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フセイン・カーライル

カーライルはとある貴族の家に生まれた優秀な子供だった。

両親からたっぷりと愛情を受け、今とはまるで別人のように家の手伝いから勉強、毎日の魔法や剣技の訓練を一生懸命に頑張っていた。


「ねぇねぇお母様、僕にもピアノを教えてください!」


「そうねぇ、それでは専属の講師を雇いましょうか」


「やったー!」


それから、カーライルは母と父の喜ぶ姿をみたくてがむしゃらにピアノにも取り組んだ。

やがて、一月経つ頃にはプロ顔負けの演奏をできるようになっていた。


「わぁー、とっても上手ねカーライル!それではお父様にも聞かせてあげましょうか」


「うん!」


カーライルにとってこの母の笑顔は心の支えであり、力の源でもあった。


カーライルは小さい頃から何でもすぐに覚えてしまい、神童と謳われ、騎士爵であるブライト家は伯爵や侯爵などからも一目置かれていた。

カーライルが10歳になる頃には数多くの貴族から婚約の話が出てきていたほどである。

実際に会い、街へと出かけることも増えてきていて、相手のペースに合わせることに徐々に疲れてきてしまい、ついには倒れてしまった。


「申し訳ありませんお母様。体調を崩してしまって」


「いいのよ、それにこちらこそごめんなさいね、あなたのことを考えずにたくさん話を入れてしまって。無理を言ってでも断るべきだったわ」


「いえ、お母様は悪くありません。僕がお父様のようにもっと体が強ければ…」


「あの人は忙しいものね。今回も小さい町に大量発生した魔物の討伐のために向かったものね。でも話では弱い魔物の討伐だと聞いているわ。きっとすぐ戻ってくるわよ。そうしたら鍛えなおしてもらえばいいじゃない」


「はい、そうします!」


しかし、それは叶うことはなかった。


そして、カーライルの運命は最悪な方向へと向かっていくことになる。



   〜ブライト・ウル・バッカス〜

「くっ、いったい何なんだこの魔物は。話と違うではないか。いったい何がゴブリンの群れだ、オークにオーガ、ドラゴンまでいるではないか」


カーライルの父親ことバッカスはとても焦っていた。

今回は少数精鋭のみ引き連れて魔物の討伐に向かっていたため食料などの物資は数が少なくなってきていた。

それでいてドラゴンは軍隊で挑むべき魔物であり、それが2体もいる。

これを見て撤退を決断した時にはもう既に遅かった。

魔物の群れに囲まれてしまっていて逃げ道はもうない。


「クソッ、やるしか……ないのか」


そうして、無謀とも呼べる戦い、いや、ただの蹂躙が始まった。



父の訃報が伝えられたのはこの7日後であった。

報告が来ないことを不審に思ったエイダが部下を派遣したのである。

そこで見たものは血痕や武器の残骸、そして、多くの魔物たちである。

この報告によってブライト家は正式に取り壊されることとなり、メイドは解雇、そして2人はフセイン家へと迎え入れることになった。



そして、ここからカーライルの人生は狂っていく。


フセイン家へと迎え入れられた2人に待っていたのは地獄のような日々だった。

まともな食事すら与えられず、薄汚れた部屋に監禁という形で2人は過ごしていた。

しかしある日、突然この家の主人に2人は呼ばれていた。


「突然だがお前らには死んでもらう」


「「えっ」」


「お前らは所詮没落貴族だ。どれだけ世間からよく思われていないか分かるだろう?お前らを受け入れた俺もよく思われないんだ。だから、死ね」


「ま、待ってください、私はどうなってもかまいません。ですから、カーライルだけは助けてください」


「お、お母様…な、何言って…」


「ふむ、確かにカーライルの力は聞いているな。よし、いいだろうその願い叶えてやろう」


そういった直後、フセインはカーライルの隣にいた母だけを殺してみせた。

これにはカーライルもフセインに襲いかかったが全く歯が立たない。


「ク…ソ………」


そうして、カーライルの心はさらに歪んでいく。

仕方なくフセイン家に従うしかないカーライルはやがて魔王軍に入ることとなる。

そして、そこで禁呪、禁術を学んでしまう。

目的はブライトとしてもう一度貴族の爵位をもらうこと。

そのためにはどうしても幹部にならなければならない。

そして、邪魔なブレイドを消そうとした。

しかし、それは召喚した悪魔に託された。

そこで想定外だったのは悪魔に自分自身が殺されてしまったこと。


(あぁ、バチが当たったんだ。まぁあれだけの行いをしていたら当然か…。俺は…いや、僕は家のために頑張っていた。でも、できなかった。ごめん、お父様。ごめんお母様………)


そうして、カーライルの意識は闇へと飲まれていった。

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