臆病な男の道
初めましての方ははじめまして。実は僕を知っているという方はお久しぶりです。放浪です。
注意!これは東方の二次創作です!さらに僕はほとんど展開を考えていません。文章もおかしな点が多いです。
それでも見てやるぜ!と言う心の広い方はどうか読んでみてください。
足元の植物を踏まないように、なおかつ約束の時間に遅れないように、ゆっくりと足早に伊野和博は向日葵畑の中を歩いていた。この向日葵畑は遠目で見ている分には色鮮やかに向日葵が咲き乱れる美しい場所ではあるが、いざその中身に足を踏み入れると美しさ云々より恐怖感の方が遥かに勝る。伊野はかれこれ何十回とこの場所を通り抜けてはいるのだが、いまだ慣れず、心臓は飛び出さんばかりにどくどくと脈動していた。
その理由としては、いつ妖怪が襲ってくるのかが解らないからである。
立ち止まり前後を見れば、伊野が歩いてきた道と、さらにその先に続く道。それ以外は伊野の背丈を余裕で超える向日葵ばかりで見通しが悪い。もし横から妖怪が飛び出して来ようものなら、伊野は意表を突かれて満足に逃げることも出来ず襲われてしまうだろう。安全な人里で暮す伊野にとってはこれほど恐ろしい道は存在しないのだ。
「大丈夫だよな? 妖怪……居ないよな?」
伊野は自分自身を励ますように呟いた。自身に掛けた言葉が少しだけ、落ち着きのない心臓を静かにさせた。あたりを見回し、息を吐いて安堵する。何も居ない。向日葵が風になびかれ微かに動いているだけで、伊野以外の生物の気配は感じられなかった。
「本当にこれのおかげか?」
そう呟いて伊野は、訝しむように右手にあるモノを見つめた。
――傘である。汚れ一つない、純白と言ってもいいほどに美しい傘。淵にはひらひらとしたフリルが付き、およそ男が持つの物とは思えない傘。しかし、その美しい見た目と裏腹に、醸し出される雰囲気には禍々しいとさえ言える強烈な威圧感のある傘だった。
しばし沈黙し、伊野は空を見た。太陽は真上近くまできており、昼まで三十分ほどしかないのが分かった。約束の時間は正午。禍々しい雰囲気を発する傘から目を離し、先を急ぐことにした。
――
向日葵に囲まれた道を真っ直ぐに歩き続けていると、こぢんまりとしていてそれでいてどこかお洒落な家に伊野は着いた。周りには小さめの花壇がいくつもあり、この家の主人がいかに花好きかよく分る。ドアにかけられたいる木で出来た長方形のプレートには、色がふんだんに使われたカラフルな字で風見幽香と書かれていた。
風見幽香と言えば、この幻想郷に住む者ならばすぐに見当がつくだろう。
そう。伊野は、向日葵畑の主であり、フラワーマスターと呼ばれる妖怪。風見幽香に会いに来たのだ。とはいえ、元々は伊野と幽香にはそこまで深いつながりはなかった。花屋を営んでいる彼の店によく来ては様々な花を買って帰る幽香に、気まぐれでおすすめの花を教えて少しばかりの言葉を交わすうちに、気づけばよく家に遊びに行くような関係になっていた。そして怖いながらも、彼女に会うのが楽しくなっており、今では恐怖を押し殺しながら向日葵畑を超えて毎日のように遊びに来ていた。
「でも、やばいよなぁ。妖怪の家に遊びに来てるなんて……」
ドアにノックしようとしていた手を止め、少しだけ眉を下げて伊野は考えた。
相手は妖怪なのだ。里の人間がこれを知ったら、きっと――。
「――……」
伊野は黙って首を横に振った。
考えを振り切り空中で止まったままの手でドアをノックした。
少し待つと、ドアの向こう側で鍵の外れたような物音がした。
思わず伊野の顔に苦笑が浮かぶ。
いつも彼女はこうなのだ。ドアをノックすれば鍵を開けてくれるが、絶対に声を掛けてこない。彼女が話しかけてくれるのは、伊野が家に入り込んでお互いにテーブルを挟んで座って、それで初めて声をかけてくれるのだ。
なんとなく、彼女が妖怪であることを残念に思った自分が馬鹿らしくなった。恥ずかしささえ覚えて、顔に血が上り赤くなるのを感じた。
ドアの向こう側で行われた一連の動作は、おそらく人間と全く同じ動きで行われた筈だ。それだけでなく、いつも伊野が来ると温かい紅茶を注いでくれる彼女には人間と同じような気遣いがある筈だ。考えてみればおかしな話である。ここまで人間と同じ彼女を怖がる必要は伊野には全くなかった。
「おじゃまします」
勢いよく、伊野はドアを開けた。
久々に書いたので違和感バリバリでスイマセン。
まえがきでも書いたとおり展開は考えてないのでグダグダになる可能性があり、さらに投稿は遅れると思います。申し訳ありません