表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

ハイドランジア。花言葉:浮気

 私が恋をしたのは、絶対に叶わない恋でした。

そうと知っていながらお互いに別の人を愛することで、それという感情を友情というものに変換したのです。



 梅雨の時期に片想いの人から告白された。

それはロマンチックで、幻想的なデートスポットで、私は舞いあ がって幸せな時計は針を回しだし、まるで止まることを知らないようだった。

 彼女にもまた、2週間ほど前に彼氏が出来た。

お互いにバイト先の人で、私の方が歳上の彼氏だったが、随分と奥手で、心のうちで何故か比べてしまい悲しくなることもしばしば。


 あぁ、なんて素敵な人なのか。

古文書を捲る繊細な指も、キラキラとした研究への熱意も、奥手なのにいたずらっぽいその目も全てが理想で、私なんかには勿体無い。大人の余裕で遊ばれているようなその感覚でさえ愛しく思えるのだから、恋は盲目であるとかは良く言ったものだ。

 あぁ、なんて素敵な人なのか。

私が悲観的に彼の人を語るときも、自らに言い聞かせるように慰める姿も、私達の予定をなんとか会わしてくれようとする姿勢も、かと思えば素っ気ない反応も、雑な扱いですら親しみを感じる辺り、恋は一種の麻薬なのだろう。


 私には彼女との話題の為に彼との時間を求めているという事実がとても愛しく感じてしまっていて、歪んだ愛情の末を見つけたように思う。

 太宰は言った。

人を愛することは、大罪である。

まさにそうだった。私は彼を通して彼女を感じる。

ハイドランジアに思いを馳せるのは彼ではなく彼女なのだ。

その光にも、雨の露にも、葉脈の一筋さえが私の罪悪を育て、彼女への純粋かつ汚れた好意を募らせ、彼を汚し続ける。


 いっそハムレットのように気でも狂った演技さえ出来れば、道芸師としてでも上手く生きれたのに…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ