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ゲーム要素はダメなのか

 いきなり結論から行きます。ダメじゃないです。個人的には好きです。「ゲーム世界」におけるゲーム要素に問題が無いのは当たり前として、「異世界」なのにゲーム要素があるのも別に良いんです。たった一つの交戦規定を守ってくれれば。そう、説明があれば良いんです。それ「らしい」理由が一つでもあれば、異世界だろうが現実世界だろうが、気にならなくなるゲーム要素なんていくらでもあります。いくつか例を見てみましょう。




 ・ダンジョンがあって、資源やアイテムが手に入る。ヤバい生命体もいる。


 これは幾つかのパターンで違和感を失くせます。一つはダンジョンが出現した黎明期を描くこと。未知の代物が突如出現。中を覗いて帰って来た奴らは何だか不思議な力を身に付けていて、何だか凄そうな鉱石類も持ち帰ってきている。これの初期を描けば良いんです。誰もが戸惑い、アドレナリンジャンキーや軍人、運の悪い人々がダンジョンに消え、爆速で鉱石の研究が始まり、世界はかつてない混乱の渦中に投げ出されていく。そんなお話にしちゃえば良いんですよ、例えばの話。


 ダンジョンの意味が分からない?←大丈夫、誰も分かっていない。それこそがミステリー。


 資源って何だ?←それを今調べている所だ。エネルギー源にでもなったりしたら、世界がガラリと変わるぞ。


 魔物っぽいのがいるけど、何なん?←迷宮の最深部に辿り着ければ分かるかも知れませんねぇ、くくく……


 こんな感じで良いんですよ。「らしい」理屈があれば、とりあえずはスルー出来ます。そうすると後は話が面白ければ違和感なんて生じなくなってくる。


 もう一つは、例えば、「銀河を数万年前に支配していた超古代文明が、異種族同士の抗争を防いだり、コミュニケーションを可能にするためにナノマシーンで構築されたシステムを生み出した。それに犯された惑星では住民が不思議な能力を発現させ、これまでになかった資源が手に入る迷宮が生えてきて、いくらでも再構築される魔物がはびこる、まるでゲームのような世界に早変わり。そしてこの世界もまた……」から始めるとか。


 こんなんで良いんですよ。ナノマシーンじゃなくて神々とか、魔法とかでも良いですし。ゲーム要素が実は、最終目的である神格化を達成するための物で、創造神が下僕になる神々を生み出すために作った、とか。人は誰もが神になる事を目指して人生を修行に使う世界、的な。重ねて言いますけど、「それっぽい、それらしい」理屈があれば良いんです。最初の違和感さえ回避できれば、いつのまにか読者の中でも「ここはそう言うところだから」って認識が生まれるからです。




・戦闘に直接関与しない(と見える物も含む)能力や職業はハズレとされる。これは全世界の共通認識である。

 

 これなんかは、「神になる近道は戦いを通じて、敗者のエネルギーを奪う事。神を目指すのは当然の義務、責務、常識である。だから戦え。戦えない奴に明日を生きる資格なし」

 はい、修行の場としての世界ならこれで成り立っちゃいます。




 ・勇者はパーティーを組んで魔王の討伐を目指す。職業には聖女、賢者、剣聖などが存在する。


 ここはもう、開き直って、FFX方式で行っちゃいましょう。一例ですけど。


 魔王と呼ばれる厄災が存在する。

 神出鬼没で居場所を掴めるのは「勇者の道」と呼ばれる一連の儀式を終えた者のみであり、一時的に災厄を止められるのも儀式を終えた者のみ。過去に実例が複数あり、大人数で対処しようと試みた時は被害だけが甚大であった。

 「勇者の道」に挑む者は勇者と呼ばれ、一度に数人しか挑戦できない事からパーティーを組むのが習わしである。

 いつの頃からか、初代勇者パーティーの生き残りで、「聖女」、「賢者」、「剣聖」と呼ばれた伝説の人物たちにあやかって、彼らの二つ名を新たな挑戦者に重ねる習わしがある。


 こんなんで良いんです。今この場でパッと思いついたんですけどね。とりあえずの納得は出来るんですよ。それをせずに、「勇者や賢者と言われて、みんな同じものを思い浮かべる」なんて思うのは大間違い。だって、「勇者」の定義なんてゲーム次第でいくらでも変わるのですから。

 ドラクIVやVなら「勇者とは天空装備を身に付け、天界に昇れる人間」ですし。ハクスラ系の洋ゲーだと、下手したら「勇者とは蛮族の中でも蛮勇を誇り、狂戦士化しては敵味方を問わずに殺戮する者を指す」とかですから。『ダイの大冒険』の主人公は「皆を守るために戦うのが勇者で、何人いても良いじゃないか」とか言ってますし。

 「賢者」もですよ?これまたドラクエなら「あらゆる呪文に精通している」とかですけど、ソードワールドだと「世界の知識をどれ程持っているのかを決める、それがセージ(賢者の意)技能である」とかですからね。




 ・誰しもが特定の年齢に達すると大いなる存在からスキルや能力、職業を授かる。中には蔑まれるギフトが存在し、不遇とされる。


 これなんて一番簡単ですよ。「授かる」って言う表現を失くすだけ。これだけで万事解決。宝くじにしちゃえば良いんですよ。これまた一つの例にすぎませんが。


 「特定の年齢に達した者はランダムに祝福か呪いを与えられる」


 以上、問題解決。ここからその謎の存在の秘密に迫るストーリーにしても良いし、呪われてしまった主人公の葛藤や逆転を描いても良いし、呪われた人々を救済するスローライフを描いても良いし、可能性は無限大です。違和感もなく、です。だって、特定の「何か」を引き当てると酷い目に会う理由が示されているから。呪いだよ、って。


 強いて付け加えるなら、祝福と呪いが半々の確率なら、それはそれで運否天賦の勝負をする理由が必要になります。強制ではない場合ですね。呪いが1,000年に一人とかだと気にしなくても良いですね。




 ・蔑まれるギフトが存在し、不遇とされる。なお、不遇理由は直接戦闘に関与しない(と見える物も含む)からである。


 これはもう、戦闘至上主義の理由に関わってきますので、そちらの説明が出来ていれば問題ないです。


 こんな感じで「リアルに感じる世界」に「ザ・ゲーム要素」を突っ込むのが、実は簡単であるお話をさせて頂きました。初めて読んだ瞬間に違和感を覚えない程度の理由さえあれば良い。軽い説明があれば良い。ただそれだけなんです。冒頭の軽い説明でも、疑問を示す主人公が徐々に解き明かす展開でも、何でも良いんです。「ゲームっぽい」物には理屈を。私があげた例以外にも様々なやり方があります。どうしても「異世界だけどゲームっぽい」のをやりたいなら、ちょっとだけ理屈をつけてみてください。これまでは読んでくれなかった人が読者になります。


 さて、ここまで設定のガッチャンコによる弊害を見てきましたが、登場人物の言動が設定と一致しない違和感も存在するのです。異世界なのに、ゲームの登場人物としか思えないキャラやその言動問題です。これには主人公も含まれます。と言いますか、転生・転移モノの主人公に圧倒的に多いパターン。別名「主人公サイコパス問題」です。次はこちらを見ていこうと思います。

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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ好きな内容でかなり面白かったです。 このシリーズもっと読みたい!
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