2話
綺麗な赤い髪を腰まで伸ばした少女、姫神芹佳は紹介された陸を睨むように視線を向ける。
男で魔女なんてありえない。
それが彼女の考えだった。
しかし、今目の前で陸が行ったことは魔法にしか見えない。
「納得できません。百歩譲ってこの男が魔女なのは認めます。でもこの特級クラスなのはどういうことですか」
納得できなくても認めるしかない。でも自分たちと同じクラスというのは理解できない。
彼女たちは他の生徒達と違って実際に魔族と戦う実践クラスである。それが珍しいだけの男に入ってきてほしくない。
「私たちは命がけです。それをこんなやる気のなさそうな奴に入ってこられたら迷惑です」
「なら、実力を示せばいいんだな」
芹佳の言葉に淡々と返すのはこのクラスの担任教師、九重万由里。黒い髪をポニーテールにした二十代前半のスーツ姿の女性だ。
万由里の言葉に芹佳は驚いた表情を見せる。
「こんな奴に戦う力があるって言うんですか!」
「ああ、そうだ」
表情を言い際変えずに告げる万由里。
それを聞いた芹佳が陸に先程より鋭い視線を陸に向ける。
「あんたが本当にこの‘’クラスに相応しい力を持ってるのかを見せなさい。見せれないなら他のクラスで実験動物にでもなってなさい」
「物騒だな、コイツ」
芹佳の言葉を受けてそんな感想を漏らす陸。そして溜息をついて思う。
面倒なことになったと。
「早乙女、見せてやれ」
「え、何を」
急に万由里に振られて少し困惑する陸。
さっき魔法を見せたばかりなんだが何を見せろというのか。と陸が思っていると万由里が続けて話す。
「姫神がお前の実力を見たいというんだから、お前ら二人で勝負したらいいだろう」
その言葉に陸は面倒臭そうな顔を作る。
それに対して芹佳はやる気の顔だ。彼女はここで陸の実力を確かめてこのクラスから追い出したかったのだ。
「分かりました。やります。それでこいつを実験機関送りにしてやります」
場所を教室から訓練場に移した特級クラスの面々。
一般の体育館ぐらいの大きさの建物でその中は何もなくだだっ広い空間が広がっているだけ。だけどこの建物には特別な処置が施されていて、滅多なことでは重傷を負わない仕組みになっている。
そこの中央に陸と芹佳が向かい合って立っている。
「二人とも準備はいいか」
万由里の言葉に芹佳が鋭い視線を陸に送る。その視線にはやる気が満ちている。
対する陸はあまりやる気のなさそうな雰囲気を感じさせている。
「では始め」
万由里の開始の合図を聞いてまず最初に動いたのは芹佳の方だった。彼女は真っすぐに陸の方へと走っていく。
今回の模擬戦では武器等の使用はなし。素手での勝負だ。
「たぁぁ!」
そして近くまで近づいた芹佳は陸を捕まえようと手を伸ばす。それを陸は躱す。
「大人すくつかまりなさいよ」
「捕まったら絶対何かされるだろ」
「当り前よ!この!」
捕まえようと必死に手を伸ばす芹佳。それを距離を取りながら陸は躱していく。
「ちか、づくな」
後ろに飛んで躱しながら魔法で水を作りそれを芹佳にぶつける。
「冷たッ」
水を被った芹佳の足が止まる。突然の冷水に驚いて足が止まってしまったようだ。
「女の子に急に水を掛けるなんて酷いじゃない」
「酷いも何も、勝負…」
芹佳の強い言葉に言い返そうとした陸だったが言葉が途中で止まる。そして視線もすっと横に逸れる。
「何目逸らしてるのよ。やっぱり酷いことだと思っているんじゃないの」
陸の様子を不審に思った芹佳が攻撃の手を止めて陸に話しかけるが反応はない。だけど違う方向から言葉が飛んできた。
「せりせりー!下!下!」
クラスメイトからの言葉だった。
「何よ下って…ッ!」
そしてクラスメイトの言ったとおりに下に視線を向けると白のブレザーの制服がが水でビショビショになっている。そしてその制服が身体に張り付いている。
それを見て芹佳の顔が真っ赤になる。
決して透けていたとかバディラインがはっきりと出ていたというわけではないが、それでも先程よりは体形がわかるぐらいにはなっている。
「きゃー」
顔が真っ赤になった後すぐに悲鳴を上げて身体を抱くように腕で隠してその場にしゃがみ込む芹佳。
「その、悪い」
流石にそんお反応を見て謝る陸。
「…」
少しの静寂が流れる。
だけどその静寂も数秒のことで、しばらくしてから芹佳がゆっくりと立ち上がった。
「べ、別に、これぐらい何ともないわ」
そういう芹佳だが顔はまだ少し赤い。
「大丈夫か?乾くまで待つぞ?」
赤い顔を見てそう声を掛ける陸だが芹佳は腰に手を当て胸を張る。
「大丈夫に決まってるじゃない!このぐらい!」
さっきの少し大げさな反応が恥ずかしかったのかそれを取り繕うと堂々とした態度を見せようとする。声は少し震えているが。
そして胸を張るということは更に制服が身体に張り付いて二つの小さな膨らみを目立たさせる。
「…」
「別に制服の上だし、そこまで体のラインがでてるわけじゃないから大丈夫よ」
芹佳の言う通り大して危ない状況になってるわけではない。ブレザーの下のっシャツだけならともかく部rザーの上から水を被ったところで少しぐらいしか身体に張り付くことはない。だから彼女の言う通りそこまでの問題はないはずなのだ。だけど彼女の反応が大丈夫じゃなくさせる。少しだろうとボディラインがいつもよりも出ていることに顔を赤らめている少女というだけで危険だ。
これが本当に何も気にしていない態度なら陸も気にすることはなかっただろうが、芹佳の反応では気にしてしまう。
「何をイチャちている」
そんな二人のやり取りに万由里が言葉を掛ける。
その言葉に「イチャついてないです」と言いながら赤い顔のまま手を伸ばす。
「危なっ」
「避けるな!こんな恥ずかしい格好にしといて避けるんじゃないわよ!」
「恥ずかしいなら近づいてくるな」
「は、恥ずかしくなんかないわよ!」
「どっちだよ…」
そして芹佳が捕まえようと手を伸ばしてそれを陸が躱すという攻防が繰り広げられる。陸は反撃にでたっかたけどまた水を掛けるわけにもいかずどうしようかと思っていた。
そのタイミングで芹佳の足が止まる。
「ちょこまかと。これならどう」
その言葉と共に芹佳が手から小さな電気を生み出して陸に飛ばす。
「うわっ」
それを何とか陸も水を生み出して電気にぶつける。ぶつかって二つの魔法は小さくはじけて消える。
「あたしの魔法は電気を生み出す。あんたとにとっては相性最悪ね」
そう言いながら次々と小さな電気を飛ばしていく芹佳。
「だから捕まえようとしてきたのか」
捕まえれば電気を流して関電さっせることが出来る。だから芹佳は最初陸を捕まえようとしてきたのだ。そのことに陸も気づいて考える。
(けど、最初から電気を飛ばしてこずに捕まえようとしてきたということは射程はそこまでない)
今も小さな電気が飛んでくるだけだ。陸の考えが正しいというように芹佳は近づいてきている。威力もそこまであるようには見えない。たとえ当たっても一発で感電して動けなくなるということはないだろう。だから捕まえて至近距離から電気を流そうとした。
「諦めなさい。やっぱりその程度ならこのクラスに相応しくないわ」
先程から逃げてばかりの陸を見てそんなことを言う芹佳。言いながらも両手からは小さな電気が飛んでいる。
「しかたない」
「諦める気になった?」
「いや、この手しかないなってな」
陸は大きく後ろに飛び両手を前に突き出す。するとその両手の前に水の球が生み出されえる。
「また水を掛けて辱める気?」
「辱めるつもりはないが、まぁやることはそうだな。だから誤っておく」
生み出された水の球がどんどんと大きくなっていく。
「な、何よその大きさ!」
その大きさは遂に人の大きさよりも大きくなる。
「悪い。後でしっかり乾かしてくれ」
その言葉と共に巨大な水の球が思い切り芹佳の方へと鼻垂れた。
「ちょッ」
芹佳は横に大きく跳んでその水の球を何とか躱す。
だけどその場にもう一度同じサイズの水の塊が飛んでくる。
「えっ、まっ」
そして倒れた体制だった芹佳は今度は躱すことは出来ずに水の塊が直撃する。ざばんと大量の水が芹佳を押し流す。
「まさかあれを連発できるなんて…」
ビショビショになった芹佳がふらふらと立ち上がって呟く。そして小さめの声で続ける。
「いいわよ、認めてあげる」
「そうか、ならそこまで」
芹佳の言葉を聞いた審判役の万由里が模擬戦の中止を告げる。
「おー!」
それを聞いて戦闘を見ていた他の生徒たちが陸の周りにわらわらと集まってくる。
「凄い魔力量だね」
「あれだけの魔法を一瞬で発動できるなんてすごい」
などと口々に賞賛する言葉が陸に掛けられる。
「大丈夫か。大丈夫そうなら着替えてこい」
ビショビショの芹佳の方に近づいてきた万由里があらかじめ用意していたタオルを渡しながらそう告げる。
「あいつ、強いですね。それに戦闘も慣れているような気がしますし」
「そうだな。お前も全然本気ではなかっただろうがあいつもそうだしな。戦闘慣れはしているようだ」
「…あいつのこと、知ってるんですか?」
「まあな」
万由里の言葉に少し疑問を持ちつつもビショビショのままだと気持ちも悪かったのでタオルで拭きながら更衣室へと向かう芹佳。
「早乙女がこのクラスに相応しい実力を持っているのは分っただろう。次は他の奴らの自己紹介をしてもらおうか」
そして模擬戦を終えて自己紹介が始まった。
レヴィ
「無事我の陸が勝利したようだな」
陸
「いや、お前まだ出てきてないのに、何さらっと出てきてんの」
レヴィ
「我はいつも陸のそばに居るのだ。出てきてもおかしくないだろ」
陸
「確かにいつもそばには居るが、本犯にまだ出てきていないのにここで出てくるのはおかしいだろ」
レヴィ
「直ぐに出てくるのだから気にするな」
陸
「まあそうだが」
レヴィ
「それじゃあ次回予告いくぞ。次回自己紹介だ」
陸
「それだけか」