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だいすきっ!! 『じょしばなっ!!』

作者: 犬兎

 これがしゅらばですか。お昼のドラマでよく見る展開ですが、女の子のほうがあまりにも真剣ではないです。ニコニコ笑ってまるで今の状況も楽しんでいるかのようです。三人の男の子に囲まれて怒られているその女の子は、ゆあも良く知っている人でした。


「あいみちゃん・・・?」


「あれ、ゆあちゃんってあいみちゃんのコト知ってるの?」


「お兄の幼馴染ですよっ、よく家に遊びに来てます」


「ああ、そう言えば、おんなじ小学校だったって言ってたわね」


「あれって、止めた方がいいんですか?」


「いいのよ。いつものことだから」



だいすきっ!!



 だいななわ 『じょしばなっ!!』



「ゆあちゃんもあいみちゃんのコト知ってるなら、あの子がどんな子かは知ってるんじゃない?」


「えっと・・・ゆあにイタズラしてくる子です」


「ま、大体あってるわね」


 そんな会話をしている間にぱしん、と乾いた音がしました。男の子があいみちゃんをぶったのです。そしてそのすぐ後にチャイムの音。お昼休みになりました。男の子たちはさっさとどこかに行ってしまいます。しかしあいみちゃんはそこに立ったままボーっとしています。


「あいみちゃん、大丈夫なんですか?」


「大丈夫よ。ゆあちゃんだって分かってるんじゃない?」


「―――あいみちゃんは噛み付いてもゆあを離しませんでした」


「――――大体あってるわね」


「んー・・・あれ、そこにいるのはだーれ?」


 気付かれましたっ! ゆあの完璧なノゾキ技が見抜かれていたとでも言うのでしょうか!?


「かわいい尻尾がパタパタ見えてるわよー」


 しゅらばに出くわした興奮のあまり、尻尾がパタパタ揺れています。千尋さんがあちゃあ、とゆあの尻尾を掴みました。そしてそれを引っ張ってあいみちゃんのほうに向かいます。


「ゆあちゃんに千尋ちゃん? 珍しい取り合わせ」


「ごめんね。のぞくつもりはなかったんだけど」


「あーいいのいいの。三マタがばれたくらいで別れ話切り出してくるあの子たちがいけないんだから」


「いや、三マタかけるほうが悪いでしょう」


 そうかなぁ、とあいみちゃん。悪びれた様子もなく彼女はニコニコ笑っています。


「あたしの名前には『愛』って文字が二つもあるの。だから、人一倍愛せるんだよ。その愛を一人に向けたままにしてる方が重くて大変じゃない。そっちの方が長続きしないよ」


「だったら始めっから適当な子と付き合うなんて止めなさいよ。あなたのその悪癖を理解してそれでもいいって人と付き合いなさい」


「いやぁ、あたしって頼まれたら断れないんだよね。見た目がいいから言い寄ってくる男の子も多いし」


「じゃあもう恋愛ごとは諦めたらどう? あいみちゃんはそういうのに向いてないのよ、きっと」


「それは無理。欲求不満になると野良デミヒューマを襲っちゃうから」


「このやりまんは・・・」


「やりまんってなんですか?」


「ああ、それはね。どんな人とでもすぐに―――」


「あいみちゃん! 余計なことは教えないでよろしい!」


「さて、おなかすいたね。購買でパン買ってこようか」


「ゆあちゃんはどうするの? おうちに帰る?」


「わふ・・・おなかへったです」


「じゃああたしが奢ってあげる。その代わり、後で一回―――」


「あいみちゃん」


「嘘です。あたしの異常とも言える位のご奉仕精神で奢ります」


 そんなわけで今日は学校でお昼ご飯です。


「悪癖っていえばさ、なんか千尋の彼の方が悪癖持ちらしいじゃない」


「―――っ、もう知れ渡ってるの?」


「いや、あたしもあの時は教室にいたよ? あの後で呼び出されたの」


「―――悪癖っていうか・・・その、そういうのじゃなくて」


「でも、どうしてそのイヌミミを学校にまで持ってきているのかの方が問題じゃないかなぁ、千尋ちゃん? 確か彼って、三年の―――」


「わーわーっ!! もうこれ以上は勘弁してっ!」


「あいみちゃん、ゆあにも分かるように言って下さいよう」


「あー、えっとね要するに千尋ちゃんは学校でも―――」


「あいみちゃん・・・?」


「―――まじめに勉強をしているいい子なんだよ」


「そうなんですか? 千尋さんってすごいですっ!」


「ああ、その尊敬の眼差しが痛いわ・・・」


 でもそんなことより、とあいみちゃんはゆあを見てにっこり笑顔です。寒気がします。


「知ってる千尋ちゃん? ゆあちゃんの服って毎日お兄が着せてるんだよ?」


「お兄って、里見くんだよね・・・マジで?」


「しかも毎日お風呂に一緒に入って、体も隅々まで洗ってもらってるんだよ」


「うそ~・・・里見くんっておとなしそうな顔してそういうことしてるんだ・・・もしかして、重度愛好者だったりする?」


「それは今からゆあちゃんに聞くのよ」


「わふ?」


「ゆあちゃんって、お兄とラブラブしてる?」


「はいっ! お兄とゆあはらぶらぶですよ!」


「―――マジか」


「里見くん・・・」


「毎日首輪つけてもらってます(散歩のときに)」


「首輪っ!? もしかして・・・SM・・・」


「・・・へん、たい・・・?」


「お兄の指はとっても気持ちいいんですっ(なでなで的な意味で)!」


「き、気持ちいいっ(性的な意味で)!?」


「ちょっと乱暴しますけど(しつけ的な意味で)」


「乱暴するのっ(性的な意味で)!? それって大丈夫なの?」


「でも普段は優しくしてくれます(当然飼い主的な意味で)!」


「や、優しく・・・ね・・・そう・・・」


「あ、そろそろ帰らないと鷹子お姉さまが心配します。―――じゃあ、ゆあはこれでっ!!」


「ああうん・・・ばいばい」


「気をつけてねー・・・」


 ゆあがいなくなった後、あいみちゃんと千尋さんは大きなため息一つ。


「重度愛好者って、すごいね・・・」


「お兄ってば、奥手に見えてやることはやるのね・・・」


 そして予鈴が鳴り、教室に戻ってきた二人を見てお兄はゆあは大丈夫だったか、と尋ねます。


「お兄がゆあを大丈夫じゃなくさせるよっ!!」


「里見くん・・・へ、へんたいっ!」


「な、何だその言い草はっ! ゆあに何を吹き込まれた!?」


「ゆあちゃんに乱暴しないでよっ。あたしのゆあちゃんなんだから!」


「誰がお前のものかっ!!」


「他のデミヒューマが子種撒く前に自分で撒くつもりなの!?」


「だーっ! ひとまず千尋さんは何か激しく勘違いしている!!」


「ほう・・・その話、私にも詳しく聞かせてくれないか?」


「あ、相沢さんまでっ!? くそ、今日は厄日だ・・・」


 お兄が三人の女の子と口論しているその頃、ゆあはともくんの部屋で今日のことを報告しています。


「あいみちゃんはやりまんで、千尋さんはイヌミミをつけるのが好きらしいです。―――人間は良く分からないことが多いです」


「――――」


「ともくんは分かる?」


「―――」


「人間って、ゆあたちと見た目は変わらないのに、ゆあたちの知らないことをいっぱい知ってるです・・・わふ、ゆあもたくさん知ってみたいです」


「―――」


「ともくんは・・・わふ、そう、思わないです・・・か?」


「―――」


「―――わう・・・むにゃ・・・」


 今日はスニーキングでいっぱい疲れました。がんばった自分へのご褒美に、今日くらいはともくんと一緒にお昼寝してもいいよね? おしまい。





次回予告


「ゆあ、乗馬体験に行ってみないか?」


「いや~っ! 『さらぶれっと』はマッスルで怖いのです!!」


 嘘です、そんな次回はないです。

 あいみちゃんの最高記録は五マタらしいです。でも包み隠さない性格なのですぐにばれてしまうのが弱点だとか。一応ヒロインなんですから、もう少しおしとやかにできませんかっ!?

 次回『だいすきっ!!』は、


『たいせんっ!!』


 実はゆあは隠れゲーマーです。

 あいみちゃんと王座決定戦ですよ!!




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