19話
「悪い、急で驚いてつい」
「ついじゃないわよ!何なの、私のことを濡らすのにすのにはまったの。変態!」
とっさに魔族に襲われたため転んでいた身体を起こした陸は尻もちをついている少女に軽く謝る。
当の謝られた赤髪の少女っも立ち上がりながら怒りを見せる。
「…」
魔族にとって不幸なコンボにより多くの魔族が感電したわけだが、それは少年が水を出した方向にいたものだけで別の場所にいた者たちは無事だった。
その中には真白も含まれており、今も魔族と必死になって対峙している。しかし、当然の大量の水とそれを流れる轟音を鳴らす電撃で一瞬そちらに気を取られてしまう。だけどそれが危険な状態になるという訳でもなかった。真白と同じように無事だった魔族たちも同じように気を取られていたため戦闘が一瞬止まるというだけになった。
意識を逸らしてしまった空色髪少女だったが、そんな戦況に気付き手に持つ短剣を近くにいた間増に突き刺していた。
激しい電撃の音は気になっていたが相手の大きな隙が見えたのでまずはそちらに集中する真白。それでもやはり少年たちの方が気になるようでちらちらと視線を送っていた。
「ほら、まだ魔族はいるんだし、そっちに手中しないと」
「あんたが水を掛けてきたから怒ってるんでしょ!」
といいつつも少年の言う通り魔族はまだまだ残っている。その魔族たちもさっきの轟音で少し怯えて警戒しているようだが、だからこそ今がチャンスだ。この隙に一気に数を減らしておきたい。
「呑気に話とは余裕だな」
そこで二人の会話に入ってくる声があった。その声は大人の男性のものだったので学園に在中している軍人のものかと思い陸と芹佳は首を声のしてきた方向に向ける。真白は視線だけだ。
「…誰だ、お前」
視線の先に居たのは三十代くらいの黒い髪をオールバックにした男性。そして服装は軍人の着ている軍服ではなく黒いローブで体格を隠す容姿だった。
その姿に少年たちは少しの警戒を見せる。
「俺は本田。『新たなる光』の一員だ」
その言葉に陸は息を呑む。
『新たなる光』は世界的な犯罪組織。日本でもいろいろな事件をhき起こしていて、その名前も昨日聞いたばかりだ。
魔族が大量にどこからともなく能われたこの状況に『新たなる光』を名乗る男。無関係なわけがない。
「どうやら君は俺たちのことを知っているみたいだな」
少年の反応を見て自分たちのことを知っていると判断したオールバックの男はニヤリと口角を上げる。
「これはお前の仕業か」
「これってのは魔族のことか?それは俺じゃないな、俺と一緒に来た奴の仕業だ」
睨むような視線で問い掛ける少年に対して口角を上げたまま答える。その答えを聞いた少年の頭に一人の人物が思い浮かぶ。
「もしかして、ハプティ=ハロウィンか」
昨日出雲如月から聞かされた名前。その名も今目の前に居る男と同じ『新たなる世界』の一員だそうだ。
「ほお。ハプティを知っているのか。さっきの反応からして俺たちのことも知っているようだったし、ますます興味がわいてきたぜ」
相変わらず口角を吊り上げながらニヤリとした顔つきで興味深そうな視線を向けるオールバックの男。
「ちょっと、何なのこいつ。あんた何か知ってるの」
だけどそこで少年の隣にいた赤髪少女が話に入ってくる。少年の反応から何かを知っていると判断した芹佳はオールバックの男を指さしながら説明を求めた。しかしそれに答えたのは少年ではなくオールバックの本田と名乗った男だった。
「知らないなら話に入ってくるんじゃねえよ」
答えると言っても質問に対する答えを言った話ではなく、出てきた言葉は話から追い出そうとするものだった。吊り上げていた口角も下ろされていて、不機嫌そうな視線を赤髪の少女に向けている。
それを受けた芹佳は睨むような視線を向けていた。
「…こいつは、『新たなる世界』は世界的なテロリストだ。それでハプティとか言う奴が多分魔物を呼びだしているんだと思う。そいつの魔法が魔族を呼び出す門を作るというものらしい」
今度は質問された灰色髪の少年が答えた。求めていた答えが返ってきた芹佳はその内容に息を呑む。
テロリストに魔族を呼ぶ魔法。
芹佳は本田と名乗ったオールバックの男に再び鋭い視線を向けながら、今の状況にならなる危機感を抱いていた。
そんな時、そのオールバックの男に一匹の獣型の魔族が襲い掛かった。
「邪魔すんじゃねえ」
「「!?」」
オールバックの男は襲い掛かってきた魔族に強い口調で言葉を放つ。
それを見ていた三人(真白も戦いながら横目で見ていた)は驚愕する。
襲ってきた魔族は、息絶えて地面に転がっていた。
それをしたのは目の前のオールバックの男で間違いないだろう。そのことは別に驚くことでもない。魔女でなくても魔族を倒すことは不可能ではない。重火器を使えば可能だ。特に今倒したのはそこまで強いものではない。と医療の銃弾を浴びせれば倒せる。
だが違う。オールバックの男は何も持っていない。
なら実行犯ではないにしろ共犯者の人間が呼び出した魔族に襲われたことに驚いたのか。
それも違う。実際のところはどうか分からないが、『門を作る魔法』というだけで『魔物を操る』という効果があるとも思えないし、あったとしても大量の魔族を全て完璧に操れるとも思えない。
だったら少年少女はどこに驚いたのか。
それはオールバックの男が魔族を倒した方法にあった。
素手のはずの男が魔族を倒した。それも魔法をt使って。
「…あんたも魔女なの…」
前に突き出された男の腕からは大きな火の玉が魔族を襲う。そんな信じられない光景を驚きながらもなんとか口を動かして声をだしたのは赤髪の少女、姫神芹佳だった。
本来ならあり得ないはずだが前例が隣にいる。
隣に居る男が唯一の男の魔女と言っていたが、一人いrなら他にいてもおかしくない。気に食わないが芹佳はそう考え呟いた。
しかし、そんな異常な光景を作り出した本田と名乗るオールバックの男から信じられないような言葉が出てくる。
「|男の魔女なんているわけねえだろ《・・・・・・・・・・・・・・・》」
「…」
この男は何を言っているのかと思ったが、だけどそれは正しいはずの言葉だった。
魔女は女のみ。
それは世界共通の常識だ。
だけど実際に魔法を使う男は隣に居る。この男が何度も水の魔法を使うのを自分の目で見ている。そして否定したオールバックの男も今まさに魔法を使ったはずだ。
「でも今、あんたも魔法を使ってたじゃない」
「今のは魔法じゃねえよ」
男はそう言うと突き出していった腕のローブの袖をめっくて見せる。手首より少し上の辺りに黒いブレスレットのようなものがはめられていた。
「こいつは魔装だ」
突然腕をまっくて見せられても意味が分からないし、ブレスレットをはめていることもおかしいことはない。なのでそれを見ても反応に困っていた少年少女達だたが袖をめくった男が答えをくれた。
そしてその答えに驚く陸と芹佳(+戦闘中の真白)。
魔装は魔族の素材から作られた特殊な道具。科学では説明できない硬貨を持つマジックアイテムだ。
だけどこれは誰でも使えるわけではない。基本的に魔女にしか使えない。もしだrれにでも使えるならそれを使い魔女ではない普通の人間が魔族を倒すのも容易になってくる。
だから少年たちは驚いていた。本田と名乗る男の言うことを信じるなら魔女でもないものが魔装を使ったことになる。
「だったらやっぱり魔女なんじゃない」
赤髪の少女も手に持っていた雷を纏う薙刀をふるいながら魔女ではないと自称する男に言葉を投げる。
「はぁ、めんどくせえな」
溜息を吐きながらまた一匹魔族を火球で倒した。その溜息は魔族に対してなのか芹佳に対してなのかは分からないが赤髪処女に視線を向けて言葉を続けた。
「こいつは特別性なんだよ」
「特別性って、魔女じゃなくてもだれでも使えるってことか?」
「あぁ」
黒いブレスレットを主張するように見せる男の話から魔女でなくても使える特別な魔装なのかと想像した陸はそれを尋ねると男は肯定で返してきた。更に赤髪の少女から灰色髪の少年に視線を移しながら言葉を続ける。
「お前もそうなんだろ?」
再び口角を上げニヤリと表情を歪めながら確信を持った言葉を投げかけた。
「…は?」
思わぬ言及に一文字声が漏れる。一体何を言っているんだろうと陸は一瞬呆気にとられる。
「…それ、本当なの?」
だが少年の隣にいた赤髪少女は特別製の魔装(審議不明)をはめる男の言葉により灰色髪の少年へと怪訝な目を向ける。
「男の魔女なんてありえない。だったらこいつも魔装を持っているって考えた方が筋が通るんじゃねえか?」
赤髪の少女の疑いを後押しするようにオール縛の男が話す。
始めから男の魔女なんておかしいと思っていた。けど魔法を使っているところを見て信じるしかなかった。でも本田と名乗る男の言うように魔女じゃなくても使える魔装を隠し持っていたなら魔法を使っているように見せかけることも出来るかもしれない。
そんな魔装は聞いたこともないが、それでも男の魔女というよりは信用できる。魔装についいてはまだまだ発展途上、日進月歩しているのでそういうものが開発されてもおかしくないだろう。
ランダムで生まれる魔女と作り出せる魔装。
新たな段階へ進めるのは後者と仮名が得る方が自然だ。
そこまで考えて芹佳は隣に居る少年に軽蔑の視線を向ける。
「陸は魔女。間違いない」
そこで今まで話には参加していなかった空色髪の少女が話に入ってきた。
これまで会話をしていた間も魔族を狩り続けたことで、この辺りの魔族は殲滅した。殆ど倒したが数体は逃げて行ったようだ。
戦闘に集中していた真白もようやく話に加わることができ、このタイミングで口を開いたのだ。
「でも男の魔女なんてありえないじゃない」
淡々とした口調で否定してきた空色髪少女に対して芹佳は反論する。真白に言葉を返しながらも少年に対して鋭い視線を向けていた。
赤髪少女がクラスメイトに事実を突きつけると、言い出した男が追従してくる。
「こっちの赤いのの言う通りだ。お前もそう思わないのか」
「赤いのって私のこと!?」
呼ばれ方に不満そうな赤いのだが、名前をわざわざ教える気にもならないので、それ以上は何も言わなかった。
空色の方は赤いのの反応はスルーすして淡々とした口調で言いきる。
「陸は魔女。男とか女とか関係ない」
どう説明されてもこの考えは変わらないし、それが事実だから疑いもしない。
そういう意味を込めての断言だった。
「まぁお前がどう思おうが関係ない。俺が興味あるのはそいつだからな」
空色髪少女に鼻で笑いながら返す本田は少年へと視線を向ける。更に口角を上げたまま続けた。
「なあ、お前は俺たちに興味はないか?」
「興味って何だよ」
「『新たなる世界』に入らないかって聞いてんだよ」
唐突なテロリストからの誘い。
それに対する陸の答えは決まっている。
「断る」
即答だった。
全くの動揺もなく即答していた。
レヴィ
「本田とかいう人間が陸に興味があって、お前は俺に興味はないかと訊いてきた」
陸
「変なこと考えてないよな」
レヴィ
「別に変なことは考えてないのだ。ところで、陸は男の方が好きなのか?」
陸
「やっぱり変なことじゃないか」
レヴィ
「陸が望むなら我は男の身体にもなれるのだ」
陸
「男に興味はないし、全く望んでないから」
レヴィ
「つまり陸は我が女尾身体が良いということなのだ」
陸
「別に性別はどっちでもいいが」
レエヴィ
「我の身体ならどっちでもいいと」
陸
「全部こいつの都合のいいように解釈される」
レヴィ
「出番がないから陸とイチャイチャしたいのだ。だから付き合うがいい」