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二つが混ざった時の違和感

 異世界とゲーム世界は違うばかりか、その違いが大きいものであるのを念頭に、混ざった時に違和感が生じる実例を見ていきましょう。まずは世界設定から。直ぐに一つのパターンに気が付くはずです。


 ・ダンジョンが存在し、そこにある資源やアイテムで一攫千金を夢見る冒険者がいる。冒険者の中には、巣くう魔物を倒すことで得られる経験値でレベルを上げて、どんどん強くなる事を望む者が多々いる。説明終わり。


 はい、異世界モノで良く見る感じの設定では無いでしょうか。これだけ単体で見ると真っ先にゲームを連想しますね。RPG要素の一つですから。そして、ゲームなら説明は不要ですね。これは明らかに「最終的に何かを倒すゲーム」の要素です。クリアを可能にするための経験値が得られる魔物が配置されており、アイテム類も同時に手に入れられるダンジョンが存在しています。ウイザードリィから続く由緒正しい設定です。全てはゲームをクリアするためにある。違和感が発生するのはこれが「異世界」での話であると、そう先に提示されている時です。


 「ダンジョンって何やねん?」

 「なんで資源とかアイテムとかがそこにあるん?アイテムは誰が何の目的で置いた?資源って、何の?何故そこにある?」

 「一攫千金って、資源やアイテムはそんなに凄いんか?経済に必要不可欠な資源なん?アイテムの効果は?」

 「経験値って何やねん。経験の数値化?どういう事?何故それが強さに直結するん?」

 「強さを望む奴がたくさんいるって、戦闘民族か?命を賭してまで手に入れる強さは何のためにある?力だけがすべてだとしても、ダンジョン以外にいくらでも方法あるでしょうに」

 「説明終わりって、ゲームの説明書か、これは?何でそうなってるんかが知りたいっちゅうねん」


 はい、3行の設定に対して疑問が10行です。それは単に、現実世界だと特定の何かを倒す(息の根を止める)ためだけに都合よく用意された物が無いからですね。魔物が居るならそこには存在する理由がある。経験値が経験の数値化なら、それを可能にする何かがある。その何かが存在する理由もある。強さに拘るにはそれなりの理由がある。それが「異なるけど、現実のロジックが当てはまる異世界」なんです。


 ここは異世界だと認識した瞬間から、現実には無い物には理由と説明を求めるんですよ、通常の読者は。それが欠けていると「いや、待って、どういう事?」と言う違和感が膨れ上がり、没入したい世界が非常に薄っぺらい、雨に濡れた段ボールにしか見えなくなってきます。没入ができない。それ故に登場人物たちの事もどうでも良くなってくる。陳腐な劇をやらされている操り人形には共感なんてできませんし、この先どうなるのかもどうでも良いんです。段ボールの上で、紐を引っ張られてガクガク動くだけの人形なんて。こんな感じで「説明は無いが、疑問は湧きまくる」設定が他にも多数あります。


 ・直接戦闘に直接関与しない(と見える物も含む)能力や職業はハズレとされる。これは全世界の共通認識である。

 ↓

 「経済とか、物作りとか、農業とか、芸術とかの概念が無いんか、ここは?戦闘狂だって装備や飯は必要やぞ。例え石器時代でも分業はあったぞ?」


 ・勇者はパーティーを組んで魔王の討伐を目指す。職業には聖女、賢者、剣聖などが存在する。

 ↓

 「勇者って何やねん?特別なん?何がどう特別なん?聖女って何?そんな呼ばれ方をする存在を危険な目に会わせるとか、ほんまにその宗教に信者おるん?賢者はあれか、自分の分厚い哲学の著書で相手を殴るんか?剣聖って称号やん。職業要素が皆無やし、そもそも何で少人数で魔王とか言う謎の存在を討伐しに行こうとする?軍隊は無いん?勇者って工作員の事?と言うか、魔王って何?討伐する必要性は?」


 ・誰しもが特定の年齢に達すると大いなる存在からスキルや能力、職業を授かる。中には蔑まれるギフトが存在し、不遇とされる。なお、不遇理由は直接戦闘に関与しない(と見える物も含む)からである。

 ↓

 「神様が賜る物を蔑むとか、火あぶりにされんか?引いてしまうと不遇な扱いが確定するって、ただの呪いやん。邪神が授けてるんか?世界の人口は戦闘民族(再び)?そうだとしても、少し考えれば戦闘でめちゃくちゃ役に立つ物も不遇とか、知能が低すぎないか?剣の切れ味を試すのに、自分の喉を掻っ切るくらいのおバカムーブを平気でやっちゃう知能レベルやぞ?戦闘民族の癖に命を張って戦ってないやろ?応用が思いつかんとか、危機感と必死さが皆無やん」


 良く目にする設定を幾つかあげてみました。全てに共通するのは、ゲームの設定ルールなら誰も疑問を挟まない事。ゲームでは無いと明言しておきながら何の説明もない事。この二つです。ゲームの世界を異世界に被せているんですね。唐突に。無理やりに。それが違和感の正体。異世界だと思って読んでいるのに、設定がそれと矛盾しているんです。


 実例を見たところで、次はゲーム要素が異世界にある事がダメなのかを見ていきたいと思います。聡明な読者は既にお気づきでしょうが、何度も出てくる「説明がない」、この部分がカギです。

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