日はたまたま気分がノらなかったから話してただけ。それを誰も何も言わないなんとなくの部活だったのに……私は別に楽器が嫌いなわけじゃないでも、コンクールなんて出なくてもいいし、楽しく吹ければよかった。なのに……貴女が全国目指すなんて言ってから少しづつ変わっていった。返してっ!この異教徒!」
静かに教室を出ていく先輩。それに続いて急いでついていくその他。
「多少なりは温度差はあるよな……今回は大きいけど」
「異教徒……ね」
立ち尽くす柿原。
「とりあえず、ミーティング始まるから行こうぜ」
歩き出すが、柿原が付いてくる気配はない。
「柿原っ!!しっかりしろよ。こんな事言われただけでグラつく想いなら全国は諦めたほうがいい。行くぞ」
柿原の腕をつかみ、無理やり引っ張る。
なにに、こんなにショックを受けているんだ……早くいつもの調子に戻ってくれ。
心の中で祈った。