剥き出しの悪意
ついにトーナメントの決勝戦の日がやってきた。
そして闘技場にはこれまで以上の観客が集まっており、これまでにない盛り上がりかたをしていた。
そして、ルナとブランは落ち着き、試合の開始を待っていた。
やがて、開始の時間がやってくると2人は共に闘技場の表へと出てきた。
そして、互いに構えを取る。
ブランは片手剣を構え、ルナは扇を構える。
「それでは決勝戦、開始!」
ブレイドのその声と同時に互いに魔法をぶつけ合う。
どちらも魔法の威力は互角であり、どちらかと言えば魔力量の多いブランに分があると言えた。
その考えに至ったのかルナが距離を詰めるべく身体強化を使って足に力を入れる。
そして今度は魔法合戦から近接戦闘へと発展した。
近接戦闘戦闘でいえば武器性能的に鉄の片手剣で戦うブランよりもミスリルの扇でそれに魔法を纏わせることもできるルナに軍配が上がる。
そして、それから暫くは互いに得意な方法で戦えるように距離を詰めたり離れたりの攻防が続いた。
しかし、突然異変が起こる。
パァン
「えっ?」
突然観客席の方から爆発音が聞こえた。
これには戦っていた2人も戦いをやめて音のした方へと目線を向けている。
さらに続けざまに爆発が続いており、観客はパニックに陥ってしまっていた。
闘技場から逃げようとする観客同士の言い争いなども起こってしまっていてスムーズに避難が進まない。
そもそもパニックになってしまっている時点で正常な判断ができるわけはないが他の幹部たちが避難の誘導に当たっている。
すると突然ブレイドに向けて魔法が放たれた。
それはただの魔法ではなく呪いの付与してある魔法だ。
それを難なく回避するとブレイドはその魔法が飛んできた方向に目を向けた。
そこには確かに人影があった。
そしてそこを見てブレイドよりも驚いた様子のブランがいた。
「あ、あれは…カーライル………。そして隣にいるのはロバートとアドルフ…?どうして…どうしてこんなことを」
「あの人たちが例の問題児たちなの?」
「はい…なんでこのようなことになったかはわかりませんが」
そんな会話をしているとそこに慌てた様子のクロエがやってきた。
『ブレイド!大丈夫だった?呪いにかかってない?ケガしてない?』
「はい、何とか避けれたので」
『それならいいけど…それであいつらをやっつければいいのね?私に任せて!』
そういって3人の下へ突っ込んでいこうとするクロエをブレイドがなんとか抑える。
「もしかしたら大精霊にも効く呪いをかける手段があるかもしれないので」
『要するに冷静にってことね?確かにそのほうがいいかも!』
そうしてクロエは一旦落ち着かせることに成功したが今度は避難している人たちから先ほどまでとは違う悲鳴が聞こえてきた。
「ふん、お前らをおとなしく逃がすわけにはいかねぇなぁ」
なんと避難誘導をしていたはずのグレゴリーが観客たちの逃げ道を防いでいた。
そして、何かの召喚魔法を使おうとしている。
ブレイドはそれに気づきそれを防ごうとしたがもうすでに遅かった。
「来い!魔界の上級悪魔よ!供物としてここにいる人間の魂を差し出そう!」
その宣言のあとそこには禍々しいもんが出現し、そこからヤギのような顔の黒い悪魔が出てきた。