二周年記念・第二部 ツバサチャレンジ7
みなさん、こんにちは。ツバサです。さて、二周年記念第二部の今回の企画は……『MIX WORLD〜クリスマスプレゼント〜』です。詳しく説明いたしますと今回はドリキャチ、クリアライフ、ちゅうなんのキャラクター達をごちゃ混ぜにして一つの小説を作ろうというものです。といっても、かなり、短いものになりますが。
さて、その主人公となるキャラクターですが、それは愛奈、月、レオン、秀一、夜美、ミント、アキ、ナナの内一名を完全ランダムで選びました。また、主人公×誰かという形をとるのでもう一人、その誰かとなるキャラクターもランダムで選びました。その結果は……是非、ご自分の目でお確かめ下さい。そして、もうひとつ、世界観もこのドリキャチ、クリアライフ、ちゅうなんから一つランダムで選んだ結果、クリアライフが選ばれました。そこで、このクリアライフの世界観を今回様に少し改編してみましたので本家とはちょっと変わったテイストになりますがご了承下さい。その大まかな世界観と改編内容は次のようになっています。
世界観
魔法という概念が存在する。文明は現代と同じくらい発展しているため、魔法無しでも生活可能。
魔法には魔力が必要で使いすぎると意識を失う事もある。
魔法の使用には呪文を唱えた後魔法名を言う必要がありその一連の動作を魔法定義と呼ぶ。
魔法定義の内呪文を省略する事のできる高速詠唱と称されるものがある。ただし、デメリットとして通常消費する魔力より1.5倍多く消費する。
魔法にはランク分けがあり低い順にC,B,Aである。当然ランクの低い魔法ほど消費魔力も少なくすむ。
魔法には二つありそれは無形魔法と実在魔法である。
無形魔法は熱や光、風といったエネルギー体であることが多く実際に触れることはできない。対して実在魔法は物質として存在し自立し思考する魔法もある。
無形魔法と実在魔法はそれぞれ同時に一つづつしか出す事ができない。
魔法は通常魔法と性質魔法と呼ばれるものがあり性質魔法は先天的に風、闇、草の三つの内一つのみ扱える。通常魔法は使おうとすれば誰もが扱える。
性質魔法には相性があり風>闇、闇>草、草>風である。
原作、クリアライフとの相違点
一部の人間のみ魔法が扱える→誰もが扱える
敵にあたる組織がある→犯罪等はあるが強大な組織はない。したがって特殊な能力もない。
原作にて登場する学校はクリアライフメンバーのみ登場する。→クリアライフ以外のキャラも在籍、関わっている事がある。また、中高大付属で、中高は同じ敷地に大学キャンパスは五分ほど歩いた場所に存在している。
以上の事をご了承下さい。また、それゆえにキャラクターの設定が少し変わっている事がある事もご了承下さい。
では、ツバサチャレンジ、レディ?ゴー!!
「クション」
「大丈夫か?」
「うん、平気。少し風が冷たかっただけ」
わたし―――星野夜美は隣にいる少年、冨本秀一の心配げな声に笑って答えてみせる。
「なら、いいけどさ……最近風邪流行ってるし気を付けろよ」
「大丈夫、心配しすぎだって」
確かに、わたしたちの通う私立南里大学付属高校では、中高そろって風邪が流行っているらしく、中学のほうでは学級閉鎖のクラスも出たらしい。原因は恐らく、今まで七分袖〜長袖ぐらいのシャツだけでも十分過ごせたのだが十二月に入って一気に気温が下がり最低気温が2〜3°、最高気温も8〜11°となったことにあるだろう。しかし、秀一君は少し心配しすぎな気がして思わず苦笑いをこぼしてしまった。多分、秀一君は同じクラスで留学生(日本語は普通に使え変なイントネーションもなく語彙力もある)としてやって来た女生徒、ミント=クラア=ライトが休んでいる事も気にしての事だろう。そのミントさん、秀一君、そしてわたしでよく休み時間等によく喋っている、いわゆる仲良しグループだ。まあ、秀一君はミントさんの行動に溜め息を出す事が度々ありまるで、兄妹の様に見える事がしばしばあるのだが。そういえば、もう一人の留学生、レオン=ドリム=サイトという少年もお休みらしい。らしい、というのは同じクラスでは無いので休み時間の話のネタとしてしゃべっていたのを聞いただけだからだ。
「にしても……なんでこんなときに、掃除なんか」
「あはは、仕方ないよ。明日で学校おしまいなんだし」
「そうなんだけどさ………うぅ」
秀一君が寒そうに体を震わせ廊下の掃除を再開した。他の生徒も口々に寒いやら面倒やらと言ってるのが聞こえた。
明日、つまり二十四日にこの学校の終業式がある。今はそのための大掃除の最中なのだ。しかし、先程の理由もあり、欠席者も多くいて一人辺りの負担が大きいのも不満の理由の一つだろう。わたしも掃除は好きではないが仕方がないと割りきっている。しかし……今日は早く帰りたい。
「お〜い、冨本、星野。そろそろ、終わりだってさ」
「うん、分かった。ありがと」
わたしは呼びに来てくれた同じクラスの生徒である福田海斗に返した。秀一君はその福田君を少し見て塵取りの中にごみをいれていった。なんだかんだで真面目な秀一君に少し笑いが込み上げそうになる。
「確か、片付け終わったら自由解散だっけ?」
「そうだぜ、さっさと、片付けろよ〜」
そう言ってひらひらと手を降り教室に戻る福田君。
「んじゃ、これ捨ててくるよ」
「うん、あっ、ほうき片付けておくね」
「ありがと」
わたしは秀一君のほうきを受け取り掃除用具いれのに片付けた。そして、わたしは素早く教室に入りバッグを持って教室を出ようとした。
「ん、あれ?星野、もう帰るのか?」
「あ、うん。ちょっと、用事があって」
わたしは曖昧に教室で福田君と喋っていたクラスメイト、石田湊人に返す。
「用事?」
「う、うん、まぁ」
「ん?あぁ、なるほどね……」
「みたいだな」
なおも曖昧な返事を返すと何かを悟ったように笑みを浮かべる二人。なんか、やな予感がする。ここは。
「じ、じゃ、そういうことだからね。また、明日。秀一君にも伝えといてね」
「あっ、逃げた」
石田君の少しからかうような声を耳にしながらわたしは早足で校舎から逃げ出した。そして、そのまま駅側に向かう。わたしは海側にある学校の女子寮に住んでいるのだが駅側にあるお店を利用するために女子寮に住む生徒がたびたび訪れることがあるので女生徒であるわたしが制服姿で駅側に向かって歩くことは珍しいことではない。それに寮に住んでいる生徒は一部であり自宅登校している生徒もいる。待ち合わせしている彼も自宅登校だ。
「――――――っ!!」
彼の事を思い出すとともに石田君のからかいの声がよみがえり顔がほてるのを感じる。それを冷たい風でさましていく。もう数月になるのにまだこの手のからかいには慣れない。
「……ふぅ、落ち着け、わたし」
小さく呟き自分に喝をいれ、目的地であるデパートに向かう。学校を出る前に彼の教室を覗いたのだが既に彼のクラスは終わっていたらしく数人の生徒が喋っていただけでほとんど人がいなかった。
「うぅん、やっぱり、デパート内は暖かいや」
自動ドアをくぐると直ぐに暖房のきいた暖かさが全身の冷たさを癒す。それを受けわたしは手袋を外した。
さて、と……彼は……
キョロキョロと辺りを見渡す。
「あっ……」
すると、直ぐに目的の人物が近場のショップで小物を見ている桜色の髪の少年を発見した。わたしはその少年の名を呼ぶ。
「ア、アキ、おまたせ」
「お、来たか夜美」
彼―――小鳥遊冬前は見ていた小物を棚に直しわたしの元にやって来た。
でも、いつまでたっても彼をアキと呼ぶことが慣れない。元々、小鳥遊君と呼んでいたのを彼のたっての希望ということでわたしは二人きりの時だけ、という条件で彼をアキと呼んでいる。
「じゃ、行くか」
アキはそう言ってなんでもないようにわたしの右手を握り歩き出した。
「う、うん。じゃあ、まずキララちゃんの方からお願い」
「分かった。というか、なんども言ってるが別にいらないんだぞ?気を使う必要性なんてないし」
「うぅん、いいの。というより、わたしのわがままだと思って?それとも、迷惑?」
「あ、いや。そうじゃないが……分かった。ありがとな。んじゃ、三階の雑貨屋にでも行くか」
アキは頭のなかで道順を組み立てるように考えてから近くにあったエスカレーターに乗った。
今日、アキとは彼の妹であるキララちゃんと親戚の子であるミユキちゃんのクリスマスプレゼントを購入すべく待ち合わせをしていた。というのも、明日は放課後わたしとアキ、キララちゃんとミユキちゃん、そして同じ学年でアキの幼馴染みである白由利文月とアキの家で(アキは自宅登校をしている)でクリスマスパーティーをやるからだ。
ナナとはわたしとアキかこの関係になってから少し二人だけになると微妙にざらついた空気になることも多々あったが今では仲のよい友人として付き合っている。恐らく、秀一君の次か、同じくらいには仲がいいだろう。
そんな事を頭の片隅で考えていると三階にある雑貨屋に着いていた。店名は―――。
「収集家の販売店?」
「あぁ、まあ、名前は変だが品揃えはいいんだよ」
アキは苦笑いをしながら言う。確かに、これは苦笑いせざる得ないな……そう思いながらわたし達は店内に入る。
店内はややいりくんだ構造で一度に店内を全て見渡すことは出来ない。その為全てを見ようとすると時間がかかる。多分、お店側もこれが狙いなんだろう。
「ん〜……キララちゃんってどういうのが好きなの?」
わたしは手短にあったハート型のストラップを見ながらたずねる。
「そう、だな……まあ、一つ確実に言えるのはそういうストラップならハートじゃなくて……こっちが好きだろうな」
そう言って差し出したのは悪魔の羽を連想させるストラップだった。見た目やそこに書かれている文字、『Dark Devil』から思わず中二病的な魅力を感じる。
「あはは、確かにそうだね」
わたしはキララちゃんの普段の行動を思い出しながら笑い声をあげた。
「我が妹ながら正直中二病的な部分にはついていけないときがあるよ」
アキはおどけた様に肩をすくめて見せた。その時―――。
「ふ〜ん、小鳥遊君の妹さんはこういうのが好きなんだ」
「「えっ?……あっ」」
わたしたちは同時に振り返り先程の声の主を見て声をあげた。
「ふふっ、驚いたかい?たまたま、君達を見かけてね」
微笑をしながら言う、見た目から好青年という印象をかもちだす彼の名をわたしは言った。
「月先生……いつから、ここに?」
「ついさっきだよ。見知った顔が楽しそうにお喋りしていたからね」
どこか、からかうかのように言うのは天童月。わたしたちの学校の保健室の先生だ。彼の容姿や喋りかけやすい雰囲気から生徒―――特に女子生徒からの人気は高い。
「月先生も雑貨を見に?」
アキはさっきのキーホルダーをもとあった場所にかけ直しながら尋ねたら。
「いや、ボールペンのインクがきれてね。ちょっと、変わったボールペンだからここまで来ないと買えなくてね」
月先生は手に持ったビニール袋をみせる。中には確かにボールペンのインクと思わしきものが二つ入っていた。
「それはそうと……君達はデートかい?」
「なっ……!?」
「あ、あぅ……」
唐突な月先生の言葉にわたしたちは二人そろって赤面してしまう。
「ははっ、青春だね」
更に追い討ちをかけるようにニッコリと意地悪げな笑みを月先生はした。
月先生には頭が上がらない所がある。というのは、実はアキがわたしに告白するさい、アキの背を押したのが月先生なのだ。アキと月先生がどの様に仲良くなったかは知らないがわたしと月先生はその一件以来よく話すようになったのだ。
「うぐぐ、そ、そういう月先生の方こそモテそうなのに彼女を作らないんですか?」
せめてもの仕返しという感じがアキの発した言葉から読み取れた。
「ふふっ、ありがと。でも、僕は残念ながらモテないよ。告白されたことすら無いよ」
「告白されたことすら……ですか」
わたしは呆れと月先生らしさに少し溜め息が出てしまった。
「ん?どうしたんだい?」
「い、いえ。なんでも無いです」
慌てて取り繕う。やはり、無自覚というのは恐ろしい。彼は自分がかなりのフラグクラッシャーであることに気づいてないみたいだ。
アキも苦笑いを浮かべる。恐らく、わたしたちの考えてるのは同じであの先輩についてだろう。
「なら、いいんだけど。じゃあ、僕はそろそろ学校に戻るとするよ。二人とも暗くなる前には帰るようにね?」
「「はい」」
わたしたちは声をハモらせて答え、「じゃあね」という月先生を見送った。
「全く……月先生は相変わらずだな」
「クスッ、確かに」
わたしはアキに同意する。まあ、ああいうひょうひょうとした態度が人気の理由なのかもしれないが。
「さて、と……ん〜、どうしよっかな……」
わたしは先程のキーホルダーのコーナーをざっとみるが心引かれるものは無かった。といっても、可愛いものはあるしキララちゃんに似合いそうなものもある。だが、彼女の中二心をくすぐるものは無さそうなのだ。
「んっと……アキ、別のコーナー見に行こ?もしかしたら、ミユキちゃんにあうのもあるかもしれないし」
「分かった。というか、一通り見てみるか」
アキはぐるっと店内を見渡して言った。
ミユキちゃん―――黒石降白はアキの親戚で現在は小鳥遊家で預かっている女の子だ。この子もやや癖の強い子でアキ以外の人にはどこか高圧的でそれでいて上品な、お姫様タイプのしゃべり方をする子だ。どうやら、この子もアニメに影響されてこうなったらしいが詳しくはわたしは知らない。アキがなんのアニメか言ってたような気もするけど……忘れてしまった。
「あっ、あれなんてどう?」
わたしは小走りにかけよりペンケースをとる。柄は可愛らしく書かれているがドクロや悪魔、その他中二病っぽさを感じるものに英語で『Darkness The World Devil』と書かれている。
「ふ〜ん……いいんじゃないかな?キララも喜ぶよ」
「だよね」
わたしはそのペンケースをかごにいれた。
「うん、キララちゃんにはこれでいいとして、問題はミユキちゃん、だよね」少し考えるように顎に手をあてる。
「そうだな……アイツはどういうのがいいのか……あっ、ああいうのはどうだ?」
「どれ?」
わたしはアキの歩いていく。そこには―――。
「エプロン?」
「そっ。ミユキは料理もするしな。今はアイツを家で預かる事になる前から使ってるらしいエプロンを使ってんだけど結構汚れてんだよ。だから、新しいのあげたら喜ぶだろうよ」
「そういえばそうかな」
わたしもミユキちゃんのエプロン姿は何回か見たことがある。確か可愛らしい花柄だった気がする。
「ん〜……じゃあ、これとかどう?」
わたしは猫の絵と猫の足跡が書かれているエプロンをとり、自分にあてがってみる。
「う、うん。似合うと思うよ……あっ、えっと、もちろんミユキに」
「うん。そうだよね」
どこか焦ったように付け足したアキに違和感を覚えながらも二人のプレゼント選びを終える事が出来た。会計をすまして店を出た。
「ふ〜……なんとか終わったな。どうする?どっかよってくか?」
アキがそう提案する。
「あっ、えっと。ごめん、今日はこのあと用事があって。だから、今日は帰るね」
しかし、わたしはアキの誘いを断った。
「そ、そっか。じゃあ、帰るか」
断られると思っていなかったのか少し拍子抜けしたような声でアキは言った。
「ごめんね」
「いや、いいよ別に。じゃあ、送るよ」
「うん」
そう返事をしてわたしたちはエスカレーターで一階におりて、外に出た。わたしはアキが自転車をとりにいっている間に通行人の邪魔にならない場所に移動をする。少し待っているとアキが自転車に乗ってやってくる。
「おまたせ。のって」
「ありがと」
わたしは少し自転車の荷台部分に腰をかけて少し迷って片手で荷台の部分をつかみ、もう片方でアキの肩に手をかけた。
「じゃ、行くか」
自転車が進み始める。ここはあまり都会ではないので二人乗りを咎める警官は滅多にいない。といっても、教師に見つかれば説教をもらうことにはなりそうだが。
「なぁ?」
「ん?」
「明日だけどさ、夜美はこっち来ていいのか?」
「えっ?どういうこと?」
「ほら、冨本とかいいのかなって」
「あぁ、そういうこと」
意味を理解し頷く。しかし、アキらしいな、と思う。
「大丈夫。秀一君はミントさんたちと遊ぶだろうし。それに」
信号が赤になり自転車がとまる。そのすきにわたしは両手を自由にさせる。
「アキと一緒にいたいし」
「ちょっ、よ、夜美」
軽く後ろからアキに抱きつく。慌てるアキにわたしは少し笑いこぼした。
**********
「ただいま」
わたしは部屋の扉をあける。アキは女子寮近くまで二人乗りで送ってもらった後帰っていった。女子寮が近くなれば教師に咎められる危険もあるしそのまま夕飯の支度があるらしい。アキの家は現在アキにキララちゃん、ミユキちゃんの三人で暮らしている。両親は仕事かなにかでいないらしい。なので料理は基本的にアキとミユキちゃんが作っているらしい。
「あっ、おかえり、ヨミ」
「はい、あっ、大丈夫ですか?」
「うん、なんとか……こほっ」
そういって苦笑いを見せたのは留学生のミントさん。ルームメイトだ。
「熱は……朝よりはさがってるみたいですね。顔色もましになってますし」
額に手をのせそう言った。
「うん、大分まし」
「よかった……あっ、食欲ありますか?」
「うん」
「よかったです。ご飯、作りますね」
「ありがと……こほっ」
わたしは微笑み台所に向かった。
お昼はインスタントのおうどんを食べてもらった。どんぶりは洗わなくてもいいと言っておいたので水につけてあった。とりあえず、わたしはそれを洗ってから一風変わったおかゆ―――エーブルグロッドを作る。
エーブルグロッドとはデンマークの料理でリンゴや砂糖、バニラビーンズ等を使用した料理だ。ちなみに、デンマーク語でエーブルはリンゴ、グロッドはおかゆの意味らしい。これらの知識は帰っている最中にミントさんが風邪で寝込んでいるとアキに言ったらレシピと一緒に教えてくれた。
「うん、美味しい」
わたしは完成したエーブルグロッドを味見して一言つぶやく。
「お待たせしました」
「わぁ、おいしそ!!」
わたしはを盆に載せてミントさんの前に差し出す。そして、一口含む。
「うん、おいしいよ、ヨミ」
「よかったです」
笑顔でミントさんはそういったのを受けわたしはほほえんだ。
「うぅん、でも寂しかったな……今日ヨミ以外誰ともあってないし」
「仕方ないですよ、今日も普通に学校でしたしテストも終わって終業式目前、みんなも遊びたいでしょうし男子禁制の女子寮だから秀一君達もこれないですしね」
「そうだけど……」
「まぁまぁ、秀一君も寂しそうでしたよ。明日には学校に来れるとおもいますし」
わたしは笑ってかえした。ちなみに光の性質の透明なる姿を使えば周りから姿が見えなくなり女子寮に侵入することは可能ではあるのだがもしバレたら数週間の停学、もしくは退学処分を受けることがあるのでそんあ危険な橋を渡るのは危なすぎる。でも……秀一君のことだから、直接あえなくても……
「あっ……きたみたいだね」
「えっ?」
「あれですよ」
わたしは窓の奥を指さす。そこには白いハトが飛んでいた。そして、そのハトは閉まっている窓を通過して室内に入ってくる。
「あっ……もしかして」
ミントさんはそのハト――――――伝言鳩魔法に手を伸ばす。すると、伝言鳩魔法が消えうせる。この魔法は自らの思想を伝達することのできる魔法でいわゆるメールのようなもの。でも、メールと違い言葉にしにくい感情や思想、その時に見たり匂いなどの曖昧なものも伝えることができるのでメールより数倍いいだろう。といっても、やはり魔力消費もあるし魔法禁止区域である銀行や警察署等(安全上の問題らしい)の一部区間では使えないのでメールを使うことも少なくない。
「クスッ、元気そうね」
「そうですよ」
笑顔を浮かべるミントさんにそう返した。やはり、というべきか多分、秀一君がこのハトを飛ばしたんだろう。
―――バサバサ。
小さな羽音をたてながら次はミントさんから秀一君への返事をうけたハトが飛びたす。
「でも……シュウイチ心配しすぎよね〜。ちょっと風邪引いたぐらいで」
「それには同意します」
わたしは苦笑を浮かべながらそういった。
「でも、それが彼なんじゃないんですか?」
「確かに」
「秀一君のためにも明日は学校に来てください―――まあ、終業式だけですけど。その為にも今日は早めに寝てください」
ミントさんの食べ終えたのを確認して盆を下げる。それと同時に用意していた薬と水をさしだす。ミントさんは受け取り錠剤を水で流し込む。
「―――んっ。ふぅ、そうね。じゃあわたし寝るね」
水を飲み干しコップをさしだしたのでそれを受けとる。
「はい、お休みなさい」
「おやすみ」
ミントさんは布団を自分でかけ直して目を閉じた。それを確認してまずエーブルグロッドの入っていた鉢とコップを洗いに向かう。
わたしの夕食は、一人だとわざわざ料理を作るのも面倒なので帰り際にファーストフードを買っていた。食べすぎは体に悪いがたまにだし大丈夫だろう。それに、やりたい事があった。
袋からハンバーガーとポテトを取り出しインスタントのアイスコーヒーを作りテーブルに置く。そして、机の引き出しからそれを取り出してから戻ってきて座る。
わたしの手元にはアキにプレゼントするつもりの編みかけの手袋。今日一日で間に合うかどうか……微妙なライン。実は数日前に一度手袋は完成した。しかし、色の配色が気に入らなかったこと、やや小さめに作ってしまったこと、そして……指の四つしか作っていなかったこと……これら、というか特に最後のミスが致命的だったのでまた一から作り直したのだ。
「……しかた、ないよね」
ハンバーガーをかじりながら自分に言い訳をし、願いをこめた呪文を小声で紡いでいき、トリガーである魔法名を言う。
「星の召喚、星座・双子座」
すると光を発し現れたのはわたしの分身。
「もぅ、あたしは便利屋じゃないんだよ」
出てきてそうそう文句を言う双子座。彼女は魔法を発動した人とそっくりの形をして現れる存在。ゆえに元の体というものは無いのだが魂、とでもいうのだろうか、双子座としての人格はある。
「わかってるけど、お願い」
わたしは両手を合わせる。
「もう、仕方ないな……わかったよ」
双子座は諦めたような声で言ってくれた。
「ありがと!!じゃあ、これ、お願いできる?」
わたしは編みかけの方の手袋を渡した。彼女はそれをうけとり編んでいく。わたしはさっさとハンバーガーを胃に片付けてゴミをすて一から手袋を編んでいく。
「ぅん……んんぅー」
ミントさんは唸りながら寝返りをうった。いつの間にかミントさんは眠っていたらしい。寝付きもいいしうなされてるわけでもないので本当に明日には復帰できそうだ。
そんなことを頭の片隅で考えながら黙々と編み物に集中することにした。―――カチ、カチ……と時計の音がなる。手袋編みに以外と時間がかかる。双子座は編み物開始から二時間後の夜10時に手袋を完成させ、わたしは礼をいって双子座を虚空に返した。正直、魔力消費を最小におさえていたとはいえ彼女を維持するためにかなりの魔力を持っていかれたため疲れが現れる。しかし、あともう少し、と自分を励ましす。
そして、さらに二時間後、その間にシャワーを浴びて気分直しをし、ついに―――。
「できた!!」
わたしは小さく歓喜の声をあげた。
彼、アキの瞳と同じ朱色の手袋。
わたしはその手袋をテーブルに丁寧におきそのまま体をたおす。魔力の消費からかひどくまぶたが重くなっていた。
「ヨミ、ヨミ!!」
―――ユサユサ。
「ヨミ、起きて。ヨミってば!!」
―――ユサユサ。
肩を揺らされたことによりまぶたをあける。そこでいつのまにか眠っていた事に気がついた。
「み、ミントさん」
わたしは体を起こしミントさんと、その奥にある時計をみた。時間は朝7時12分。
「やっと起きた。朝、目が覚めたらテーブルにもたれかかって寝てたからビックリしたよ」
ミントさんは笑いながら言った。先ほどからの様子からみると、もう体調は万全らしい。
「朝御飯、パンでいいよね?ミントが作っとくから着替えたら?」
「はい、ありがとうございます」
わたしは寝起きの為かひどくダルい体を起こしてノロノロと洗面所に向かった。
冷たい水を顔につける。眠気はとれたが体のダルさは残っていた。
**********
「―――で、あるからして長期の休みとはいえ―――」
長々とした校長の言葉。普段、こう言う風に校長が話す機会がないからかここぞとばかりに終業式を行っている今、長々と言葉を紡ぐ。唯一の救いは一部の役員生徒をのぞく全員は座らせてもらっていることだ。だからか、ちらほらと校長の話を無視し、顔を伏せ眠る生徒もみかける。かくいうわたしも熱心に聞いているわけではなくただ時間が過ぎるのを待っていた。
―――それにしても、熱すぎない?
心中で呟く。私立故か体育館にも数台、エアコンがあり暖房がきかされていた。体が火照っているのを感じるほどに……
しかし、周りを確認してもこんなに体を火照らしている人物はいない。
「では、また皆さん、元気に登校してきてください」校長が満足そうにそう言う。生徒役員が礼、と告げた。これで終業式は終了である。
「では、一同起立」
役員の声に立ち上がる生徒たち。わたしも立ち上がろうとした。しかしー――
「あっ……」
体がふらつく。
「これで終業式を閉会します。礼」
役員の声に従い礼をするなか、わたしは体が支えきれなくなった。
「お、おい、星野。大丈夫か?」
トスッ、という軽い衝撃の後に声が聞こえた。声の主が出席番号順に座っていたたため、わたしよりひとつ出席番号が若い、福田君という事を遅れて理解した。
なんとか、お礼を言おうと声を出そうとするが口から漏れるのは熱っぽい息だけだった。
「風邪か……?とにかく、保健室まで送る。おら、つかまれ」
「あり……がと」
わたしは声を絞り出しながら肩に掴み、福田君が「星野が具合悪そうなので保健室に連れてきます」と、先生に断りをいれたのを耳にし歩き出した。
幸いな事に保健室と終業式の行われていた体育館は近くわたしの、ゆっくりとした歩みでもすぐにたどり着いた。
「失礼します」
福田君が一声かけ扉を開ける。
「ん?どうしたんだい?」
「あっ、月先生に……加藤先輩」
「こんにちは。久しぶりね」
部屋を開けるといたのは月先生とわたしたちの先輩で現在ここの学校の系列の大学の医学部に通っている加藤先輩だった。加藤先輩は時折、『医学の勉強』と称してこの高校の保険医である月先生のもとに来ている……まぁ、実際はそれ以外に下心があるのはみえみえなのだが、本人である月先生は全く気づいていないようだが。
「星野なんですけど……調子が悪そうで」
福田君がわたしの様子を伝える。
「わかった。とりあえずそこの椅子に座って。座るのも辛いならベッドに横に」
「いえ……大丈夫です……けほっ」
咳き込みながら借りている肩から腕を外し椅子に座る。加藤先輩はそれをみてから引き出しをあさり出した。月先生はわたしに向き直り問診を開始する。
「体は?ダルい?」
「はい、少し……」
「顔色も悪そうだね……熱は―――」
「夜美ちゃん、これ脇に挟んで」
「あっ、はい」
わたしは加藤先輩から体温計を受けとる。
「ありがとう、愛奈さん。さて、と……さっきから咳き込んでるみたいだし……はい、口あけて」
「あー」
口を開けると手早く喉をみはじめる。
「少し喉が腫れてるね」
―――ピピピッ。
体温計がはかり終えた事を示す音を鳴らす。
体温計を外し月先生に渡す。
「37.8℃……平熱はわかる?」
「6.4℃ぐらいです」
「微熱……というか普通に熱だね。うん、咳もでてるみたいだし風邪かな」
「風邪……」
ミントさんのうつったかな……あっ。違う。絶対毛布もなにも被らずにテーブルの上で寝たのせいだ。しかも、考えたらお風呂を入ったあとよく頭ふかなかったな……原因はこれだよね、絶対。
「もう、今日は通知表貰って帰るだけだからしばらくの間ここで休んでから帰りなさい。いいですね?」
「はい」
先生らしい口調でそう月先生がしめくくるとふんわりと笑って「じゃあ、そこのベッドで横になって」といった。わたしはフラフラとベッドにむかい横になり布団を被る。
「あっ、じゃあ、俺これで」
それまで黙ってた福田君がわたしが横になったのを確認していった。
「ありがとね、福田君」
慌てて礼を言う。
「いいって。んじゃ、お大事にな」
最後に軽く笑って福田君は保健室を去っていった。
「じゃあ、僕はここで書類の整理でもしてるから、なんかあったら呼んでね」
「はい」
「愛奈さんも……今日は」
「わかってます。夜美ちゃん、お大事にね」
加藤先輩は小さく笑みを残して去っていった。
わたしはそれだけ確認すると布団を大きくかぶり瞳を閉じて眠りにへと落ちていった。
**********
―――キンコンカンコーン。
チャイムの音が耳に届く。それにあわせて意識が戻ってくる。チャイムがなり終わると同時に完全に目を覚まし、時間を確認する。
―――一時間ぐらいか。
心中で呟く。月先生は……ん?
枕元に紙が落ちてありそれを拾う。そこには丁寧な字で『僕は少し用事で席をはずすけどもし具合がよくなっているのであれば友達に魔法で送ってもらってください。体調が悪く、僕になにかを知らせたいなら伝言鳩魔法を飛ばしてください』と書かれていた。
体調は……悪くない。熱も多分、下がっている。これなら大丈夫そうだ。秀一君かミントさんに頼んで、風の性質である魔法、人体転移魔法、もしくは強制転移魔法で送ってもらおう。因みにアキとナナ、石田君は草の性質、わたしと福田君は闇である。月先生と加藤先輩も……たしか風だった気がする。
―――ガラッ。
「ヨミ、大丈夫!?」
「お、おい、ミント……あっ、夜美起こしちまったか?」
「うぅん。さっき目覚ましたところ」
保健室の扉を乱暴に開いたのはミントさん。それを咎めるように口を開きかけたのは秀一君だった。
「そっか。あっ、これ」
「ありがと」
わたしは秀一君から鞄を受け取る。
そうだ、ちょうどいいな。送ってもらおっかな……
「ヨミ……もしかして、ミントの風邪うつしちゃった?」
「えっと……たぶん違うと思います。ほら、わたしあそこで寝てたじゃないですか?それのせいだと」
「えっ?あっ!!そういえば!!でもなんでそんなとこで寝てたの?」
ミントさんは不思議そうに首をかしげる。そこに、秀一君が声をあげる。
「そんなところって、どこで寝てたんだ?」
「えっと……テーブルの上で」
少し歯切れ悪くわたしは答える。すると、秀一君は呆れたような笑いを浮かべる。
「なんでまたそんなところに……あっ。もしかして、アキに?」
「うん……なんとか、できたんだけど。その代償がこれ見たい」
わたしは苦笑いを浮かべる。すると、こんどはミントさんが首をかしげる。
「アキにって……アキになにかするの?」
「あぁ……それは―――」
秀一君が答えようとしたときまた保健室の扉が開く。そこに立っていたのは一組の男女―――アキとナナ。
「あれ?秀一とミントも来てたんだ」
アキは少し驚いた表情を見せる。
「うん、少し前にね。アキとナナちゃんも夜美の様子を見に?」
「あぁ、そういう感じ」
「夜美、大丈夫?」
「うん二人ともありがと。わたしは大丈夫だよ」
本音を言うならまだ少しだるさは残っている。といってもずいぶんマシになっているのだが。
「そっか……でも、今日のクリスマスパーティーは中止だね」
「あっ、そうだね。ごめんね、二人とも」
わたしは手を合わせて謝る。
「いいって。明日やろ?」
「うん」
わたしはアキのだした案に乗る。
「ねぇねぇ、シュウイチ。さっきのアキのって―――」
「あぁ!!じゃ、アキと少し話した後僕かミントが魔法で送るから。それまで外で待っとくよ。ナナちゃんもいいかな?」
「ちょっ……シュウイチ!?」
ミントさんの声をふさぐように言ってから秀一君はミントさんの手を引いて保健室から外に連れて行った。ナナは何か察したような表情をし、「まぁ、頑張ってね」とだけ声をかけて秀一君を追っていくように走って行った。
「どうしたんだ?秀一の奴……」
どたばたと出て行った秀一君を目で追うアキ。
「あ、はは」
何となくごまかしてみる。でも……ちょうどいい。今、渡してしまおう。サンタさんが来るのはクリスマスじゃなくてイヴだし。
「でも、顔色もよさそうでよかったよ―――熱もなさそうだし」
アキはわたしの額に手をのせてそうつぶやく。
「うん……あの、ちょっといい?」
わたしは鞄を引き寄せ中を確かめる。よし……ちゃんと、ある。
「どうした?」
「その……メリークリスマス、アキ」
「えっ……あっ、ありがと」
アキは驚きながらもわたしの差し出した包装された箱を受け取る。中身はもちろん、手袋だ。
「あけていい?」
「うん」
「じゃ、さっそく――――――手袋か。それも、手編み?」
「そうだよ」
「ありがと、夜美」
アキは嬉しそうにその手袋をはめて微笑んだ。よかった。あってて。
「でも、俺のプレゼント家においてるからな」
困ったように頭をかくアキ。
「うぅん、いいよ、明日でも」
「でも―――じゃ、これで」
アキはそういうと手袋をつけた右手でわたしの顎に触れそして、「んっ」柔らかく、温かいキスをくれた。頭が一瞬白くなる。でも、徐々に嬉しさがこみあげてくる。
わたしのファーストキスは学校の保健室だった。外にはわたし達のキスをしたと同時に白い雪が舞い降りていた。
fin
はい、いかがだったでしょうか?一応説明しておきますと夜美が主人公で夜美×アキというお話になりました。百パーセントの恋愛もの。地味にはじめて書きました。なにかしら事件をおこしてますからね、いつも。
???「「「…………」」」(ジーッ)
えぇ、今ねものすごい視線を感じますが気にしないでおこうと―――。
キララ「我らの」
ミユキ「出番は」
レオン「ないのかい?」
ひっ。ごめんなさい、ごめんなさい。いれたかったけどいれられなかったんだ。
秀一「ま、まぁまぁ、落ち着きなよみんな。仕方ないんじゃないかな?」
キララ「う〜……」
おぉ、秀一、ありがと。うん、ほんとはいれたかったけどいれるタイミングがなかったんだよ。あっ、そうそう。因みに今回の話ではクリアライフ、ドリキャチ、ちゅうなんのらしさはだせるように色々頑張りました。
ミント「クリアライフは魔法だよね」
愛奈「ドリキャチらしさは……医者がどうこうって感じかな?」
ナナ「ちゅうなんは料理と中二的な名前の店についてかな」
うん、そうだよ。あと、追加説明しといた方がいいのは……そうだ、月の役柄かな。
月「保険医になってたからね」
考えたゆえの策だよ。これなら大学生である愛奈を出すことも出来るとおもったんだ。僕の頭の中の構想では夜美×アキ以外に月×愛奈、そして秀一×ミントもあったからね。
夜美「わたしとアキ君以外は同じ作品からなんだ」
そうだね、できるだけ分かりやすくするためにね。まぁ、ナナもアキの事を気にしてる、みたいな表現が入ってたのはナナと夜美の関係性をしめすうえで使えると思ったからなんだ。そういう意味ではモテモテだな、アキ。爆発しろ。
アキ「俺悪かねぇだろ!?」
ちっ、リア充が。
アキ「なんでこんなにいわれなくちゃ!?」
夜美「あ、はは。ツバサさんの言うこといちいち気にしてちゃダメだよ、アキ……………君」
あっ、今呼び捨てで呼び掛けた。
夜美「う、うぅ」
アキ「な、お、おぉ」
秀一・ナナ(なんか複雑)
愛奈「いいわね〜、はははっ」
レオン「くくっ、収拾がつかなくなってきてるね」
なんかごちゃごちゃになってきた……じゃあここでしめますか。
皆さん、この度は二日間ご覧いただきありがとうございました。私、ツバサはこれからも頑張りたいと思います。とりあえずは五周年を目標にしたいと思います。では、せーの。
全員「メリークリスマス&よき年末年始を!!」