大悪魔
グレゴリーは不思議な魔法陣を用いて悪魔の召喚を成功させた。
悪魔がこちらの世界に迷い込んでくることはあっても人為的に呼ばれた事例はない。
しかも上級悪魔となれば国を一夜にして滅ぼすことも可能だと言われており、世界の国々が協力してやっと倒せるほどだ。
過去、上級悪魔が迷い込んだことは3度あるがどれも凄惨な事件を起こしている。
そして、約百年前に起こった事件では上級悪魔によって人間の治める大陸の約半分が滅ぼされてしまった。
上級悪魔といっても強さはまばらであり、その時の悪魔は魔界の中級貴族と名乗ったそうだ。
「こいつは一体どれほどの強さなのかな…?」
ブレイドたちに緊張が走る。
そして、ようやく悪魔は活動を開始した。
「オ、オレ、ニンゲン、クウ。ミナ、ゴロシ!」
そういって周りにいた観客たちを襲い始め、闘技場は地獄とかした。
「ここはブラン、任せてもいいかな?」
「はい!任せてください!」
ブランは、そう元気よく返事をするとカーライルたちに目線を向けた。
ブレイドはクロエを連れて悪魔のところへと向かう。
グレゴリーにより逃げることができなくなっている観客たちが次々と襲われていく。
エイダたち、幹部が何とか被害を収めているがそれでも悪魔の力は強大であり、被害は出てしまっている。
「みんな!この悪魔は僕とクロエでなんとかするからグレゴリーの方を頼む!」
「うむ、お主なら何とかできるやもしれぬな。グレゴリーを何とかして皆を避難させたあと戻ってくるからそれまでは頑張るのじゃぞ!」
「いえ、できればカーライルたちの対応をお願いしたいです」
「ではお主は悪魔に勝てるという確証があるんじゃな…ではここは任せるとしよう」
そういってエイダ含めた三人はグレゴリーと対峙したのだった。
ブレイドとクロエは悪魔に対してとにかく魔法を放つ。
グレゴリーの気をエイダたちが引いてくれているおかげで避難は進んでいる。
しかし、良くないこともあった。
「もしかして魔法が効いてない…?」
『そういえば悪魔みたいな魔力体は魔法があまり効かない個体がいるらしいよ?私には効くけどね』
「なるほど…どうりで魔法が効かないわけですね。でも魔力体ということは物理攻撃も効かない…?」
『そゆこと!だから有効打は大魔法をぶつけるか光魔法で浄化するかのどちらかって言うわけ』
「ということは僕たちがやることは一つですね!」
そう言うとブレイドは魔法で悪魔の気を引く。
その間にクロエが魔法陣をいくつも完成させ、敵に狙いを定めていく。
魔力の収束を感じ、ブレイドは一旦悪魔との距離を取った。
そして悪魔に向けて魔法が放たれる。
やがて魔法が悪魔へと直撃すると今度は明らかにダメージを負っている雰囲気を醸し出していた。
体が抉られており、回復しようとしている。
それを見逃す2人ではなく畳み掛けるように魔法を放つ。
クロエが大魔法の準備をしているときはブレイドが時間を稼ぎ、逆にブレイドが準備をするときはクロエが時間稼ぎをするという戦い方をしていた。
やがて、それを繰り返していくうちに回復速度があからさまに落ちてきた。
しかし、決定打にはどの魔法もなり得なく、仕留めきれないでいた。