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運命的な出会い

 最悪な出会いを果たした俺達はちょっとした満腹感に満足しながら、公園のベンチに並んで腰を落とした。

 夕焼けに染まった街並からは美味しそうな食事の香りが流れて来るが、今の俺達には効かない。いつもなら部屋を一軒一軒爆破したくなるほど羨ましいけど、今日はちゃんと食べた。


「この匂いをかぐと、何で自分はこんな目に遭っているのかって悲しくなるわよね」

「だなぁ……。人間お腹を減らすと、あんな酷いことも出来るもんなぁ……」


「私達、間違い無く屑だったわね」

「あぁ、俺達完全に屑だったな」


 はぁーと二人揃ってため息をつく。

 お腹が膨れた後に酷いことをした自覚が遅れてやってきた。

 何でこんなことになっているんだろうと思ったのも、きっとそのせいだ。

 俺は異世界転生して、ハッピーエンドにいたるまでのフラグを立て終わったと思ったのに、強くなりすぎてフラグが折れるなんて想定してなかったぜ。


「信じてないかも知れないから言うけど、私本当に伝説の鍛冶士の孫娘なんだよ?」

「あぁ、さっき言ってたやつ? 確かそのせいで借金抱えたとか」


「そうなの……。お爺様を超える剣を作ったのに、要求魔力が高すぎて、誰も振れない剣を作っちゃった」


 シャリーはそう言って長いため息をついた。

 あほなヤツだと思ったけど、本当に苦労してるみたいだな。やっぱり親近感わくかも。


「なら、俺も言うけどさ。俺も本当に魔法使いなんだぜ。ほら、資格証もあるし」

「あ、ホントだ? でも、魔法使いって、ギルドにも軍隊にも引っ張りだこで、仕事とお金に困ることなんかないと思ったんだけど、ってしかも王立アランドール学院!? なんでこんなとこまで行ってお金無いの!?」


「だから言っただろ? 杖が俺の魔力に耐えられなくて、魔法を使う度に破裂して、魔法にならないんだよ」


 そのせいで、俺は魔法の実技試験で赤点どころか点数を得られず、落第しかけているのだから。

 初対面の子にこんなことを言うまで落ち込んでいるなんてな。と思いながら、シャリーに合わせてため息をつくと、ふと頭の中で何かが繋がったような気がした。


「え? シャリー、お前、さっきなんて言った?」

「あれ? エスト、あなた、さっきの話は本当なら?」


 どうやら今度こそ考えていることは同じらしい。

 俺達は互いに顔を見合わせて、丸い目で見つめ合っていたら、自然と頬が緩んで笑顔になっていたのだから。


「俺がその剣を使えば!」

「エストがその剣を使えれば!」


「俺は魔法を使えて!」

「私は剣の力を証明出来る!」


 気付いたら互いの両手をつかみ合って、俺達は飛び跳ねた。


 ここから全ては始まった。

 努力しすぎて全部無駄になった俺と、努力の方向音痴で全てをムダにしたシャリーが出会い、世界を驚かせる物語が。

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