彼らは少し癖が強い
まだ世界に魔物がはびこり、人々は争いあっていたころの物語。
大陸のほとんどを支配し、その圧政により民を苦しめ続ける王により統治された王国『ローランド』。
それに反旗を翻した者が同志を集うことで結成された集団が、ローランド領を征服していくにつれ一つの国となった『ヴァルハラ』。
両国の戦火は次第に大きくなっていき、やがて大陸全土を巻き込むほどの戦いとなっていった。
争いが大きくなっていく中民たちは求めた、この争いを終わらせてくれる救世主を。
平穏に暮らせる世の中を。
その願いが届いたのか、
ある出来事を境に争いは鎮静化していく、それは両国の王の殺害である。
ローランド、ヴァルハラ。両国の王が何者かにより殺害されたのだ。
殺害後こそ戦場は混乱しさらに劣悪な殺し合いが広がると思われたが、殺害の後戦場に現れた1匹の強大な力の魔物の前に両国の大軍が手も足も出ず、撤退をせざるを得なくなる。
両国王の殺害、戦場に現れた魔物により戦争の終焉
民からしたら奇跡とも言える出来事だ。
その後両国により王殺害の犯人探しが始まる。
すぐに犯人は判明した。
判明と言っても本人達自ら名乗り出たのだ。
主犯は4人、
一人は少し長めの黒髪、優しそうに微笑む姿と真紅の目が印象的な爽やかな青年
一人は銀髪を風になびかせ可憐にたたずむ
碧眼で細身の少女
一人は金色の髪色をもち、何も興味なさそうに目をつむっている少年。
一人はフード付きのローブに身を包む背の高い少女
全員まだ若く、誰しもが子供達がうそぶいているのだろうと内心笑っていながら、おもしろ半分で耳を傾けた。
リーダー格の少年はそんな聴衆たちに向かって大声で叫ぶ。
「この大陸を腐らせていた王は俺たちが殺した!この大陸は新しく生まれ変わる!
反論のあるものはいつでもこい!全員皆殺しだ!」
聴衆は全員苦笑していた。
いきなり何言ってんの。ガキが滅多なこというなよ!
あいつら絶対捕まるだろうな……。
様々な声があがり誰も彼の言うことをまともに聞こうとしない、
だが、一瞬でざわつきは静まる。
少年が聴衆達の前にあるものを投げ捨てた。
それは両国王のものと思われる首であった、
その場の誰もが目を疑っていた。
そして聴衆が再び4人に目線をむける。
彼は続けた
「だれかわかるか?こいつらはクズだ。
いらないゴミ以下の存在。だから殺したよ。」
少年の先ほどまでの優しいイメージとは違う、冷徹で残酷なイメージの笑顔。
その場の空気が一瞬にして凍るのを感じられる。
聴衆たちは固唾を飲み彼の顔を見つめこれから彼から発せられる言葉を待った。
だが、
「レオン!また悪いクセがでてるから!
言葉に気をつけてよね!みんな引いてるし。」
そうリーダー格の少年を諌めたのは銀髪の少女。
「うるさいんだけどターニャ、私とてつもなく頭悪いし、顔も悪いから人前で演説なんてできなーい。て言うから代わりに話してるんだからちょっと黙れよ。」
「そこまで卑屈に言ってなくない!?いっつもレオンはそうやって私をいじめて……。」
「え、泣くの?こんな大勢の前で?国王殺した奴の1人が?」
「なっ泣かないし!いつもいつもレオンの思った通りになるわけじゃないんだから!」
なんとも子供じみた言い合いが続く中、
それを聴く人々は思った。はやく話し続けてくれないかな、
ついさっきのシリアスムードを継続させて欲しかった と。
ここで次に口を開いたのはローブを着た少女。
「早く続けて。そういう痴話喧嘩は話しが終わった後部屋でゆっくりやってきて。」
普通に戒めた少女に聴衆は安堵し、やっと話しが進むと思ったのだが、
「なに?シオン僕に命令するの?もう好物のマカロン作ってあげないけどいい?」
「鬼神のごとくターニャをいじめていい。」
「え、待ってシオン。私を売る必要はなかったよね!?」
ターニャは今にも泣き出しそうな顔でシオンに苦悶の表情を向けた。
シオンは目をそらし唇を噛み締め悔しそうに言った。
「ターニャでもマカロンには勝てなかった……。」
「私の優先順位って何なのさ!」
もうすでに半泣きで彼女はシオンにむかって悲痛の声をあげた。
ここでまたレオンが嬉々として口を開く。
「僕からしたらターニャは1番優先順位高いかもしれないなー。だってこんなにもいじってもさ、僕のそばにいつまでもいてくれるし。退屈しないんだよね。」
あー、アメとムチってこういうことなんだろうな。
露骨なアメに聴衆は、こんな事今更言っても機嫌は取れないだろうと思っていたが、
「え、えっと…。なんかね、レオンは口が悪いっていうの知ってるし!私はそういうのも含めてレオンだと思ってるから……て感じ…えへへ。」
ターニャはちょろい人種だったみたいだ。
「ありがとうターニャ。僕のそばにいて(いつもいつも罵倒され続けて)くれて。」
たぶんターニャ以外にはレオンのドス黒い心の声が聞こえている。
ターニャだけはこれまでの泣き顔が嘘のように満面の笑みをレオンに向けている。
こいつほんとにちょろいな。
「おい、いい加減にしろ。」
ここで最後の1人の男が口を開く。
彼は3人に目を合わせるでもなく、まだ目をつむって早く終わらせてくれと言わん雰囲気だ。
まあ、けどこれで茶番がおわって話しがやっと進むとみんな今度こそ安堵したが。
「何でご飯の時にまで床を舐めまわし……zzzz」
いや、寝言かよ!
この状況でよく寝れたな!てか、登場してからずっと寝てたんじゃないか。しかも立ったまま。
あと何の夢見てるんだ。
「ちょっとシュウ!一昨日からずっと寝たままじゃないこんな時くらい起きてよ!」
ん?いま一昨日って言った?聞き間違いじゃないよ
ね?